当番ノート 第31期
中学から社会人3年目になるまで住んだ地元に、ずっと仲のよかった近所同士の友人が二人いた。 中学は三人とも同じだったけど、その後、進んだ高校も大学も別々になり、 もちろん専攻や生業も全く違ったものにそれぞれ進んだ。 この年頃の男友達同士の常で、学校帰りなんかに、まあ色々と屈託の無い話を三人でしていたのだけど、 今でもよく憶えいているやりとりがある。 自分の思考や志向や嗜好のパターンを考えた時に三人そ…
当番ノート 第31期
こんにちは、はじめまして。 月曜日当番の、きた えまこです。 まず自己紹介をしようと思い、ハタと自分のことが自分でもよくわかっていないことに気がつきました。そこであわてて数日間、自分の今までのことなど思い返してみたのですが、、、 生まれたのは香川県高松、でもほとんど記憶はありません。すぐに大阪に引っ越し、一度はシンガポールにも住んだりして、小学校は3回転校しました。ほぼ大阪育ちですが、今は以前、数…
当番ノート 第31期
“世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。誰にも気付かれないように。 ー オノ・ヨーコ” 鹿児島でよく訪れる食堂の扉に、いつからか書かれていた言葉だ。 誰の言葉なのだろうかと気になってはいたけれど、誰に聞く訳でもなくしばらく時間が経った。 今回、アパートメントに寄稿するにあたって、何を書くべきかとても悩んでいた。 名古屋から鹿児島へ向かう車中で、あれこれ考えたりもしたがて…
当番ノート 第31期
夕日を追いかけていた。読み方も知らない町で、僕は夕暮れと夜に境目がないことを知った。黄金色に染まったコンクリート塀の間をひとりで進む。子どもの頃の話だ。アスファルトの匂い、長く伸びた影、湿り気を帯びた暑さ。僕はどこまで行けるだろうか。答えを探していた。見知らぬ風景に身を置くことに感じる不安と期待。夕暮れと夜のようにふたつの感情にも境目はなかった。 どうやって帰ったのだろうか。記憶がすっぽりと抜け落…
当番ノート 第31期
へんな人。見方によっては近寄りがたいが、噛めば噛むほどに味わいぶかいスルメのように、話せば話すほどのめり込んでしまう人のこと。 そして、独特の価値観を持ちながら、暮らし、働いてるへんな人が、考えるへんな人。 そんな「考えるへんな人」を知ったり、会ったりすると、「こんな人もいるんだ」と、世の中の選択肢みたいなもんが広がるような気がしてて、そういう人の存在は貴重だなぁと。 ということで、2~3月の当番…
当番ノート 第31期
その頃わたしは冷暖房のない部屋に住んでいた。2月なんかに1日中家で仕事をしたりすると、どんなに分厚いフリースにくるまっても、ブランケットを何重に巻きつけても、日が翳りはじめる頃には、身体が芯まで冷えた。 銭湯を楽しむようになったのは、たぶんその部屋に住んでいたときからだと思う。東京は北千住の、下町の商店街からひとつ路地を入ったところにあるその家は、5畳の広さしかない1Kだったけれど、東向きの気持ち…
当番ノート 第31期
東京の下北沢でクラリスブックスという古書店を営んでいる。 店をオープンして3年が経った。月並みな言い方だが、ほんとに、月日が経つのが、早い。 私は現在42歳だが、店をオープンした時期に、私より一回り年上の人から、40代はほんとに早いよ、あっという間だよ、と言われたのを思い出す。 業種は全然違うが、その方も私と同じくらいの年齢の時にお店を立ち上げたようで、なるほどそういうものかな~、とぼんやりと心の…
当番ノート 第30期
連載をしておいて何だけれど、合計9回の記事を書くにあたって、これだけは書かねばと思っていたことは初回の肯定についての記事で推敲を重ねて、だいたい書けたような気がしている。 それ以降はずっと伸び伸びした気持ちで書いてきた。 時々もらう、アパートメント読んでますよ!という言葉に何度嬉しくなっただろう。 服を作ることを通して、いろんなものに捻じ曲げられていないあるがままの相手を肯定するということ。 これ…
当番ノート 第30期
皆様こんにちは。HALです。いかがお過ごしでしょうか。いよいよ今回が最後の投稿となります。これまで読んでいただいた方、そしてコメントを寄せていただいた方、本当にありがとうございました。そしてアパートメント関係者の方、手厚いサポート御礼申し上げます。 最近、少し長めの文章を書くことからしばらく離れていたので、自分の頭を整理する上でも、そしてそれを活字で表現するということにおいてもすごくいい機会でした…
当番ノート 第30期
今日で最終回。 あっという間の2ヶ月でした。 毎週日曜担当ということで書かせていただきました。 この2ヶ月、私の担当した日には、 クリスマス、正月、そして今日はなんと母の誕生日。 なんだかめでたい日ばかり入っていたように思います。 さて、最終回。 何を書こうかなと思ったけど、何回考えてもこれしか出てこなかったので、つなぐひとらしくこれを書いていこうと思います。 ご縁と別れ。 ご縁というのは、とても…
当番ノート 第30期
インテリア雑貨のお店を開きたい、とはっきり口にしたとき、私は中学生だった。 新潟に暮らしていた頃、北欧やイタリアのデザイナーズ家具やモダンな食器を扱うお店は決して多くなく、数少ないそのお店を母親に連れられてウィンドーショッピングをするのが心から好きだった。色鮮やかなラグやクッション、滑らかなお皿、柔らかい照明。いい香りのする店内。ひとつひとつに触れてみたくて、眩暈がするような幸福感がお店にはあった…
当番ノート 第30期
先日塾で教え子と古典の話をしていて、こんなことを言われました。 「ぼくは古典を学ばなければならないことに疑問を感じている。国語の先生や、大学で古典を研究し新しい事実を発見したい人には大事なことなのかもしれないけれど、日本人全体が中学高校で半ば強制的に古文という読みにくいものを現代語に訳して読まなければならないのは苦痛だし間違っている。この不安定な世の中で古典を学ぶことに一体どのような意義があるのだ…