長期滞在者
大阪・谷町8丁目交差点の坂の下にある伽奈泥庵(カナディアン)は、創業50年を超える、大阪の、いや多分日本の、エスニック喫茶の草分けである。 今でこそインド風の煮出したミルクティ「チャイ」は日本でも全国区の飲み物になっているが、最初にこれを日本に紹介したのは伽奈泥庵とカンテ・グランデ(大阪・中津)だった。 僕はカンテ・グランデの方で働いていたのだけれど、伽奈泥庵にもよく通った。 自分の成人式の日に、…
長期滞在者
2018年3月8日。 朝から雨が降るその日は、しっかりと防寒をしないと外を歩くには辛さを感じるほどの気温の低さだった。 国際女性デーのこの日、19時からウィメンズ・マーチ東京2018が開催されることが発表されていた。 私は初めてこのマーチに参加することを決めていた。 雨かと思いながらも、行かないという選択は私には無かった。 2017年1月21日。 ドナルド・トランプ大統領の就任と女性蔑視発言などに…
当番ノート 第37期
入院中祖父は宝箱の話をした。 それは、よくあるプラスチックの、書類や小物を入れるような引き出しだった。 そこには、若い頃に2年だけ入隊したという、警察予備隊時代の写真と、その頃を思い出して書いた日記と、その頃に友人からもらった手紙と、父が上京してから祖父に送った手紙と、昔祖母に買った指輪と、いつの間に撮ったのか、遺影用の写真が入っていた。 祖父が亡くなって、私たちはその宝箱を開けた。85年の人生で…
画家と7人の肖像
最後の肖像画はここに載せない。彼女とそう約束している。 Photo by Kazuki Hiro 4月、展示会場に来た人達だけが、最後の肖像画が誰のものなのか知ることになる。一つヒントを書くと、きっとみんな彼女の歌を知っている。この肖像画の制作中に参列した友人の結婚式でも、彼女の曲は演奏された。「今この声の人を描いているんだな」などと、一人密かに感慨を噛み締めるなどしていた。 最後のモデルの方の制…
長期滞在者
今となっては考えられないことだけれど、到着する日の宿泊の予約さえせずに、わたしはひとりインドに旅立った。帰りの飛行機は3週間後。唯一の計画らしい計画は、ガンジス川を見ること。ほかは何も決まっていない。黄色の小さなデイパックのなかには、替えのTシャツ・下着が2-3枚、ストール、洗面具、筆記具、持っていくか最後まで迷ったラップトップ、直前に無印良品で買ったアイマスクとエア枕 (これに関してはけっきょく…
当番ノート 第37期
2月26日(月) 朝起こしてもらうと、もう7時半になっていた。飛行機が飛ぶの、9時15分なのに! 朝ごはんをかきこんで歯を磨いて荷物をまとめる。名残惜しむ暇もない。 お母さんが車で送ってくれることになって、わたしとお母さんが先に車に乗りこむ。恋人さんだけお父さんに呼び止められて、お父さんは恋人さんに戸籍謄本を渡して、何かを言いながら恋人さんの手を強く握っていた。 恋人さんも車に乗り、お父さんに手を…
長期滞在者
「日本のモノ作り神話なんてとっくに崩壊しているよね」「技術大国日本なんて、もう過去のことだよね」というコトバがしばしば交わされるようになりました。 ぼくなどは「モノつくり神話」という言葉自体「神話」だと思えるリアルな体験もしたことがないのですが、それはともかくとして、冒頭の表現は置かれている立場によってさまざまな意味を包み込んでいるように感じます。そのひとつとして、かつてほど日本の技術力は抜きん出…
当番ノート 第37期
(いつか伊勢参りに行ったときの写真です) 本稿では、私にとっての青春を共にした人、さとしさんとの再会について書いていく。 前稿の最後に記したように、私はとかく怖かった。 ここ数年間、たびたび去来していた「大切な’何か’を失ったのではないか」という 感覚への答えを、さとしさんは持っていると思っていたからだ。 私は、さとしさんからどう見えるのだろう。 再会を経て、私は、人と人と…
Mais ou Menos
まちゃんへ 元気ですか? 自分は最近元気じゃなかった。 この時期毎年新しいことが始まったりで落ち着かない日々を過ごしている気がする。 自分の今やっている仕事について悩んだり、これからのことについて悩んだり、いつも悩んでばっかりですが、改めてまちゃんと生きていられることに感謝をしています。 自分のことをよくわかってくれている人がそばにいるだけで幸せなことなのに、すぐに不安がってしまう。自分だけで苦し…
長期滞在者
折坂悠太さんのライブをみた。 目をあけていると、きょろきょろしてしまうので、時々、目を瞑った。 「つもる話の山肌を/ひとつ語らず下って行く/茜色した街並みを/時々見下ろして」 「見慣れないものだけの朝/懐かしいものだけの夜/茜色したおれのこと/思い出せるかい/思い出せるかい」(茜) 語らぬことを自ら選んだひとつ、語る言葉に成り得なかったひとつ、案外、そういう言葉こそがいつまでも残り、一緒に見た景色…
当番ノート 第37期
2010年10月から2011年9月まで、夫と一緒に、ドイツのベルリンに住んだ。 2度目の大学を卒業する頃「海外で活動したい」という思いが強くなり、卒業した年にワーキングホリデービザを取り渡独。 スタジオを借りて稽古したりレッスンを受けたり、美術館やギャラリー、舞台を鑑賞したり、ドイツ以外の国に旅をした。 友人のFranziskaと街中を走り回って、夫に写真を撮ってもらったり。 Miss Hecke…
the power sink
とにかくやっとの事で何枚かの絵を描いた。やっとの事で絵を描くのは馬鹿のする事だと思う。 だから頭が悪い上に性格の悪いおじやんが描いた絵になった。現状僕は頭が悪い上に性格も悪いおじやんなんだ。 でも明日から勉強すれば半年くらいで性格もかなり良くなると思うし、頭もかなり良くなると思う。元気を出して頑張りたい。 それではよろしくお願いします! なんかすごい恐ろしい、人間を全員…