長期滞在者
このところ、ギャラリーに立ち寄る外国人の旅行者と思われる方々が目立ってきました。そしてリピーターになってくれる方が、家族やお友達を連れて再び来てくれたりすることが、徐々に増えてきています。 ギャラリーとしてのインバウンド対策、ということについて、今まで同業の誰ともそういう話題になったことがないのですが、日頃から備えておくことの一つとして、もっとも大事なのが、その場で持ち帰ることができる支度をしてお…
長期滞在者
「読むこと」というのは孤独な営みであると思う。たぶん、そうであるから、わたしは読むことが大好きだ。 本を広げて、目のなかにとびこんでくる活字を追っていくうちに、頭のなかにはだんだん別な世界ができあがっていく。電車に揺られていようと、ロビーで飛行機を待っていようと、心地よい自宅でくつろいでいようと、本を読んでいるあいだ、想像力は現実の世界を離れて、もうひとつの別な物語を生きている。わたしの実体はひと…
Mais ou Menos
————————- まちゃんへ 2人で何とか生きている、というのがここ数ヶ月の自分たちを表す表現かなと思う。 生活に困っているわけではないけど、日々やりくりしている。どうにか生きている。特にまちゃんは、持病と頭痛、倦怠感などとも闘いながら、毎日よくやっていると思う。 まちゃんの頭痛がない日は、すごく嬉し…
長期滞在者
台湾へ旅行したとき、友人がインスタントカメラをくれた。古道具屋で見つけたという古いカメラを手にしたわたしたちは、こどもの遊び相手のお人形みたいにいつでもカメラを持ち歩き、いつでも誰かが誰かを撮った。旅先から自分の日常に戻り、わくわくしながら現像に出したら、あまりに古いそのカメラにはほとんど何にも写っていなくって、茶色いテキスタイルみたいな、だるんと長いネガだけが戻ってきてガッカリしたのだった。しか…
Do farmers in the dark
以前までここアパートメントでボールペンの絵を載せていたのですが、今月から絵を少なめにしました。ひどく退屈な文章などを載せていく予定です。今回の第一回目は主には食べ物と女性の事について書いています。 Do farmers in the darkの意味は「暗いところで農家をやる」という意味です。なんとなく最近そういう気分です。 ではよろしくお願いします! 第一回 海辺の町で猿になりそうな…
長期滞在者
特別な経験よりも何気ない日常に光をあてることに、私は面白さを感じます。 私の住む家は20代後半から30代半ばの男女が5人住んでいます。 それぞれが個室を持ち、何か困ったことがあれば話し合って暮らしています。 この連載では家で起きたことを日記形式で綴っていきます。 こんな世の中にこんな生活があるのだと、愉快に思っていただけたら幸いです。 ※住人のプライバシーを守るため、名前は仮名を使用しています。 …
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
彼女のフェアなところが好きだ。 時々「きっつーい」と思うけれど大概その場で納得してしまう。だからあれだけ欠点や誤ちをビシビシご指摘いただいているにもかかわらず、嫌な気持ちを抱いたことがない。むしろ、ちゃんと言ってもらいたくて、ひとに言えないことほど彼女にだけ話してきた。 そういえば長い間、彼女はあまり自分のことを話さなかった。代わりに家族や学校生活や趣味についておもしろ可笑しく親しみを感じさせなが…
長期滞在者
先月初め、娘の誕生日を彼女より少し年上の息子と 彼らの母親と一緒に祝うためにヘルシンキに一週間ほど滞在した。 到着して数日間はまだ5月初めとしては異例の寒さが続いていて、 天気は良いのだけどダッフルコートが手放せなかった。 彼らの住んでいるところから徒歩20分くらいのところに とても設備の整った室内プールがあるので、 ヘルシンキに行くときは必ず何度か泳ぎに行くことにしている。 そこは10レーンもあ…
長期滞在者
「うーん、様子を見るしかないですねえ。どうしても体調が優れないようであれば、また相談してください。」 定期検診で、久々に会った主治医は淡々とそう言った。診察票を挟んだピンクのファイルを手にとって、扉に手をかけたら、後ろからお大事に、と声がした。(お大事に、か…) 診察室を出るときの扉が嫌に重たかった。顔を上げるとパートナーが心配そうな顔で私をみていて、その瞬間、緊張が解けたのか、いろんな感情が湧き…
長期滞在者
自分がゲイであることは、なるべく早めに言うようにしている。単に「彼女はいる?」「好きなタイプは?」といった質問に嘘をつき続けるのが負担なのと、時間を重ねるほど言い出しにくくなってしまうから、そうしている。だからその人と今後も関係が続いていきそうか、偏見が少なそうかを確かめてから言うし、言わないこともある。 言った時には、その人にとって「生まれてはじめて、現実世界で出会った同性愛者」になることもある…
長期滞在者
泣いている時に、「今から行く」と言ってくれる人がいることにどれだけ救われているか。 私が泣いている理由は、世の中の差別に対してだった。 明らかにそれは大切な仲間の人権を侵している。 その疑問を表した時に、 「差別ではないでしょう」、「問題があるとは思えない」と、投げかけられた言葉の前に立ち尽くした。 「この表現は人を傷つけているのではないでしょうか?」と問いかけた言葉が、 あっという間に消えていく…
長期滞在者
自分だけが感じている感覚なのか、ほかの人も一般的に感じるものなのか、いまだによくわからないことが、いくつかある。そのときを過ぎるとすぐに忘れてしまうし、ささいなことだから、あらためてほかの人と話したりする機会がない。 —— たとえば、コーヒーの効力が切れた匂い。ドリップコーヒーに入れるお湯の量をちょうどよく調整するのは難しい。多すぎると水っぽくなって台無しになってしまうし、…