長期滞在者
「魔法使いは、おもしろはんぶんに、肥料の粉で、すばらしいケーキをつくりました。材料は、腐葉土と混合肥料、それに窒素がひとつまみでした。魔法使いはそのケーキに白い石灰の粉をまぶしました。」 『魔法使いのチョコレート・ケーキ』より 「何して遊ぶ?」「天気もいいし、おままごとしよう。」そう決まると、私達は家の裏にあるコンクリート塀をひらりと乗り越える。すとん、と着地すればそこは隣の家の畑で、隅には用水路…
長期滞在者
いきなり余談から。 今期はアニメもドラマも面白いものが揃っていて、チェックするのに時間配分が大変である。 前期が散々だったから、たまにはこういう時があってもいいのだが、いや、大変である。 物語シリーズの本領を久々に発揮してる感のある「終物語」、 それと同じく西尾維新原作で、こちらは実写ドラマ「掟上今日子の備忘録」(ガッキー最高!)、 前期から引き続き昭和テイスト満載の「うしおととら」、久々の当たり…
長期滞在者
日々の生活が変わりつつある。11月からは、今までとはまったく違う生活になる。ここ数年離れることなく一緒に過ごした、もっとも大事な人としばらく別々に生活することになる。一人暮らしというのはどういうものだったのか思い出そうとするけれど、思い出すのはふたりで過ごす日々の幸せな場面の数々。きっと寂しくなるとはわかっているのに、どこか自覚が持てないまま、旅立ちの日は近づいている。 今回、こういう道を選ん…
長期滞在者
時間というのは不思議なものだな、と最近あらためて感じています。いま現在、この文章を書いている瞬間はあっという間に過去になり、歳月がたてば思い出すこともさほど多くはないでしょう。そして私が、数分後、数時間後、数日後をともにする未来の「いつか」は、現在の私にはどこまでも曖昧な異物です。想像はできます。予想もできます。でも、絶対に同じものではない。現在の未来としての「いつか」と、未来の現在としての「いま…
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秋になったので、林檎ジャムを煮始めて、わたしには答えがない。 ひとの作品を見れば見るほど、何をやりたかったのか分からなくなり、本当の答えを探し出そうとする悪い罠にはまってしまう。楽しくないし、苦しいし、呪いのような気持ちが湧き上がる。ひとの回答をじぶんのもののように語るのでは、作る意味はないし、何やっているだろうというところをグルグル回る。早く答えが欲しい。すぐに答えが欲しい気持ちがやる気を削ぐ。…
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職場に去年から入ってきた若い女子が、聞けば相当ディープにプロ野球の、しかもここは関西なのに北海道本拠のファイターズの大ファンなのだという。タイガースかバファローズなら観戦も楽なのに、因果なことである。 もちろん定期的に北海道にも行くし、普段は京セラドームのバファローズ戦に通い、超望遠レンズをレンタルし、記者席横の特別ブースの料金を支払い、ファミリー向けの小さな一眼レフ(EOS kiss X7)をレ…
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大阪の吹雪大樹さんが主宰しているギャラリーアビィでは、感想カードが備え付けられていて、作家が不在の時や直接話すのが苦手、という人はそこに展覧会を見て思ったことを自由に書いて、会場を後にするというシステムがあります。 先日吹雪さんのツイッターだったと思うけれど、その時に開催していた展覧会の感想カードが、私の予想を遥かに超える膨大な量の紙の塊のようになっている図像を目にして、思わず声を上げてしまいまし…
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蓋のある箱が好きです。 手に乗せられる大きさなら尚良い。 手の上に乗っているのに、その中身がわからない。 まだ読んでいな本を手にしているのに似て、静かな興奮を誘うものです。 自分にとっての理想的な箱、極端な例は「海底二万海里」のノーチラス号でした。ネモ船長が己の知力と財力を結集して、世界中の美しい絵画、剥製、鉱石、この世の全てをあつめた、海底を進む驚異の部屋。 ココアの箱に、可憐な少女が描かれてい…
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先月から再開した朝ヨガのせいか、ここのところ体調も心調も頗る良好だ。 心の調子の方は、ほぼ3年ほど前にうつ病を発症して以来の好調で、なんだか気持ち悪いくらいだ。 ブリュッセルもこの一週間くらいは快晴が続いていて、吹く風は冷たいながらも清々しいので、 そのせいもあるのだろうけど、身も心も環境も清々しいのだから、こういう滅多にないことは、 つまり有難いことだから、気持ち悪いとか言わずにありがたく頂いて…
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とても漠然とだけれど、生きるのはとても難しいと思う。その一方で、気楽に生きていける方法があるのも、ぼんやりと気づいているような、気づいていないような。それを実践できるか、できないかはその人次第だし、捉え方だってそう。多分わたしは相当なネガディブ思考で、上手に感情をマネジメントできないだけ。多分、そう。 いつものことだけれど、結構仕事でのストレスを溜め込みがちで、ここしばらく気がずっと沈んでいる。自…
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ある物語について話したいと思います。題名は書きません。それはマンガであるかもしれないし、小説であるかもしれないし、映画であるかもしれない。一つの作品であるかもしれないし、複数の作品が混ざりこんでいるようにも感じます。ちょうど子供のころ読み聞かされた絵本を夢のなかで見るような、フィクションが展開される向こう側と鑑賞するこちら側が自在に交差するような、楽しいような辛いような経験について書きたいと思い…
長期滞在者
二十年以上前の話、二十四、五歳頃のこと。必要があって初めてカメラを買うことになり、当時働いていた中津カンテGのK氏に相談した。K氏はその当時からカンテのメニューや広報物のデザインワークを担当していた人で、写真やカメラのことも詳しかった。 どういうカメラを買ったらいいかまったくわからないド素人の僕にK氏は一から懇切丁寧に教えてくれたのだが、当時僕は「一眼レフ」という言葉すら、聞いたことはあってもどう…