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3F/長期滞在者&more

「一瞬で心にまっすぐな光が射す曲」【ストレイテナー「叫ぶ星」(2020年10月14日リリース)】

長期滞在者

この身体が動くからこそ、私はマイクの前にいることができる。
ストップウオッチを握って、イントロの秒数でおさめる曲紹介の緊張に鼓動を高め、スタッフと真剣に言葉を交わして番組を作って、収録を終えたときの安堵と体温の高まりを感じられるのも、生きて、健康な身体があるからこそだ。

2015年。戦後70周年を考えるラジオ番組『THINK OF TOMORROW』を制作したときに、漫画家の水木しげるさんに「希望を持ち続けるために大切なことを教えてください」と質問したときに返ってきた言葉は「健康」だった。新型コロナウイルスの感染が続く今、この「健康」という言葉があの頃以上に、希望のために必要だということを実感するばかりだ。

最近、私はこのとき水木しげるさんに質問した、もう一つの質問の答えをとてもよく思い出すようになった。
「水木さんにとっていい社会、いい暮らしとはどんなものでしょうか?」
その答えはこれだ。

「びんぼう人のいない世界」

今の自分が生きている日本という国は現状、いつ爆弾が落ちてくるかという恐怖に毎日苛まれることはない。しかし、いわゆる戦争状態ではないから「この国は平和」という言葉を使っていいものかと躊躇する。昨年から続く新型コロナウイルスの影響により、現在までに3回に及ぶ緊急事態宣言の影響で、今どれだけの人たちの生活が危ぶまれているか。もちろん私もその一人だ。制限がかけられた社会の中で、人の前に立ってマイクを握りしゃべる仕事はほとんど無くなってしまった。それは収入を無くすということ。

貧乏は怖い。どんどん追い詰められていく。お金がないから食べられないは、身体も精神も壊す。
今、この国には、新型コロナウイルスの影響で、仕事を失い、収入を得られなくなっている人たちが多くいる。

それでもこの国は「平和な国」と言えるのだろうか?

私が生きる世界に音楽は欠かせない。

私にとって、今年最初にライブに行った日は、2021年1月21日。KT Zepp Yokohamaへ、ストレイテナーのライブを観に行った。2021年1月15日仙台PITからスタートした、最新アルバム『Appalausu』を提げたツアー、Appalause TOURの2日目にあたるライブだった。

ストレイテナーのライブを観るのは、1年3ヶ月ぶりだった。最後に観たのは、2019年10月23日、名古屋でのASIAN KUNG-FU GENERATION、ELLEGARDENとによる「NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019」。インディーズ時代のストレイテナーに出会ってからずっと、1年以上、彼らのライブが観られないなんてことはほとんどなかっただけに、こんな現実がとにかく信じられなかった。彼らの音楽に触れたくてたまらなかった。

1年3ヶ月ぶりのライブで最初に聴いた曲は「叫ぶ星」。
「出逢えたねやっと」
その歌詞が、心に沁みて仕方がなかった。

続く「Ark」。東日本大震災後、初のワンマンライブとなった2011年5月3日の品川ステラボールでのライブでも演奏していた曲で、そのときに「気流が乱れてうまく飛べないけど」から続く歌詞がとても心に刺さって、あの日から私にとって「Ark」は特別な曲になった。そんな「Ark」が、COVID-19によるパンデミックが続く世界で、私が最初に観たストレイテナーのワンマンライブでもセットリストに入っていたことにも心の震えが止まらなかった。ああもうなんで世界が困難なときにやっとライブを観られたときは「Ark」なんだろうと。

そのときの気持ちが、再び蘇ってきたのが、2021年6月9日に発売されたストレイテナーの最新ライブ映像作品「20201217 + 2021 Applause TOUR」を見たときだった。Appalause TOURのファイナル公演となった、2021年2月8日、LINE CUBE SHIBUYAでのライブを収めたこの映像は、私が 1月にKT Zepp Yokohamaで観たときと同じ様に、「叫ぶ星」「Ark」の順にライブが進む。この映像作品は、コロナ禍で彼らがどんな音をステージから響かせ、客席のファンと共にいかに大切な思いを交わし合ったかという、バンドの歩みの記録としても、とても貴重な映像だと私は思う。

