長期滞在者
自分がゲイであることは、なるべく早めに言うようにしている。単に「彼女はいる?」「好きなタイプは?」といった質問に嘘をつき続けるのが負担なのと、時間を重ねるほど言い出しにくくなってしまうから、そうしている。だからその人と今後も関係が続いていきそうか、偏見が少なそうかを確かめてから言うし、言わないこともある。 言った時には、その人にとって「生まれてはじめて、現実世界で出会った同性愛者」になることもある…
当番ノート 第38期
散歩 ただ歩く そのことで世界が変わる 自分の頭で考えてもどうしようもないこと 外に出るといろんなものが助けてくれる 風が吹き 人がいて 空が青い アイスクリームを買いにいく ヨーロッパの夕方は長い 一日が全て終わって まだ 外が明るい
当番ノート 第38期
ゴールデンウィーク最後の日、私は困っていた。5月の月曜日が5回あることに気づいたのだ。全8回だと思っていたアパートメントの連載が、9回ある。 「なんで最初に確認しておかないんだ……」と過去の自分を責めた。いつもそうだ。大事なところで必ず抜けている。カフェで第7回目の記事を書いている途中なのに、私の頭の中は9回目でいっぱいだった。 そうは言ってもあるものはあるんだし、残り1記事何を書こうかと、冷めた…
当番ノート 第38期
嘘をつく自分がそこにいる。 相手に嫌われまいと、ここで働き続けるためだと言って。いつしか僕の中のNoとYesの境界が曖昧になってゆく。そして、嘘をつくたび、僕は自分を見失っていく。浴びせられる暴言を、笑顔で、意にも介さないふりをして受け流してみる。開きなおるんじゃないよ、と言われる。どうして君たちは気が付かないのだろう。張り付けた仮面の内側に渦巻く、ほんとの僕に。 普段から嘘をつき続けるライターの…
当番ノート 第38期
2016年の6月に、ペルーへ行って先住民の儀式に参加しました。その経緯を書いてみます。 ・大いなる存在 目の前の途方もなく偉大な存在から目をそらすことができないまま、私はその場に座り込んでいた。 エジプトの壁画に描かれている半人半獣のような姿形をしたその人は、私の事に気づいていないはずはないのに、じっと前を見定めたままだ。 この姿はおそらく、私の主観によって作り上げられた神さま的なもののイメージな…
当番ノート 第38期
最後は夏の大三角の1つ、ベガが目印のこと座から。ここまでお付き合いありがとうございました。 ** オルフェウスはトラキアの王と音楽の女神の一人であるカリオペーの間に生まれました。音楽の神アポロンが彼に竪琴を与え、音楽の女神たちが彼に演奏を教えたので、やがてギリシャで一番の詩人で音楽家となりました。彼が竪琴を弾きながら歌うと、人々はもちろん猛獣や雑草までもその音色に聞き入りました。 オルフェウス…
当番ノート 第38期
芸術療法はカウンセリングの一つとして現在さまざまな人の力になっている。 しかし私のやってみたい芸術は子供の成長につながることだ。 療法ではなくだ。 絵画教室を始めて5年目になる。経験と気づきをどのようにして根拠に変え、必要性を伝えるのかこれから頑張ろうと思う。 可能かどうかわからない。必要なのかもわからない。しかしそういう事はやってみてからわかるものかもしれない。やってみたい。ではなくやってみた。…
当番ノート 第38期
わたしの働いているカンパニーでは 年に一度ドイツツァーがあります。 去年は11月から12月にかけて 5週間ドイツの街を周りました。 ドイツツァーの楽しみは何といっても 舞台後にその地のビールを飲むことです。 今日の 劇場 舞台 街を味わい ビールで締めくくる。 最高の時間です。 その中でも去年印象的だったビール達。 Mindenにて ロゴが可愛いかった。すっきりしたビール。 Neuburg で飲ん…
長期滞在者
泣いている時に、「今から行く」と言ってくれる人がいることにどれだけ救われているか。 私が泣いている理由は、世の中の差別に対してだった。 明らかにそれは大切な仲間の人権を侵している。 その疑問を表した時に、 「差別ではないでしょう」、「問題があるとは思えない」と、投げかけられた言葉の前に立ち尽くした。 「この表現は人を傷つけているのではないでしょうか?」と問いかけた言葉が、 あっという間に消えていく…
当番ノート 第38期
「人はみんな、それぞれ自分にしかできない強みを持っています。例えば『桃太郎』に出てくる鬼退治のシーン。キジは空を飛んで敵を攻撃、サルは素早い行動で相手に近づき、得意の爪でひっかく。イヌは凶暴な歯で噛みついて鬼を退治。みんなが強みを発揮すれば、チームで大きな事を達成できます」 ダイバーシティ研修の動画の中で、そんなことが言われていた。言っていることはすごくよくわかる。よくわかるからこそ、“貢献できる…
長期滞在者
自分だけが感じている感覚なのか、ほかの人も一般的に感じるものなのか、いまだによくわからないことが、いくつかある。そのときを過ぎるとすぐに忘れてしまうし、ささいなことだから、あらためてほかの人と話したりする機会がない。 —— たとえば、コーヒーの効力が切れた匂い。ドリップコーヒーに入れるお湯の量をちょうどよく調整するのは難しい。多すぎると水っぽくなって台無しになってしまうし、…
当番ノート 第38期
その人を、神様だと思っていた なんでも知っているようにみえた 歩むべき道を陽の光で照らしてくれた 僕を生み出してくれた いまになって気が付くとは。全部間違いだったんだ。 なんにも知らない。 照らされた道は、いやに丁寧に舗装されていて、どうやら俺向きじゃあない。 あいつは、俺の精神まで造り上げようとしているのか。 そのことに気が付くのに、二十一年もかかってしまった。不幸というべきか、いや最悪だな。人…