当番ノート 第32期
時計の針が、ちょうど夜の10時を過ぎた。 ふと囲炉裏がある方へと目を向けると、囲炉裏の火がほとんど消えかかっている。 さっきの宴会の盛り上がりから一変して、今はみんな百合ちゃんの話に静かに耳を傾けている。 「あの日はちょうど今くらいの、秋が深まりだした季節で。 ただこの時期って、台風も一緒にやってくる季節なんだよね。 天気予報では、行く日にちょうど嵐がくるって言っていて、行くかどうかちょっと迷った…
当番ノート 第32期
2017年4月 大学を卒業して企業に就職した。 というのは僕の出会った中でも、 多数を占める同期の人の話である。 彼らとは今までと連絡の取り方や、スケジュールの合わせ方がまったく異なる。 しかし、卒業してから一カ月もしないうちに なんらかの形で集まろうとする仲である。 そんな彼らには、今までになかった持ち物が一つ増えている。名刺だ。 こんな僕でもいくつか頂いた名刺を持っていて、色んなことが書かれて…
当番ノート 第32期
フランス人で画家であり、書家でもあるファビエンヌ・ヴェルディエのことはアトリエで知り、画家のジェジンヌ・アルプスのことは、ある日、パスの中からふと目に入った、画廊のウィンドウで知った。 ファビエンヌ・ヴェルディエについて、詳しいことは是非、彼女自身による中国滞在記であるベストセラー「静かなる旅人」を読んで欲しい。一部、涙なしには読めない箇所があり、私も書をする人間として、怒りと悔しさで涙が出た。読…
当番ノート 第32期
アカデミー賞各賞を総なめ、惜しくも作品賞を逃しつつも多くの人々から高い評価を得た『ラ・ラ・ランド』。私も公開の次の日に映画館へ観に行き、その作品の完成度と音楽の与える力を身を以て感じる事が出来た。とにかく隅から隅までロマンチックで、でも最後の最後に下す主人公の決意はとてもリアルで、自分自身にも重ねて共感する部分が大きかった。そしてとにかく、エマ・ストーンが可愛すぎる。表情豊かで、キュートとは彼女の…
当番ノート 第32期
みなとみらいに株式会社リビタさん運営のBUKATSUDOという施設があります。 僕達WATもコーヒースタンド運営で関わらせて頂いています。 OPENから間もなく3年、シェアスペースと聞いてナンジャラホイ?という時代からスタートし、今では横浜のコミュニティの1つを形成する素晴らしい場所になっています。 BUKATSUDOのグランドオープン時期に開催された「場をつくる選曲講座」。 第一回講義のサブタイ…
当番ノート 第32期
「乾杯!」 ビールやチューハイが注がれたグラスがいくつも交わり、軽快な音を立てた。 おつまみやお菓子の袋が並んだテーブルを、10人ほどの男女の若者が囲んでいる。 その輪の中にりんごちゃんと私も一緒になって座っている。 輪の中にいた1人の少年が 「僕、これから料理作るんで、みなさん座っててください。」と言って、 腕まくりをして団らんスペースのそばの台所に立った。 他の人たちはみな、おぉー、さすが!と…
当番ノート 第32期
将来の夢はプロ野球選手。 甲子園に出場して、ライオンズにドラフト1位で指名されて、 メジャーリーガーになる。 ありふれた、子供らしい夢を持っていた。 楽しいことと言えば、野球で活躍したときのことで 今でもスコアブックを見返すこともある。 少年野球の記憶はたくさんあるけれど、毎年4月頃に西武ドームでキャッチボールをしていたことをはっきり覚えている。 小学校に入学する前からチームに所属していた僕にとっ…
当番ノート 第32期
去年の夏に、スリランカへ二週間、そしてモルディブへ一週間滞在するという、文字にするとまるで夢みたいな旅行を夫とした。 そもそも、どうしてスリランカ、モルディブへ行くことにしたかというと、何を隠そう、それは私の父のせい、父版「鶴の一言」のせいである。私の父はいろいろとマニアックな研究をしているのだけど、まず、その研究テーマ不動の地位に、中国、チベットがあるとして、その流れからここ数年は仏教、そして自…
当番ノート 第32期
※「じゃない」のイントネーションに注意 — みなさんはより安い物を選びたいですか? そりゃ同じ何かを買うなら、より安いものを手に入れたいと思うし「格安」とか「お得」とかそんな言葉に目がいってしまう。お金は出来るだけ使いたくないし、無料より安いものはないってよく言うし。私もそこまで裕福なお家ではなかったので、というより母から「うちはビンボーだからね」と教え込まれて育った故(多分母の戦略にまんまとのっ…
当番ノート 第32期
スタッフからこんな相談を受ける事があります。 人と上手くしゃべる事ができない、どうやったら話が盛り上がるのか、と。 僕は言います。 「合コン「さしすせそ」を使いなさい」ドヤッ 男性を褒めるためのマジックワードである、合コン「さしすせそ」。 それは何も合コンテクニックに限った事ではないのです。 <合コンさしすせそ>ーーーー さ:さすが! し:知らなかった! す:すごい! せ:センスいい! …
当番ノート 第32期
その日は、すっきりしない天気の日だった。ぼんやりとした色の空で、少し雨が降り出しそうな気配がしていた。 でも鎌倉って晴れ渡った快晴の空よりも、こういうぼんやりした色の空の方がしっくりくるのはなんでだろう。 私はそれまで乗ったことのない湘南モノレールに乗って、聞いたことのない名前の駅へと向かっていた。 その駅に到着して降りると無人改札だったので、本当にここで降りても大丈夫なのか心配になる。 改札を出…
当番ノート 第32期
僕はどこかに出かけた帰りの電車で決まって先頭車両に乗る。 先頭車両ではなくて、最後尾でも構わない。 とりあえず、一番端っこの車両に乗るようにしている。 そうするようになったのはいつだったか忘れてしまった。 それでも、どの電車が最初だったかは覚えている。 大学に通うために利用していた西武新宿線だ。 西武新宿線の終点は西武新宿駅。 帰宅のための40分ほどの乗車時間はできれば座りたい。 そう思って空いて…