2020年12月2日にリリースされたアルバム『Applause』は、新型コロナウイルスの感染が広がる中で制作されたアルバムだ。最初に聴いたときに、心が、思いが、生々しくストレートに入ってきた感覚を今でもよく覚えている。新型コロナウイルスの影響であっという間にひっくり返されてしまった日常。ライブ会場で高らかに鳴り響く音楽に触れられなくなってしまった世界。ミュージシャンがステージに立って演奏し、歌うことができなくなってしまった現実。そんな日々が、このアルバムの音と歌から感じるばかりだった。

2020年は自分自身も随分と気が狂いそうな日々だった。
自分の目から見える景色がずっとモノクロームの静止画のようだった。
そんなときに聴いたこのアルバムは、深淵に引き摺り込まれている自分に「こっちだよ!」と手を取って、苦しみを共有しながらも光が射す方へと引き戻してくれるような気持ちになった音楽だった。

好きな音楽を聴くと、自分が好きな自分になれる。

不安しかない世界で。
そんなふうに自分が自分に戻れる魔法をかけてくれるのが、音楽だ。

未だ自由には音楽を鳴らせない世界で。
それでも様々な工夫と努力と協力で、昨年よりは、音楽のライブを行うことができている。
とはいえ、その開催の数は、まだまだ少ない。
音楽家が音を出せないというのは、仕事ができないということ。

自分にとって身近なミュージシャンたちが、共通して口にしている言葉がある。
「自分たちが無事にツアーを行うことによって、ライブは安全な場所だということを証明したい」と。
私が大切だと思うミュージシャンは、自分のことだけを考えていない。
今のこの社会で、自分たちが安全を実証するという思いを胸にステージに立つミュージシャンが多くいる。
彼らは今だけのために動いていない。後世のためにも、音楽がこの世界には必要で、ライブがいかに大切な場所であるかを証明するために、やるしかないという決意と覚悟を持って前に進んでいる。

彼らの背中はとても頼もしい。
同時に、彼らが背負うものが少しでも軽くなる日が来ることを願わずにはいられない。
それは、私が音楽に救われてきたからだ。
音楽を作る、彼らのような人たちが生きていてくれるから、私は光を見出せる。
彼らが今日は楽しかったと笑顔で語れる日々が来ることが、私も見ていて一番幸せになれる。
彼らが嘆き苦しむ顔も、傷つけれられていく姿も、これ以上見たくない。

「そこに光を見つけられるように」

音楽を奏でる者も、音楽を聴く者も。
互いがいるからこそ、光を見つけられるのだと思う。
そんな関係性があることが、この世界でどれだけ愛しいことか。

世界は良くなるという希望はずっと持ち続けている。
それだけは、絶対にあきらめない。

心の底から今が平和だと思えて、あなたと笑い合える、その日まで。
私は絶対に、あきらめない。

【ラジオDJ武村貴世子の曲紹介】(“♪イントロ〜11秒”に乗せて)
この曲を聴くと元気になれる、がんばろうという気持ちが湧く曲がありますよね。
私にとって、今はこの曲を聴くと、一瞬で心にまっすぐな光が射す曲です。

ストレイテナー「叫ぶ星」

武村貴世子

武村貴世子

ラジオDJ、MC、ライター。
これまで、FM802、Fm yokohama、FM-FUJIなどで番組を担当。

ラジオ番組、イベント司会、トーク&アナウンス講師はもちろん、
朗読と音楽のコラボレーションライブも展開中。

国連UNHCR協会広報委員として、
難民支援を始め、世界や社会への関心が深く、社会貢献活動にも積極的に取り組む。

また、タロット・リーディングの学びも深め、
フリーランスでその活動の幅を広げ続けている。

Reviewed by
宮本 英実

いつだって、音楽は希望だ。夏が近づく今日この頃、音楽フェスを思う。ミュージシャンたちが鳴らす音楽に、そこにいる人々が思いを馳せ、それぞれのスタイルで時を噛み締めながら音楽に触れる最高に幸せな時間。心の平和。そんな風景を、この夏見ることができるのだろうか?ふたたび、当たり前に大勢で音楽を楽しめる日を想って、私たちは足を止めない。

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