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「どんなに苦しくても、愛するものから決して離れない決意」【UVERworld「HOURGLASS」(2021年3月10日リリース)】

長期滞在者

10年前の私へ。

あなたにはここからとてつもない苦しみが待っているよ。
何度も自分を終わらせたくなると思うほどに。

今、目の前で起きていることが信じられなくて混乱していることでしょう。車が海にのみこまれていく映像をスクリーンで見た瞬間、足の震えが止まらなくなって、自分でその足をぎゅっと押さえたよね。理解をするよりも先に、身体が震え出した。

翌日、家へと帰るとき。
目の前に広がる青空。咲き始めたばかりの花に希望を見出していたよね。
あなたは、何一つ、あきらめていなかった。

2011年3月11日から進む10年の月日。
私にとって、こんなに苦しい10年はなかったと思っている。そして、恐ろしいことに、10年後には、さらに世界が混乱しているんだ。

あなたは今思っているよね。
3月11日の朝は、これから全てが上手くいく明るい光の中にいたのにと。うん。私もあの日の景色をはっきりと覚えているよ。

その光が一瞬で、消えた。

これからの10年。本当に大変だと思う。その困難から逃れる方法があれば教えてあげたいと思うけれど、残念ながら回避する道はどこにもないんだ。それは全て受け入れるしかないから、覚悟していて。

ただこれだけは言える。
あなたはあきらめるということだけは、絶対にしないよ。どんなに泣いても、生きていくから。

出会いが、あなたを救ってくれるから。
これからの10年で出会う人たちは、あなたにとってかけがえのない人たちばかりだよ。

2011年3月11日の朝。
カーテンを開けた部屋。枕元に置いている砂時計に光が射しこんだ。時を刻む砂を包むガラスが輝いていた。大丈夫、これからは全て上手くいく。そんな気分になるような綺麗な朝だった。

私の部屋にある砂時計は、2010年に島根県にある仁摩サンドミュージアムで購入したもの。砂時計は砂が全て下に流れ落ちても、ひっくり返せば、過去が未来になる。仁摩サンドミュージアムで見た砂時計へのそんな言葉が心に残り、家に連れて帰ったこの砂時計は、過去、現在、未来に思考をめぐらせるときに手にする私の宝物だ。

東日本大震災の発生から10年となる日の前日、2021年3月10日にリリースされたUVERworldのニューシングル「HOURGLASS」。私が最初に聴いたのは、昨年2020年12月25日の日本武道館でのライブ。砂時計には特別な思いがあっただけに、砂時計を意味するタイトル、砂時計が出てくる歌詞だというだけで、引力のように心が魅き寄せられた曲だった。

2021年3月11日は、日付が変わってから、一日中ずっとこの曲を聴いていた。胸には東日本大震災後、縁があって行くことができた、宮城県石巻市、牡鹿半島に住む女性たちが鹿の角と漁網で作ったOCICAのネックレス。

この日は、レギュラーラジオ番組、練馬放送「Voice of Heart」の収録をしていた。10年前と変わらず、私はラジオ番組のラジオDJとして生きている。その日の番組では、10年後の今見て欲しい、東日本大震災からの10年に寄り添った映画と写真を紹介した。同時に、難民支援をしている私にとっては、2011年3月から始まったシリア紛争が未だに終わっていないことを番組から伝えた。

2021年3月11日が近づくにつれて、東日本大震災のことを伝える映画、写真、テレビ番組、ニュース記事などに触れていて、涙が止まらなくなることばかりだった。なぜこんなにも心が揺れてしまうのだろうと思う毎日を過ごしていた。

あれから10年。気づけば「震災前」「震災後」という考え方が自然に頭の中にできてしまった。それほどに「震災後」は人生観が変わった。

特に死に関しては、はっきりと10年前と違う。震災後に、大切な友人を次々と突然亡くした。昨日まで毎日話していたのに、「また明日ね」と普通に話していた当たり前だと思っていた日常が、翌日には突然終わりを告げた。その経験から、死は日常の地続きだということを実感した。

