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2F/当番ノート

Letters #1

当番ノート 第29期

letters

いつか自分の命に終わりが来ることを知っていることは、さみしい。

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2010年2月25日からの手紙

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夕暮れのなめらかな海の水面のようだと思えば、
いたずらを覚えたばかりのあばれんぼうの
波打つ胸のようだったりする。

心は、晴れたり曇ったり。

ときどき雨も降ります。

世界に対して覚えるどろどろとしたさみしさは
泉のようにあとからあとから沸いてきて、
夜な夜なわたしの身体をがんじがらめにする。

生きていることそのものが、さみしいと
谷川俊太郎は言っていた。

いつか自分の命に終わりが来ることを
知っていることは、さみしい。

胸が粟立つようなさみしさに
いつまでも慣れないまま、死ぬのか。

今夜ももうすぐ沸いてくる。

 
Letter from 25 Feb.2010 to 5 Oct.2016

 

 

はじめまして、イラストレーターの柊有花と申します。
このたびアパートメントさんに寄稿させていただく機会をいただき、
とてもうれしく思っています。

冒頭の日付にあるように、上の文章は2010年にわたしが書いたものです。
今回の企画をいただいたとき、以前書いていたブログのことをまず思い出しました。
そこにつづられていたのは、いまのわたしの記憶を掘り起こしてみても輪郭がおぼろげな出来事、感情、思考で、
そこにいるのは自分であってもう自分ではないような
だけどとても近しい「誰か」からの言葉のように感じられました。
なつかしい、とも違う、いとしい、とも違う、ただそこに新しく親しい友人を見つけたような心持ちで、
6年前のわたしの言葉に、いまのわたしが返事をするなら。

時間を超えた長い文通のようなことをしてみたいと思っています。

どうぞおつきあいのほど、よろしくお願いいたします。

 

柊 有花

柊 有花

柊 有花

幼児向けの学習教材制作・書籍編集職として8年間勤務ののち、
イラストレーターとして独立。
いまは女性向けのイラストを主に描く。

2017年4月、吉祥寺百年にて個展開催予定。

Reviewed by
ハヤシマドカ

「二十億光年の孤独」は、谷川俊太郎のデビュー作である。そのとき、谷川さんは間違いなく若く、一人のただの青年だった。「ひりひりするような淋しさ」は、一対どこからやっくるのか、人間は何時それに慣れるのか。最早馴染むのか。有花さんの絵の黒を眺めながら思う。
 

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