当番ノート 第31期
20年といえば、まあ、それなりの時間です。20年前のこと…思い出せるでしょうか? わたしは小学生でした。そして、そのそれなりの20年のあいだ、ずっと、わたしは長靴のことを誤解しながら生きてきたのでした。 こだわりの強い小学生だったわたしにとって、長靴というものは、野暮ったくて我慢のならないものでした。ぱかぱかして足にフィットしないような気がするし、原色の黄や赤がバカに陽気だし、通気性が悪くていつも…
長期滞在者
こだまさんの『夫のちんぽが入らない』を読んだ。 発売が決まってから、ずっと楽しみにしていた本だった。発売した日の夜、近所の書店に立ち寄ったら置いていなくて、次の日に会社をこっそり抜けて新宿のブックファーストで購入した。ずらりと並べられているうちの一冊を手に取ると、普通の単行本より一回りほど小さい。昨日行った書店の新刊棚にあった不自然な隙間と同じくらいの大きさで、もしかするとこの本が並んでいたのかも…
当番ノート 第31期
クラリスブックスでは、月に一度読書会を開催している。これは、参加者の方に決められた課題図書を読んできてもらって、いろいろと感想などを語り合うというもので、私もスタッフも参加する。 そもそもこの会は、私が古本屋を営んでいるにもかかわらず、あまり本を読んでいないので、このような会を自ら開催すれば否応なしに本を読むのでは、という、とても利己的な考えから始まったものだ。 店がオープンしたのは2013年12…
当番ノート 第31期
どうにも、殺風景な写真ばかりを撮ってしまう。 日々行き来する様々な通り道の中に、幾つかの「定点」を見つけて、そこを通りかかる度に撮り続けている。切り取られた画角の中に於いては、各時間帯の光や天候の具合など、固定された場の状況の変化だけが抽出され、それらを見つめ続ける感覚になる。その在り方は場面転換の入らない舞台装置に似ていると思う。 おおよそ、それらに写っているのは通常のスナップ等…
長期滞在者
新宿で生まれ育った私には、一人になりたい時に必ず行く、新宿高層ビル街のふもとがある。 ある夜、一人で想いを巡らせたくてその場に座り込んでいた時に、突然降ってきた大粒の雨。 雨が、思考の流れも、時間をも遮っていった。 自分が無になっていくような感覚。 自分がこうしたいという気持ちよりも、相手の気持ちを優先してしまう。 その人が幸せであるために、自分がどう言葉を返すのが良いか。 自分の中でおしころして…
当番ノート 第31期
少し前から、ときどきゴム版を彫っています。 絵とは違って、「あ!」と彫りすぎてしまうと取り返しがつかなかったり、それもまた面白かったり。 気が短いので、グイグイと強引に彫ってしまい、あとちょっとというところで細かいところがダメになってしまって台無し、ということも多々あります。体力、気力ともに充実して、穏やかな気分のときに彫らなくちゃ、と思いながらまたついつい「・・・あ!」ということをやってしまうの…
長期滞在者
水炊きの豆腐を取り皿の中で冷ますために四つ割りにしながら思い出したのは、たぶん小学校低学年か中学年の頃のこと。 同じように熱い豆腐を箸で切りわけ、冷ましていた。 豆腐は丸ままにしておくよりもいくつかに割っておいた方が早く冷める、という小学生なりの経験により、なんとなくそうしていたのだろうが、それを見ていた父が 「どうして豆腐は割ったら早く冷めると思う?」 と聞いてきた。 「知らない」 「割ったら豆…
当番ノート 第31期
僕は、色んなところがヘタクソだ。 感情を表に出すのも、本当に聞きたい事を人に聞く事も、自分が言いたいことを口に出すことも。 嬉しいとか悲しいとか怒りとか甘えたりとか、そういったものを人に表現するのが。 周りの目を気にして、余裕があるように見せて、本当は辛かったり大変だったりすることもなるべく外には見せない。 妙なプライドや自己意識が邪魔をする。 それでいて、内弁慶だから尚のことだ。 色んな場所へ出…
当番ノート 第31期
少年は物書きになりたかった。 漠然とした夢に少し輪郭を加えると、物語を描きたかった。 小説をものにしたい。自分のつくる物語を世に出したい。 少年が人知れずに抱いていた展望だった。 夢を掲げるに至ったきっかけは分からない。分かるのは物心がついたころにはそう強く思っていたということ。 誰かに知られたら叶わないかもしれない。だから誰にも言わなかった。 一種の願い事のような、夜に目を閉じてみる類いの夢に近…
長期滞在者
今年の冬の東京は、よく晴れた日が続いています。新しい仕事場の窓から毎日明るい陽射しが入り込んできてとても気持ちがよく、朝早く出勤して午前中の営業時間前に色々仕事を片付けることが多くなりました。窓の外は、最近出来たばかりと思われる高層マンションが数多く立ち並び、日曜日の朝などは、一斉に洗濯物や布団を干す様子が見られます。 3年くらい前から、日本橋界隈は急激に居住人口が増えているのだそうで、ここに来る…
当番ノート 第31期
考えるへんな人は、ふつうの人とはちょっと違った選択肢をしている/持っている人とも言えるかもしれない。 やはり、東京は、人口1300万超、「人種のるつぼ」のような街が点在していて、多様性に溢れているから、そんな風変わりな人も多いわけだ。けど、その多様性を認めにくいような社会はあるのかもなあ、と思うようになったしまったのはいつからだろう。 ぼくが考えるへんな人に出会うようになったのは、大学を機に沖縄か…
当番ノート 第31期
朝はいつだってわたしを裏切らない。 中学生だった頃に朝型に覚醒したわたしは、それ以降の人生をずっと、言うなれば、朝と手をたずさえるようにして生きてきた。早朝のまだ静かな時間に、クリアな頭で、のっしのしと勉強やお仕事を進めていく。きっちりと着実に何かが積み上がっていく快い感覚。メールを送ってくる人も電話をかけてくる人もおらず、同僚の気配に気を散らされることもない、すてきな独りの時間。 最近「朝活」と…