___そのネコは足ふきの上にすわったのです。足ふきの上にすわるネコはたくさんいます。だれでもそれをしっていますね。べつにちっともふしぎなことではありません。ところが、ある足ふきの上に、あるネコがすわったら、ふしぎなことがおこったのです。(「足ふきの上にすわったネコ」より)___
煙猫のお気に入りの1つが、濃い赤に幾何学模様、そのまま空を飛びそうな雰囲気の玄関マットで、妹曰く「上等のものだからネコの爪とぎなどには決してしてはいけない」ものらしいのです。しかし、そういうものを猫が好むのは分かり切ったことであり、猫を飼うものは「まだそうなっていないとき」からそういうものだとあきらめなければなりません。もちろん煙猫も至極当然、目を覚ませばすたこらと玄関マットへ向かいます。その小さな絨毯の中央で大きな伸びをし、おもむろにバリバリバリと爪を砥ぎ、ぼてっと転んで毛づくろい。もう彼此三年、目の詰まった「上等」の絨毯は言葉の通り上等で、破れせずほつれもせず煙猫のライナスの毛布の役目を果たしています。
さて、今回は猫と足ふきマットの話を紹介します。「足ふきの上にすわったネコ」という話で、イギリスの作家ジョン・エイキンの短編集『しずくの首かざり』の中の一遍です。願いをかなえてくれる足ふきがあるのですが、それには1つ条件があり「猫が座っている時」に限るのです。
びんぼうな暮らしをしているルウおばさんとエマという女の子。エマが成長するにつれ服は小さくなるのですが新しい服がありません。服を脱いで洗ってしまったら縮んでもう着られなくなってしまうかもしれないと思ったおばさんは服をエマに着せたまま一緒に洗い、そのままエマを物干し綱にぶら下げました。そこにやってきたのが妖精で、妖精はエマに赤・青・ねずみ色の三枚の服、そして緑色の目をした黒い子猫をあげるのです。その後、ねずみ色の服はあんまりきれいな色でないという理由で猫の足ふきとなるのですが、エマはひょんなことから猫が足ふきの上にいる時に願い事をするとそれがかなうことに気付きます。ところが相手は気まぐれで名高い猫ですから、そううまくはいきません。願い事を言い終わる前にふらりどこかへ行ってしまうので、アイスクリームが食べたかったのに氷(アイス)になってしまったり、箱に入ったおもちゃが欲しかったのに箱だけが置いてあったりします。最後には猫が足ふきの上で眠り続けていたために大変なことが起こります。
ぴんと来た方もいるかもしれませんが我が谷底の煙猫も黒猫です。そしてひいき目にみて緑色の目ということで、あとはねずみ色の足ふきを用意しなくては、赤い絨毯御役目御免!と思っているところです。さて、何をお願いするとしましょうか。