長期滞在者
部屋にこもって生活していると、それまでは何気なく見ていた出来事が大きく見える。誰かが居間にいる気配。音や匂い。誰かとご飯を食べることの「特別感」。 外に出れば咲いている花や温かさに敏感になる。 近頃、日記を書くことは写真を撮ることに近いように思う。残しておきたい、忘れたくないという気持ちが私のなかで連綿と続く。 家のなかにいても春の訪れを感じることを覚えておきたい。 2月1日(月) 深夜、お弁当の…
長期滞在者
家から川沿いに100mほど歩いた場所にちょうど富士山が見えるスポットがある。夕暮れの時間にはそこからスマホで写真を撮る人をたまに見かける。 家から富士山までは遠く離れているので、大きさに圧倒されることはないが、ドッシリとそびえ立つ様は見てとることができる。私も安心感を憶えたいときにときどき富士山を眺めていた。 ある日、富士山をどうしても近場で見たくなり、小田原に出かけたことがあった。 昭和の私小説…
長期滞在者
絶景があるはずだと信じて駆け寄った窓の向こうには、見渡す限りの白い壁が広がっていた。しかも、結構間近に。 出張の予定が入ったからと私が開いたホテルの予約サイトには、「窓辺から横浜港を一望できます!」なんて文言が添えられていたはずだ。交通の便が良く、日程に合う予算範囲内の宿を確保することが一番の目的ではあったが、わざわざ掲げるほどの景勝ならばと、私も少なからぬ期待を抱いてしまった。新潟から電車と新幹…
長期滞在者
30代の頃から始めた難民支援の活動は、いつだって私の世界を広げてくれる。 2021年1月30日。EARTH CAMPのオンラインイベントとして、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のセッション「クイズで知る難民のいま UNHCR70年のあゆみEARTH CAMPに“Who We Are“」でモデレーターを務めた。UNHCR親善大使MIYAVI、Youth×UNHCR for Refugeesの横…
長期滞在者
子どものころ読んだ本などには、恐竜は体が大きいので尻尾に怪我をしても気づくのに長い時間がかかる、みたいなことが書いてあったけれど、これは現在では否定されていて、彼らはそこそこに俊敏な生物であったらしいということになっている。神経の伝達速度というのはどの動物でもそんなに変わりがなく、ということは人間の20倍ある巨大な恐竜であっても、人間の20倍程度の時間で神経伝達が行われるということだ。人が感知する…
長期滞在者
20年来お世話になっているKさんの推薦で、ニューヨークからある作家さんが私のところに来てくださることになった。私はそうは思わないが、その作家さんは、あまり日本では知られていないらしく、東京での発表の場を探していらっしゃるというということだった。 ミーティングは大変楽しいもので、これまでの写真の話、いまの東京のアート事情から、世界のマーケットの状況や、今後の話など、あっという間の2時間でした。 その…
長期滞在者
年明け。 どこにも行けないという制約のなかでも、はじめて体験できることが幾つかあった。お雑煮を作ったり、お屠蘇を飲んだり。 我慢の日々だけれど、辛いとこぼすだけにはなりたくない。 昨年の1月の家日記を読み返したら、今と変わらず、側にいる人たちに助けられていたんだと気づく。一層、この場所を大切にしたいと思う。 1月1日(金) 元旦。朝起きて、お雑煮を作る。実家のお雑煮には人参、大根、銀杏、お餅、三つ…
長期滞在者
年末年始は遠出もせず、特に大きな買い物もしなかったが、唯一1500円ほどのコーヒーポットを買った。これまではやかんを使ってコーヒーを淹れていたが、やかんは棚の下にしまい、キッチンのコンロには常にコーヒーポットが乗っているようになった。 朝起きて、コーヒーポットで湯を沸かし、冷凍庫からコーヒーの粉を取り出し、ドリッパーに付けたフィルターに1杯強の粉を落とし、「の」の字を描くように湯を1周させ、21秒…
長期滞在者
最近自転車の話が多くて興味のない方には鼻白むところだろうが、また申し訳なくも自転車の話からはじめる。自転車乗りが自転車に乗り出すきっかけというのは幾多あろうけれども、僕は前にも書いた通り、車に乗るのが大嫌い、電車も乗りたくないし、歩ける範囲ならば歩くのが一番好きなわけだが、自転車というのは歩くより速い上に車や電車を使わずに遠くまで行けるのがいいのである。しかも想像以上に遠くにだ。東京での展示で知り…
長期滞在者
夢が私の人生をここまで連れてきてくれた。 2021年は1月1日から、自分がやりたいと思って続けてきた仕事から始めることができた。ROCKの総合情報総合サイトVifで担当した、4人で新たなスタートを切った、摩天楼オペラのインタビューの公開。レギュラーラジオ番組、練馬放送「Voice of Heart」新春特番の放送。早くも1月2日にはマイクを握ってアナウンスをする場面もあり、正月気分はほとんどない年…
長期滞在者
1月12日。今年はじめてのギャラリーの営業日は、色々やることが重なって仕事場を出たのが夜の9時半でした。お腹もすいたし、高速に乗る前に軽く腹ごしらえと思って、車庫から出たその時まで、飲食店が午後8時までの時短営業になっているのをすっかり忘れていた。 これほどまでに、綺麗さっぱりお店が休んでしまうとは。午後9時過ぎに何か食べたい、と普通に思う自分がいて、それが無理だとわかる。ただそれだけのことだが、…
長期滞在者
昨年はPTSDの治療、仕事・生活・家庭における絡み合った問題、世界規模での事象、そこまでわくわくとはなれなかったけども波瀾万丈で、するべき葛藤に挑んだのではないかと思います。 文字を打つのが遅くなったり、人に会うのが危うくなったりとPTSDの症状ってこんなにも迷惑、苦痛が起きるのかと2年目にしてまだまだびっくりしてますが、少しずつ慣らしてみます。言うならば、弱音と言われる囁き呟きを吐きながらちょっ…