喪失は確実に私を変えた。

10年後の今年は、とても大切なことがあった。
東日本大震災が発生した2011年の8月。ボランティアとして入った宮城県石巻市雄勝町で20代のゆきちゃんと知り合った。初めて会ったときに「何もかも流された」と話してくれたゆきちゃんとは、その後も石巻で会ったり、手紙やLINEなどで交流をしてきた。けれども、数年ぷつりと連絡が途絶えてしまった。

昨年の9月末。ゆきちゃんから久しぶりにLINEに長いメッセージが届いた。そこには彼女のこの数年の苦悩が綴られていた。そして、お腹に新しい命が宿っていること。赤ちゃんの出産予定日が2021年3月11日だということを教えてくれた。

LINEの画面を見つめながら、周りにはたくさんの人がいたにも関わらず、私は泣き出してしまった。離れていても、会うことができなくなっていても、こうして大切なことを伝えてくれたことが嬉しくてたまらなかったと同時に、このことを私に伝えようとしてくれたゆきちゃんの気持ちを思うと、どうしたって涙が止まらなかった。

予定日よりも早く2021年2月27日に、ゆきちゃんは男の子を出産した。生まれたばかりの赤ちゃんと彼女の笑顔の動画を見ていて思ったことがある。

私にとっての復興とは、彼女の幸せを見守ること。どんなことでもそうなのだが、私は大きく物事を見ることも考えることもできない。できることは小さなことだけだ。私が大事にしていきたいことは、自分が出会った人を大切にしていくこと。その人から知ること、感じることから、自分ができることを考え、動き、明日へ繋げていきたい。一人ひとりを見つめていたい。寄り添っていたい。

東日本大震災後の日本は、世界は、今、決して平和だとは言えない。頻繁に発生する自然災害、世界の難民の人数は毎年過去最多を記録し、次から次へと、一体どうしてこういうことが起きるのだと思うことばかりだ。

「忘れたくない あの日々を」

この10年を振り返ると、喜びよりも悲しみの方が多く蘇ってくる。苦しかった。よく10年、生きてこれたと思うほどに。

それでも、私が生きようと思えた光とは、出会いだった。人の力に救われてきた10年だった。どん底の底まで抜けたような全く動くことができない有痛性をさまよう中、今この人に会うことが必要だったのだろうと思う出会いがあった。

そうして下した決断は、いつだって、愛からは逃げないということだった。

「間違いなく確かなことは
愛するものから逃げれば後悔する」

2011年3月11日から10年後の世界に新たに生まれた楽曲、「HOURGLASS」を繰り返し聴いている現在、この文章を打つ手が震えている。でもその震えは、あのときのような恐怖からの震えではなく、これからの10年に向かう武者震いだ。

この10年よりもさらに信じられないようなことが起きるであろう未来。そんな世界を生きる中で、これまで出会った人たちの存在が力であり、希望であることは間違いないが、きっとここからも、私は出会う。

仁摩サンドミュージアムでは、砂時計の上と下を繋ぐ部分が現在だと、記されていた。砂があっという間に流れるように、時は一瞬たりとも止まってはくれない。時間が過ぎれば、それだけ、私の生も、日常の中で終わりへと近づく。
今日の「サヨナラ」が、永遠の「サヨナラ」になるのは、明日かもしれない。どれだけの時間が私にはあるのだろうと、砂時計を手にして思う。

だからこそ、心を自由に、出会いが告げるサインを見落とさないように。
今、この出会いが、私がこれから生きる道への光だと信じて進めばいい。

愛がそこには、必ずあるから。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ×3秒〜12秒)
東日本大震災から10年となる前日。2021年3月10日にリリースされたUVERworldのニューシングルをお届けしましょう。
どんなに苦しくても、愛するものから決して離れない決意を奮い立たせてくれるナンバーです。

UVERworld「HOURGLASS」













武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、イベント司会、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会広報委員として、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

3月11日。心がざわつき、気持ちがいったりきたりして忙しかった。人生で考えれば数ある中の通過点のひとつでしかないけれど、あの日から10年、節目だなとも思う。これからのために、これまでを考えた。武村さんは、あの日生まれた多くの悲しみをも引き受けて、信じれるものと共にこれからの10年を生きるのだろう。

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