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3F/長期滞在者&more

夢の中でエレベーターに乗ることによる分岐点の出現について

長期滞在者

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夢の中でエレベーターに乗ってしまうと
いつも強制的に別の夢に連れて行かれてしまう

夢の続きに戻れるだろうかと たまに
階数を思い出したり数えなおしたり
エレベーターを乗り換えたりするけれど
知らない人たちが次々と乗り込んできては
ぎゅうぎゅうと私を奥へ奥へと押し込む

エレベーターが消えると それはもう 
あの夢の終わりでこの夢の始まり

またいつかあの場所に戻ろうと
かろうじて記憶の崖を霞め留めて
落ちていく

日に幾つも夢を見て そして 
夢の途中で夢の世界が変わったことを
自覚することはよくあるけれど
別の夢に転換することを予見できるのは
エレベーターが目の前に現れた時だけだ

1010

**

脳はいかづちの巣巣 
悲喜こもごもも刹那に忘却
響き轟き 連々と
永劫無量劫三千塵点劫

錯覚に優劣はあるのか
脳を騙し脳に騙され
視覚を仕舞い
聴覚は狂いをどり
嗅覚も削がれて
触覚に味覚を蝕まれる

紐解き
緩み
散り散り

指先に経験を蓄積し
心臓に判断力を与える
肺胞が知識を包み込み
脂肪が感覚を高める

最早
クローンでも
クローンらしきものでも

その軌跡は暗澹たる奇跡
テロメアの悲劇を知る者よ

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***

目の前の貴方をただ抱き締めて
雫を飲み干し巡らせよう

エミュの卵は深い闇知る翡翠色

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

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