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2F/当番ノート

Letters #5

当番ノート 第29期

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2010年8月25日からの手紙

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昼下がりに雀の巣を見た。

お母さん雀と、もうすぐ巣立てそうなひな、そしてまだ小さなひな。
ずいぶん育ちに差があるなと訝っていたら
小さな方のひながわずかに飛んで、わたしの肩に留まった。
ひなの羽根は、やわらかく小さな三角みたいだ。

肩に載せたまま家に帰った。
しばらく餌をやって世話をしていたけれど、
小さなひなの身体は弱くて、
生きるのに耐えられないみたいだった。

もうすぐ死んでしまうという時に、わたしはひなの写真を撮った。
ひなの愛らしさを手元に残しておきたくて、
だけどそこに、ひなの本当の愛らしさは写らないと知っていながら
むなしいけれど、撮ることをやめられなかった。

そうして死んでしまったひなを手のひらに載せて
母に、ひな、拾ったんだ、可愛いでしょうと言うと
母は、可愛いね、と言った。

そこで目が覚めた。

さみしさやむなしさではなくて
ひなのぬくもりの余韻だけがしばらく続いた。

Letter from 25 Aug.2010 to 2 Nov.2016

柊 有花

柊 有花

幼児向けの学習教材制作・書籍編集職として8年間勤務ののち、
イラストレーターとして独立。
いまは女性向けのイラストを主に描く。

2017年4月、吉祥寺百年にて個展開催予定。

Reviewed by
ハヤシマドカ

枕草子を書いた清少納言は、第百五十一段で「なにもなにも ちひさきものは みなうつくし」などど言い切っているけれど、夢の中に残るちいさな体温は、別のことを知らせようとしているかのようだ。切り取る。めくるめく。切り取る以外のなにか。そぎ落とされ選び抜かれたそれではなくて、あまりにも心を全部持って行かれることを拒み、立ち尽くす。

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