当番ノート 第29期
////////////////////////////////////////////// 2010年2月25日からの手紙 ////////////////////////////////////////////// 夕暮れのなめらかな海の水面のようだと思えば、 いたずらを覚えたばかりのあばれんぼうの 波打つ胸のようだったりする。 心は、晴れたり曇ったり。 ときどき雨も降ります。 世界に対し…
当番ノート 第29期
ぽつら、ぽつら。 あかりがまばらについている。 ひとりだなあ、とおもう深い夜 そんないくつかの窓あかりをおもいうかべて ひとりだ、ということはみんないっしょで そういういみで、ひとりじゃないな とおもいます。 どうしたってひとりだなあというとき そんなふうにみえないだれかをおもって よるをこえて、あさをむかえました。 わたしのなかにも、 いくつもの、いつかの夜の窓あかりが 真夜中のアパートメントの…
当番ノート 第29期
彼は連日、酔っぱらって帰ってきてはバタンと寝てしまう。昨日は取引先の人が開いてくれた送別会、一昨日は部署の送別会、先週が会社全体の送別会。そして今日がついに最終出勤日だ。 「この人、本当に仕事やめちゃうんだな…」 彼が仕事を辞める理由の半分は、確実に私の側にある。この先どうやって一緒に生きていこうかを何度も話し合った結果、しばらくふたりで旅にでることになったのだ。 その計画自体に不満はない。その人…
当番ノート 第29期
朝目覚めた。 見慣れない部屋。 あれ、ここはどこだったっけ?と天井を見ながら思う。 隣のベッドでは、友人がスヤスヤと寝ていた。 それを見て思い出す。 そうだ、私たちはインドに来たのだった。 友人を起こさないように、物音をたてず気をつけながら窓辺に移動する。 静かに窓を開けるが、錆びているのかガガッガとわりと大きな音がする。 起こしてしまったかもと心配になり振り返ったが、彼女は変わらず眠っていた。 …
当番ノート 第29期
君は僕の未来だから愛をささげよう 地球戦隊ファイブマン(1990)のエンディングテーマのワンフレーズである。 「ファイブマン」は不遇な作品だ。裏番組のらんま二分の一という名作に視聴率を奪われ、戦隊人気低迷期の作品であったゆえ、語られることも少ない。翌年の「鳥人戦隊ジェットマン」が誰もが認める大作・傑作であったことも、相対的にファイブマンの地味さに影響しているような気もする。 幼くして両親を失った5…
当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② suicide cats in seaside③ suicide cats in seaside④ 「こっちだよ。」 もう一度アマリの耳元で、洞窟の中で反響したような声がする。 ムジャンはどこまでも沈んでいき アマリは遠のいていくその眼差しを捉えることしかできない。 毛むくじゃらを救済し、初めて目を…
当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で最終回。 これまでお付き合いいただきありがとうございました。 前回は、今後どのような活動をしていきたいのか、お話させていただきました。 まず、僕は「仏教を伝えながら、その人自身の良さを引き出し、自信をつけられるようなお手伝いをする人」でありたいと思っています。 僕自身、過去自信をなくし、結果的に現実から逃げていました。そのとき、誰か、アド…
当番ノート 第28期
白い絹のシャツと黒い半ズボンに、安っぽいサンダルを履いた少年はふいにこちらを見た。薄いまぶたの一重も、短く乾いた黒髪も、私の知る島の誰にも似ていなかった。 それから彼は、ぎょっと目を大きくさせた。 「ああっ、もしかして、ときこさん?」 そう声を上げて、水を出したままホースを落とした。私もぎょっとしたまま生垣の陰から動けないでいると、彼のほうから近付いてきた。ホースから水は出てるばかりで、乾い…
当番ノート 第28期
慰霊碑の前にはあらゆるものが置かれていた。 缶ビールや缶ジュースが置かれているのはテレビでも見たことのある光景だったけれど、ぬいぐるみにアクセサリー、トランプやギターまで並んでいるのを見て驚いた。花束を包むセロファンがホールに吹く僅かな風を受けてさざなみのように揺れた。僕はそれを数メートル離れたところにあるテラスから、ぼんやりと眺めていた。 僕の左にはアズマが、右には金田が座っていた。ふたりとも静…
当番ノート 第28期
韓国で美容師をする、という仕事の話になるが、 自分の中では、お客さんに向き合うとき、韓国人と日本人で接客を切り替えてやっている。 カット入るまでの最初のカウンセリングからぜんぜん違う。 理由は、やはり双方にいろいろな違いがあり、同じやり方では対応できないからだ。 例えば、次のような感じである。 韓国人の希望するスタイルの特徴は、 「なんもしなくても良いように」 「ボリュームほしい」 「この写真とま…
当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② suicide cats in seaside③ 背中にぺたりと張り付いたムジャンの濡れた毛並みは潮風で少しずつ乾いていき、 灰色のそれはアマリの背中をそわそわと撫でる。 くすぐられているような感触に時々笑ってしまいそうになるのをアマリはこらえた。 背中に感じる毛むくじゃらの重みは不思議と頼もしかっ…
当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第8回目。 今回も含めてあと2回になりました。 前回は、現在感じている僕の葛藤について、お話させていただきました。 周りの方からの僧侶に対する、ある意味願いとも言える「信念が強く、何事においてもぶれない」というイメージ。改めて、他人から自分はこう見られている、こういう存在であってほしいと期待されていることを感じました。 今、僕は有髪の僧侶…