当番ノート 第49期
朝が苦手というよりは、夜のことが好きすぎるのかもしれない。人びとがみな寝静まっていて、気配がない。守られた部屋の中で、この惑星の中でたったひとり、わたしだけが起きているような錯覚。朝よりも、昼よりも、自由をゆるされているようにもおもえる。わたしをとがめるすべてのものも、きっと眠っているような気がするから。 家で仕事をするようになってから、前よりももっと起きるのが下手になった。身体がベッドの底に沈ん…
当番ノート 第49期
あたりまえがあたりまえになったのって、いつからだった? *** ふと、すごくびっくりした。 「心のなかで何かを思ったり考えたりしてるとき、内側で話している声は、どこから聞こえてくるんだろう」 初めてこのことを不思議に思ったのは、たしか幼稚園生くらいの頃だったと思う。 「ねえ、鹿ちゃんはしゃべってないのに、鹿ちゃんにだけ鹿ちゃんの声が聞こえるのは、なんで?」 「それはね、鹿ちゃんが心のなかで『思って…
当番ノート 第48期
2か月間続いた「当番ノート」を通して私は、公の場ではじめて、インド音楽に関する自身の体験や視点、考え方を言葉で表現した。 この音楽を習い始めて日が浅い私にとって、それは大きな挑戦であった。知ったかぶりで音楽について語ることは、師匠やそのまた師匠たちにも、真剣に音楽をやっている人たちにも、音楽そのものに対しても、無礼に当たると思ったから。 それでも、今の自分に書けることを文章にしてみようと決心したの…
当番ノート 第48期
前回までのあらすじ 大いなる王の遺産を巡るROXの冒険は最終局面を迎えていた。覇王龍道拳の免許皆伝となったROXは師であるジャッキーのもとを訪ねる、するとそこにはジャッキーの変わり果てた姿があったのだ。そこには血染めのダイイングメッセージが。「楊チェンに気をつけろ」ジャッキー最後の言葉を胸に秘め、怒りに震えるROXはチェン打倒のため上海へ向かう。そしてチェンと対峙、いよいよROXの長きに渡る冒険に…
当番ノート 第48期
これまで、主に私自身の経験を例に挙げながら、インド音楽を学ぶにあたり、師を絶対的に信頼したうえで師から直接教えを受けとることの重要性について陰に陽に何度か言及してきた。 良い師に出会うこと、そして師と持続的に良好な関係を築くことはとても難しい。すべてを委ねることのできる師が存在し、不安や不満を感じることなく練習に集中することができるというのは、本当に幸せなことである。 「グル・シシュヤ・パランパラ…
当番ノート 第48期
こんにちは映画好きな皆さん。僕です。ロックスです。ところで皆さんの中にはきっと月に何回も映画館に行く、という方も多いはず。映画館という箱は21世紀になっても、「携帯はオフ」「話すな」「静かにしてろ」「トイレいくな(行ってもいいけど行きづらい)」、およそ120分間、五感をすべてスクリーンに集中し、一つの作品に没頭できる、そんな唯一無二の箱でございます。 映画館で映画を観るのが好きな方なら一度は「映画…
当番ノート 第48期
ムンバイーの先生の家に滞在していた頃。ある日、友人に誘ってもらい、アンナプールナー・デーヴィーのドキュメンタリー映画の試写会に行く機会を得た。 アンナプールナー・デーヴィーは、2018年10月に亡くなった偉大なインドの音楽家である。スルバハールという弦楽器の奏者だった。 「マイハール・ガラーナー」という流派の祖であるスィタール奏者アラーウッディーン・カーンの娘であり、アラーウッディーン・カーンの弟…
当番ノート 第48期
あの映画が面白かった、この映画はつまらなかった、作品への評価はひとそれぞれ。正しいのか、正しくないのかなど一概に決めることはできない。 では、俺の場合はどうだろうか。 俺の映画を評価をする判断材料というものはたった一つで成り立っている。 それは 「期待に応えたか、応えられなかったか」だ。 大作ほど期待が高まるというもの期待が高まるのでなかなか期待に応えてくれることもあまりないのが現実である。 では…
当番ノート 第48期
今日は少し、音楽の細かい話は忘れて、私がインドで体験した不思議な出来事を共有したいと思う。 インドという国は、土と埃と、人びとの汗と熱気と、動物の糞尿と、あちこちで発せられる大小の音と、さまざまな食べ物のにおいと・・こうした生身の、非常に現世的なものがごっちゃになった世界である。 他方で、至極平凡な清掃人やリクシャーの運転手なんかが急にぽろっと、心に沁みる一言を発したり、奇跡としか呼べないような信…
当番ノート 第48期
『男はつらいよ』が22年ぶりにスクリーンに帰ってくる。シリーズ50作目は『男はつらいよ お帰り寅さん』だそう。 とは言っても、我々若者世代(自分が若者世代なのかわからんが)にとっては「ああ、そうなんだ」くらいだろう。 映画ファンの俺も『男はつらいよ』シリーズはおそらく8作ほど中学校の頃に観て以来。 渥美清が亡くなったから見るか~くらいのテンションだった。 朧げな記憶になるが「面白かった」というシン…
当番ノート 第48期
あけましておめでとうございます。 新しい年のはじまりに、この場でご挨拶ができてとても嬉しいです。 当番ノートも折り返し。後半もどうぞよろしくお願いいたします。 —————————————————&…
当番ノート 第48期
前回は休載してしまいました。申し訳ございません。 足らなかったのはフォースでした……。フォースって……? そうです。スター・ウォーズです。スター・ウォーズの「フォース」でございます。 前回語ったスター・ウォーズへの偏愛。そして今回はその愛を証明するときが来たのです。 お前の愛を見せてみろ。 ああわかった見せてやるぜ。 今回は本物の愛とは、真実の愛とは、愛とはなんなのか、愛することのもどかしさとはな…