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3F/長期滞在者&more

「歌声に込めた心からの言葉と感情がしっかりと刻まれる」 【nurié「モノローグ」(2019年8月14日リリース)】

長期滞在者

好きだと思う音楽や、楽器の音に触れていると、どうして心がこんなにも輝くのだろう。

4月に武村貴世子のニコニコ生放送「KEY CHANNEL」を立ち上げ、vistlipのギタリスト、Yuhさんのレギュラー番組『Butterfly Vision』をリスタートさせた。そして、6月には、今年の3月31日に渋谷にオープンした、イケベ楽器店の新たな総合旗艦店イケシブから生放送で番組を届けた。

きっかけは、イケシブの内覧会に呼んでいただいたこと。店内に一歩足を踏み入れると、わくわくするような楽器の飾り方はもちろん、配信スタジオやイベントスペースなど、エンターテイメント・カルチャーの発信基地としての側面も持つ“音楽・楽器の次世代型ストア”であったところに一目惚れして、自分のチャンネルからの番組はここから放送したいと思い、田中義章社長をはじめ、イケベ楽器店の方々の音楽愛、楽器愛にあふれるサポートのおかげで実現した。

番組では、Yuhさんにイケシブで選んだギターをその場で弾いていただいた。
ミュージシャンが楽器を持つ。音を奏でる。
奏でる人間の魅力がキラキラと輝きだす。
そして、聴く人間の心に明るさと嬉しさが込み上げる。

この場所から番組を届けたいと思った一番の理由は、ミュージシャンにとっても、視聴者にとっても、音楽と密接な関係を築いて、とにかく楽しい! と感じられる時間を過ごして欲しいと思ったからだ。

音楽が在ることによって、湧き上がるパワー。
それは何よりも、目の前に立ち塞がる困難を乗り越えさせてくれる。

東京は7月16日に梅雨明けして、2021年の夏がやってきた。
本来ならば、夏は音楽野外フェスティバルやイベントなどで、多くのライブが観られる季節。
夏特有のわくわくした空気の中で、初めて観るバンドのライブなどに触れられる機会が大好きだ。
しかし、今年も新型コロナウイルスの影響で、フェスやイベントの開催もままならず、夏に伸び伸びとライブを楽しむことは、まだ可能にはなってはいない。昨年に比べれば、ライブを観る機会は増えているが、ライブを観たいなと思っても、このコロナ禍で観られていないバンドは数多くある。

そんな私が今、一番ライブを観たいと思っているバンドは、nurié だ。
2019年7月29日に始動した、大角龍太朗(Vo)、廣瀬彩人(G)、小鳥遊やひろ(B)、染谷悠太(Dr)による、ヴィジュアル系ロックバンド。
今、私は彼らが今年の5月5日にリリースした、1st Full Album『拝啓、二千二十年へ』を夢中になって聴いている。

一番最初に聴いた彼らの楽曲は、2019年8月14日にリリースされた1st シングル「モノローグ」。
ヴィジュアル系バンドというと、疾走感のあるせつないロックチューンや、激しく頭を振るような荒々しさのある曲などを想像するかもしれないが、この「モノローグ」は、メランコリックな憂いを漂わせたミッドチューン。煽り立てるような激情とは対極にあるような、しなやかに奏でられるメロディ。けれども、歌声には抑えきれないような感情の吐露を含み、寂しさの中にあっても、決して手放さずにいる未来への前進を丁寧に歌い上げている。

こういう曲を最初のシングルにするヴィジュアル系バンドは、そう多くはないだけに、「モノローグ」を聴いたときに、このバンドの今後がとても楽しみになった。そして、5月に発表された1st Full Album『拝啓、二千二十年へ』は、1曲目の「今宵、未来の為に歌おう。」から心を鷲掴みにされた。ジャジーなイントロから始まるこの曲は、「モノローグ」を最初に聴いたときと同じように、ヴィジュアル系バンドの1stアルバムという概念から飛び出した世界が、このアルバムには込められているという予感を感じさせる、心躍る1曲目だった。続く楽曲は、ロック、ポップス、ジャズ、歌謡、デジタルサウンドと、様々な音楽の楽しさを柔軟に取り入れている曲が揃い、どの曲を聴いても「そうくるか!」というわくわくした驚きに満ちている。楽器の音も、実に気持ちいい。テクニックどうこうよりも、がむしゃらに楽器に向き合うからこそ生まれる活き活きとしたフレーズや、何よりバンドで音を重ねるからこそ生まれるグルーブや熱情を感じる音に、ライブが観たいという気持ちが高まるばかりだ。

そして、ヴォーカル大角龍太朗の歌声と言葉が、一つひとつしっかりと心に刻まれていく。あえて具体的なアーティスト名をあげるが、UVERworldやamazarashiを彷彿させるような、剥き出しの感情を、ごまかさない日本語できちんと綴りあげている。2020年8月14日に2nd singleとしてリリースし、アルバムにも収録された「人として人で在る様に」は、退屈しのぎにスマートフォンから指先一つで人を傷つけていく現代社会の人の心のありようへの憤りをぶちまけながらも、「人として在る為に 僕らは心を持ったんだ」と、人間の心が持つ真の優しさを諦めずにいる姿勢が感じられる。

1stアルバムというのは、一枚目だからこその、新しい発見や驚き、そして「これから」が詰まっていて、聴いていて本当に楽しい。nurié の1st Full Album『拝啓、二千二十年へ』はまさにそういったアルバムで、私は、この夏、何度も何度も繰り返し聴くことを止めることができずにいる。これからが楽しみなバンドに出会えたことは、こんなにも毎日が躍動していくのだなと思うくらいに、私はこのアルバムから、力を得ている。

さて、そういうアルバムであるから、一曲だけ紹介するならどの曲を選ぶかがとても難しい。
好きな曲ばかりで選曲に悩んだ時はどうしたらいいか。
FM802で、ラジオDJとして歩み出した新人時代、番組のディレクターにこう言われた。
「そういうときは、最初に出会ったときに聴いた、心を動かされた曲を選ぶんだよ」と。
このアドバイスに従って、今回は「モノローグ」を選んだ。

さて、私が紹介するこの曲は、あなたにどう響くだろうか?
願わくば、あなたの音楽との生活が、今よりも鮮やかに色づく、出会いの曲となりますように。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜10秒から〜27秒”に乗せて)
ここでお送りするのは、私が今一番ライブが観たいと思っているバンド、nurié のナンバーです。
5月5日にリリースした1st Full Album『拝啓、二千二十年へ』は「シーンの常識を上書きするヴィジュアルロックバンド」を掲げている彼らの言葉どおり、ロック、ポップス、ジャズなど、実に様々な音楽の楽しさを取り入れた、メロディセンスが光るサウンドをもちろんのこと、歌声に込めた心からの言葉と感情がしっかりと刻まれる楽曲揃いです。
では、そのアルバムから、彼らの1stシングルでもあるこの曲を。

nurié 「モノローグ」


武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、司会、ライター、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会 国連難民サポーターとして、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

新たな出会い、というのは、昨日今日新しく生まれてきたものとの接点だけではない。少し前のものだって、数年前のものだって、受け取り方次第で、いつだって新しい。新たな出会いに歓喜しながら、今年もまた、いつもと違う夏を越える。

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