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Mais ou Menos #6 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

アパートメント4:6 1
アパートメント4:6 2
アパートメントま491
アパートメントま492

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2015.4.6(月)

まちゃんへ

今、ここ数年なかったものすごく晴れやかな気持ちでいます。まるで憑き物が落ちたかのような感じです。私の肌が綺麗になり、垂れ下がった頬の皮膚は張りを取り戻し、笑顔になり、生きる血が通っています。今まで自分がしがみついていたものから手を離し、自分が楽になれるような生き方がしたいです。今、この歳になってみて、子どもの頃からの苦しみや呪縛からも少しずつ解き放たれてきている気がします。親に捨てられたくなくて、親の期待に添うような子どもを無意識に演ずるようになり、自分でもそれが当たり前になっていた。気づいたら、自分は何をしたいのか全くわからなくなっていて、自分の姿を自分で見つけることができなくなっていた。自分の嫌だったことを捨てたら、こんなにも楽になった。嫌なことをやめる、こんな簡単なことを私はなかなかできなかった。嫌なことは、私のことを苦しめつつも、私の生活を支えていたからだ。でも、そんなことしなくても、他にも生きていく道はたくさんあるのだと、まちゃんや、家族に背中を押してもらい、今、嫌なことを捨てることができた。私を蝕みつつ、生かしてくれたそれを私は捨てる決断をしました。もっと楽に、自分の思うように生きていいんだ、とやっと思えるようになった。
自分を大切にし、自分が本当に辛いことはやらないようにする。もちろん、生きていくからには、辛いことがこれからもたくさんあるし、困難もあるだろうけど、生きていればそれでいいと思う。どうにか生きていればいい。私がまちゃんと出会って教わったことです。二人が支え合って生きていけたら、それだけで、私は幸せです。4月になると、亡くなった戦友のことをいつも思い出す。自分の体と精神を悲観して、先に逝ってしまった彼のことを、自分だけ楽な道に逃げるなよ!なぜ、この世でいっしょに戦ってくれないんだよ!と思っていたのですが、生きていたら、辛いこと楽しいこと色々あります。だから、今は彼にも私の目を通して、いっしょにこの世の辛いこと、楽しいことを見てもらいと思います。
スピリチュアルな話になるけれど、私の中には魂がいくつかある気がするので、その魂と彼の魂と、皆で支え合って、この腐り切った世の中を渡り歩いていこうじゃあないか、(ジョジョ風)という気分です。縁があって、まちゃんに出会えて、私は生きる希望を持ちました。それはお互いかな?
これからも、大変なこともあると思うけど、亀の歩みで、周りの景色を楽しみつつ、私たちの道を歩いて行きましょう。

P
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Dear: Pちゃん

今日はおいしいカルボナーラをありがとう。仕事から帰ってきて、すぐにご飯が食べられるのって幸せなことですね。本当に嬉しかったです。あ、ハーゲンダッツもおいしかった!!

4月は環境が変わるけれど、うちらにとっても大きな変化が起きましたね。辛いことから離れることって、意外とむずかしかったりするけれど、今回の決断は素晴らしかった。他の人がみたら、「なんで?」って思うかもしれないけれど、私は100%、Pちゃんの決断を支持しているし、このタイミングで良かったと思います。この数年、本当に本当にお疲れさまでした。しばらくゆっくり休んで、羽をのばして、元気になってね。生きていたら、なんとかなる。失敗しつつ、より道しつつ、ゆっくり自分たちのペースで歩んでいこう。

私も、4月になると死を選んだPちゃんの友人のことを考えます。長期滞在の連載をはじめてすぐのことだったから、とても印象に残っています。亡くなった人のことは、もう呼び戻せないけれど、生きていたら、なんとかなるって、彼にも伝えたかった。私もPちゃんも、 すこし世の中の”普通”から離れているけれど、それでも生きていられるんだから。彼にも、私たちの日々の姿を見てほしかった。

私たちは、自分たちの辛さ、生きにくさ、それを自分たちの生きる燃料にしていこう。昔はもう生きるのをやめようとしたことがあったけれど、今の私はもっと生きようと思っています。なんとかなると思えるようになったからです。Pちゃんのことを支えていうこうと思えるのは、心の余裕ができたからと思います。辛いことがあっても、きっとなんとかなる。だから、生きることはあきらめません。手さぐりのまま、ゆらりと生きていこう。今日も明日も、おいしいものを食べて、すてきな音楽を聴いて、あたたかいベッドでゆっくり休もう。焦らず、いこうね。

2015.04.09 (Thu)
Maysa

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

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