ここ数ヶ月間の結婚式ラッシュがひと段落して、実のところとても安心している。もちろん、めでたいことだし、心から祝福しているけれど、それとはまた別に、自分たちの生活もあるわけで。そんなことを言いつつ、ハワイでの結婚式はとても良かった。帰りの飛行機の中では、「Vacationの後の現実は、火傷した肌に水を差す」という言葉が胸の中をこだましていた。子どものころに好んで聴いていたBonnie Pinkの”Thinking of you”の一節。
いざ帰国してみると、意外なほどすんなり現実に戻ってこれたし、冷静に日々のことに向き合っている自分がいた。とはいえ、お金のことが気になるのは正直なところ。なにせ、この半年間はとても苦労した。薄給だったことも関係あるけれど、入院から始まり、引っ越しやら、転職やら、結婚ラッシュやらで、いろいろ物入りだったから、これからはもう少し貯蓄もできるだろうかという気持ち。
お金のことを考えると、いつのまにかとてつもない不安に襲われることが多い。幸いお金に困ることはない、と手相に出てるそうで、たしかにこれまでお金持ちではないなりに、なんとか人に助けられながら生きてこれた。もともと、どこか楽天家なのかもしれないけれど、心配しつつも、なんやかんや、おおらかにやっている。
たまに、電車の中にいる人々を眺めながら、ここにいる人々はほとんどの人がなにかしら仕事をしていて、その仕事からお金を得ているということが不思議に思えることがある。スーツのおじさんもいれば、何をしているのかよくわからないような人もいる。朝の電車はとても不思議な空間だ。実際のところ、働くことで、お金をつくっているというのは、実際どういうことなんだろう。
以前の仕事は、お金の動きがとてもわかりやすかった。接客、販売するということは、直接カスタマーからお代金として金銭を受け取る。商品と金銭を交換するという金銭授受はとても明確だ。コストと利益も目に見えやすい。それに、仕事で失敗したり、いまいちだったことがあっても、すぐに反省して次に生かせるようなスピード感があった。成長しているという肌感覚があって、そういう点もわかりやすくて、自分が今すぐやるべきことが手に取ってわかったのが良いところだったと思う。その一方、常に向上することが求められたから、たまに息切れすることもあったんだけど……
今はパソコンの前で作業していることが、どういうことだかお金になっている。人にメールを送ったり、質問に答えたり、考えたり、試行錯誤することが仕事で、私はそこからお金をいただいている。まだ、なにがどう動いているのか、まだクリアなビジョンはないし、初めてのオフィスワークで、これでいいの?って毎日のように思う。
もちろん職種も違うし、比べることはナンセンスだ。だけど、特に日々カスタマーと直接関わる仕事をしている人は、もっと評価されてもよかったんじゃないかと正直なところ思う。人と関わるということは、実はとても気を使うことだ。特別なスキルがなくても、誰にでもできるように思えるけれど、実はそうでもない。人と関わることも、適度な距離感や、空気を読むこと、気を遣うことも、とても技術のいることだ。
わたしは対人スキルがそれほど高くないから、前の職場でだいぶ鍛えられたと思う。自分には備わってなかったものを、培ったという点でもそうだし、トライアンドエラーが当たり前なんだと、失敗を受け入れられるようになった。今の職場でも、この経験は十分に生かすことができると肌で感じてる。経験は無駄にはなっていないし、そこから何かが始まっていて、深まったり、広がったしていくのだと思う。ただ、目の前にカスタマーがいるのか、パソコンの向こうにいるのか、そういう違いがあるだけで。
どちらの場合も、仕事は「つなぐ」ことなんだなと最近思うようになった。人と人というだけじゃなくて、お金とお金、場所と場所、人ともの、人と場所、社会の中に張り巡らされている、幾千ものつながりを強化したり、断線しているものをつないでいくことが働くということなんじゃないかと思う。わたしも、つながりをつくるための部品というか、大きな社会の一部。そう思うと、やっぱり無駄な仕事なんてないように思えてくるし、様々な仕事があるということも納得がいく。それに、優劣もない。
お金は、そのつながりの上を流れていく電気のようなものだ。働くことが、これまでより苦じゃなくなってきたのは、いろんなことに納得できてきたからだと思う。生きることは、働くこと、お金を使うことだから。つながりがあるからこそ、お金も流れていく。だから、明日も明後日も、きっと心配になることはあるけれど、それでもぼちぼちやっていけそうだなと思う。仕事が嫌になったり、お金のことで不安になったときでも、自分の立ち位置を確認したら、きっとまだまだ大丈夫。