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2F/当番ノート

Letters #6

当番ノート 第29期

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2010年1月10日からの手紙

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深夜に非通知の着信。

普段ならそういう電話には出ないのに
なんだか好奇心にかられて電話をとった。

もしもし、と言うと、
受話器からかすかに歌声が聞こえてきた。
もしもし、とわたしはもう一度言ってみたけれど、
あちらからは歌が聞こえてくるばかり。
なんだか変な電話だな、と思った。

電話を切ると、またすぐに電話が鳴った。
同じく非通知の相手から。
しばらく着信音が鳴ったあと、留守電に切り替わると電話は切れた。

それからまた電話が2度鳴った。
今度は留守電に切り替わっても電話は切れない。
何かを吹き込んでいるのか、
しばらくの間、録音中の表示が出ていた。

なんだかこわいから消そうかな、と思ったのに、
またしても好奇心に負けたわたしは
おそるおそる再生ボタンを押して、電話に耳を当てた。

さきほどの、歌が入っていた。
わたしの知らない歌。
女性の、恋の歌。

そのとき、わたしの番号を知っているのは1人しかおらず、
そしてかけてきたのはその人ではなかった。

しばらくあれこれ想像をめぐらせて、なかなか眠りにつけなかった。

Letter from 10 Jan.2010 to 9 Nov.2016

柊 有花

柊 有花

幼児向けの学習教材制作・書籍編集職として8年間勤務ののち、
イラストレーターとして独立。
いまは女性向けのイラストを主に描く。

2017年4月、吉祥寺百年にて個展開催予定。

Reviewed by
ハヤシマドカ

先端技術は、いつも夢みるような可能性を開いてくれる気がする。でも、どんな技術にも、人は割合慣れてしまうのだ。忘れていた倦怠感がとぼとぼやって来る。あなたが最先端なわけじゃないとか。ただ当たり前にあることで、もう騒ぐほどのことじゃないなど。技術だけあっても、それが、そのまま人と人のこころを結びつけるわけもなく、恋が終わるときはしんとなる。もう何も動かない。分かっているのにとっても淋しい。恋の遠景は、(黒電話はほぼ絶滅しても)携帯電話の向こうからもきちんと届くことを知って、すっかり失念していた田辺聖子の恋愛小説を思い浮かべる。有花さんの描くセンチメンタルジャーニー。

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