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3F/長期滞在者&more

伝わるとか伝わらないとか

長期滞在者

「写真」は伝達手段としては非常に効率の悪い代物で、むしろ「伝わらなさ」そのものの比喩としての機能の方が上かもしれない。
もちろん悲観的に言ってるのではなくて、「伝わる」という言葉の安売りに辟易しているからで、伝わらなさを考える契機として写真があって良いのでは、と思ったのだった。

写真というのはもともと言葉とは伝達される情報の種類や方法違うものだから、言葉では掬いきれないものも放り出す。
それは言葉なんかより開けっぴろげで野放図で、言葉より雑でとりとめがなく茫洋としたものだ。
その茫洋としたものを言葉に翻訳しようとすると、その茫洋の大半は取り残されて捨てられてしまう。

写真を言葉になんかするな、と声を大にして言いたいが、それはとても時流に反するものらしく(笑)、自分の言葉で説明もできないものをどうして自分のものだとして世に出せるのか、なんて大上段に攻められると、こっちは余計に「はいはい、僕のはそんな大層なものではございませんので」と拗ねるしか手がない。

写真のわからなさというのは、要するにこの世の中のわからなさをそのまま写しただけの話であるから、それをわかるように説明しろという方がおかしい。
だって世界はわからないでしょう?
それをさもわかったような結論をくっつけて写真に添えて、理屈の図解にすることだけが写真の価値だろうか、と拗ね者の僕は愚痴るわけです。

なんでみんな「わからない」ことをそのまま「わからない」と受け止められないのだろうか。わからないことがそんなに不安なのか。いやたしかに不安ではあるが。不安ではあろうよ。それにしてもだ。
わからないはずのことを無理に言葉に翻訳して、大半をザルの外に散らかして、ザルに残った滓だけでわかったような気になる、そのことの怖さのことを考えないのだろうか。

言葉なんて、本当に雑なものだ。雑とわかった上で、雑な言葉同士でしかわかりあえない。それを当たり前と思うところからしか話は始まらない。
そういう風に、「わからない」写真は言ってるんだよ。
違うんかな。

世の中のわからなさを一つ一つ確認していくような、そんなもんでいいのではないかと、まぁここにも今まで何度も同じようなこと書いてるかもしれないけど、僕はやっぱりそう思うわけです。写真ってのはよ。

カマウチヒデキ

カマウチヒデキ

写真を撮る人。200字小説を書く人。自転車が好きな人。

Reviewed by
藤田莉江

写真に纏わる話でも特にひと晩でもふた晩でも喋れそうな話がやってきた。

もはやこれまでにぶち当たった色々なものから、鬱憤とも呼べそうな何かしらのカタマリのようなものがお腹の中にあり、蓋を開けると自分なんかは収拾がつかなくなる。
本文の10倍くらい書き散らして、それでもスッキリもしなくて、もういいんだ〜〜〜!と、布団にダイブしてしまいかねない感じの。ええ、この辺り、いい感じに拗らせています、レビュワー。

カマウチさんと全く同じではきっとないのですが、自分も写真を言葉で説明することには後ろ向きなタイプです。時流に反するとのことは自分も同じく重々承知なのだけれど。

逆に、何故そんなに「言葉にしろ」「説明しろ」という側はさも当然のこととしてしまえて、その「説明しなければならないと思う」理由をそれぞれは自分の言葉で言えますの・・・?(言える方はいいのです)

そこを「当たり前だから」とは言わずに、熱烈に語ってくれたりしますのか・・・?(決してこちらが上からというつもりではない)

まずはそこから話そうじゃないか。と、ほら、ひと晩で収拾がつかない気がするでしょう?

多分、そのくらいの根気を以ってして聞いてくれるのならば、言葉ででももう少し答えられるかもしれない。
日本語能力が低いからそうなんだと言われれば、それはそうかもしれないけれど。

言葉でやれることの雑さ(カマウチさんの言葉をお借りする)がわかっていないからこそ、言葉で(簡潔に)説明しろとか言うんでしょう?みたいな気持ちにどうしてもなっちゃうのです。

なかなか表に張り出す言葉にはできていないものの、自分自身は言葉として把握しているところもあるのだけど
自分が使う言葉が、相手が使う言葉と「全く同じだけの」深さや色彩や広がりを持つとは思っていないからそれをそのまま表へ張り出すことはためらわれるのだ。
それは当然、自分の方が優れており相手は劣っていると言う意味ではなく、ここが同じでなければ同じ意味にはならないという意味であるのですよ。

「でも、伝えたいんだろう??」

そう尋ねられるのかもしれないけれど、それひとつを答えるのにはやはりひと晩かかる話が必要なのだ。きっと。

今や少数派かもしれないけど、仲間はきっといると思うのだけどなぁ。

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