当番ノート 第36期
以前の投稿にも書いたように、現在カナダのトロントに滞在している。 渡航してから日本と違うなと感じることは勿論たくさんあるけれど、少し印象に残っていることを今回書こうと思う。 渡航してすぐに語学学校に通い始めてから、半年になる。 考え方の違う人とやり取りするのは骨が折れるけれど、知らない価値観を知るのは基本的には面白い。 人生に対する考え方の違う相手と対話すると、自分の心のどこか深層に…
当番ノート 第36期
香港から2時間でハノイに着く。そこから足を延ばし、高速バスで移動をしてハイフォン近くの村で過ごして来ました。 当初はゆっくり過ごす予定だったけれど、降り立ってこの国の喧噪に混ざったら色々行ってみなくちゃ!と欲求が。沢山歩いています。 毎晩、星空がどこまでも綺麗に広がるヴェトナム沖合の小さな村。 マングローブの木に囲まれた絶えず流れる大きな川を前に、パンチャカルマを受ける。 パンチャカルマを体験する…
当番ノート 第36期
クリスマスが大嫌いだ。 (↑新明解国語辞典) いつから大嫌いなのか、その起源は定かではない。 私史上、最大級の謎と言われている。 これだけの嫌悪感なのだから、私の身の上にきっとすごい事があったのかもしれない。 だから、覚えてないのが恐ろしくもある。 あまりの出来事に精神を自衛するために、 自ら記憶を抹消しているのだろうか。 でも、記憶のフラッシュバックとかは起きない。 親に聞いてみたらわかるのだろ…
長期滞在者
僕はデジタルカメラのあのEVFというやつが、どうにも苦手である(EVF : 電子ビューファインダー = electronic viewfinder)。一眼レフならばカメラ内部のミラーに屈曲されているとはいえ、眼前の光景とタイムラグゼロのものがファインダーで見える。ミラーを介した反射光であっても、それは現実の光景とひとつながりの光である。ところが一眼レフではないデジタルカメラというのは、カメラ背面の…
当番ノート 第36期
高校生の頃に好きだったファンタジー小説に「最後のユニコーン」というのがあります。 いつの間にかユニコーンがいなくなった世界で、たった一人残ったユニコーンが仲間を探して旅をする物語です。 ストーリーはほとんど忘れてしまっています。 だけど、ひとつのフレーズだけは、今でも心に残っています。 「夢見るのではなくて、夢に見られる存在」 それがユニコーンだと。 生きる指針になったとか、人生観が変わったとか、…
長期滞在者
世界は平和じゃない。 さっきまでSkypeで話していた国でクーデターが起こった。 ほんの数分前まで楽しく会話をしていた、大好きな彼女が住む国での異変を伝えるBBCの速報に、私は青ざめた。 「今日の様子は?」 「大丈夫よ。私たちは変わることを願っている。」 「あなたの国が平和であることを祈っているわ。」 クーデターが起こってから。 私と彼女は連日この会話を繰り返した。 2017年11月20日。 「今…
当番ノート 第36期
コロンブスが、新大陸を発見したように、 間宮林蔵が、樺太が島であることを発見したように、 ブルース・チャトウィンが、オーストラリアで見えない道にソング・ラインを見出したように、 中学1年の私は、退屈な社会の授業中、 帝国書院地図帳の巻末索引で、ンジャメナを発見した。 あいうお順に並んだ、都市や山や川の名前。 日本の部は、【あ】で始まり【わ】で終わる。 海外の部を、続けてパラパラと見ていくと、 【ア…
長期滞在者
以前、自分の企画展ではオープニングパーティーをやらなくなった、という話を書いたことがあります。 移転した今年、ルーニィでは9本の展覧会を企画したのですが、オープニングパーティーはついに1度も開くことはなかったのです。美術館のパーティーと違って、私たちのオープニングパーティーは、業界の社交や情報交換の機会である以前に、良いお客様に集まって頂いて、確実に作品を売っていく重要な機会でもあります。もちろん…
長期滞在者
飛行機に乗ると、世界はなんて広いのだろうと思う。国際線なんか特に、ときに1万kmを超える膨大な距離を移動するあいだ、夜から朝へ、あるいは夜の領域を追いかけるように、飛行機の外では違う時間が流れている。 あるときには、機内食もとうに食べ終わって歯を磨き、明かりの消された機内で、ブランケットにくるまって、窓のカバーを開けて、外を眺めている。寒々とした夜空が見える。絨毯のように広がる、のっそりとして現実…
Mais ou Menos
ぴちゃん 日曜の朝から、早起きして散歩するの良いね。寒いのに心がポカポカする。 この往復書簡が2017年最後のお便りになりますね。今年もあっという間でした。でも、今年は私たちの人生において、いくつもの大事なできごとが起きた年だったと思います。 ぴは適応障害になって、それを自分の力と、意志、努力で乗り越えつつある。私は中枢性尿崩症になり、下垂体腺腫があることがわかった。よりよく生きるために、食生活を…
当番ノート 第36期
先日完成したばかりの、とあるショートフィルムを見た。 撮影にあたって衣装デザインを担当した作品である。 茫漠とした風に巻かれて消えそうな存在と、痕跡と。 私たちはなぜ生きるか。 誰も知らない、誰かの物語が無数にあるということ。 滅びること。 優しい雨の音をぼんやりと聴くように、それらのことが頭を巡った。 映像作品のための衣装に、デザインの構想から携わったの…
当番ノート 第36期
昼食をとるために外国人旅行者達がたくさん集まる安宿街に向かう。 この時期の香港は陽射しが穏やかでとても過ごしやすい。 どこの国でも安宿街の近くの食堂は食べ物が安くて美味しい所が多いし、どこの国も裏通りが一番面白い。 隣のテーブルに座っていたヴェトナム人の女性が突然「ああ、チャイが飲みたい!」と叫んだまさにその瞬間に、巡回しているチャイ屋さんが入ってきた。 口笛を鳴らして喜ぶ女性に 『欲しいものがあ…