入居者名・記事名・タグで
検索できます。

2F/当番ノート

ゴム版

当番ノート 第31期

hanko_title

少し前から、ときどきゴム版を彫っています。
絵とは違って、「あ!」と彫りすぎてしまうと取り返しがつかなかったり、それもまた面白かったり。
気が短いので、グイグイと強引に彫ってしまい、あとちょっとというところで細かいところがダメになってしまって台無し、ということも多々あります。体力、気力ともに充実して、穏やかな気分のときに彫らなくちゃ、と思いながらまたついつい「・・・あ!」ということをやってしまうのでした。
 
 
 
baku44名、全員同じに見えるかもしれませんが、別人(別バク?)です。いざ紙に押してみて、ちょっと気になるところがあると次を作り、を繰り返してムキになって4名作りました。
左から、鼻の穴がなくなってしまった初代バク氏、左右の目の大きさがちがう二代目バク氏、スボンがお腹に食い込んでしまった三代目バク氏、集中力が切れてしまった四代目バク氏。。。五代目が待たれるところです。
 
 
 
 

4daime_bakuオヤツにする夢をさがして夜のお散歩中(四代目バク氏)
 
 
 
 
hitsuji_tokoya羊の床屋
 
 
 
 
toraトラ氏の毛皮は黒地に黄色の模様なのか、黄色地に黒い模様なのか
 
 
 
 
osaruムラ無く押すのが難しいのですが、かすれたり、紙の質感が出てそれが面白いときもあります
 
 
 
 
alphabetsアルファベットは数が多いのでちょっと面倒でしたが。。。小文字のbとq、dとpはそれぞれ逆さまにすれば兼用できるのです
 
 
 
 
ichimatsu麻布に押してみました

きた えまこ

きた えまこ

絵本を描いたり、落書きしたり、工作したりしています。ひょんなことから人生二度目のパリ暮らし中。

Reviewed by
松渕さいこ

ゴム版かぁ、懐かしい。

ゴム版は手で削り出してつくり、紙に押し当てることでその姿を浮かび上がらせる。
えまこさんが話してくれているように、ちからの加減ひとつで出来上がりの具合も変わってしまう。
絵と比べて、線ひとつが生々しい。彫ったモチーフがインクによって立ち上がる一方で、その周りにできるつよい余白が面白いなぁと思う。

ほとんど分身の術のようなバク氏が4人もできてしまうことや、根気のいるアルファベットを彫りだすえまこさんに、第一回目のコラムで発見されたようなヨットに乗ったり、馬に乗ったりして夢中の道草に出てしまう女の子を再び見つけた気持ちになった。

こんにちは、また、会いましたね。
ぐんぐんと道草していくえまこさんの後ろ姿に、声を掛けてみる。
その間もえまこさんは何かを見つめ、その手で作りだしている。
振り向かない彼女を、そっと後ろから見つめさせてもらうことに決める。

ひとりのバク氏に出会いたくて4人のバク氏を産み出してしまうこと(そして今もきっと5人目を産み出している)や、紙の色や素材を変えてその変化を心から楽しんでいるんだろうえまこさんの姿は、私のなかにもきっと潜んでいるはずの懐かしい人影だ。

懐かしいと思うのは、その私に最近会っていないから。
もっと言えば、それはひとりで遊びという遊びに真剣だったこどもの時の私にとても近い。
日が暮れたことにも気づけないまま遊びの先に見えた世界とちゃんと繋がっていられたあの時間を、えまこさんは今もノートや箱の内側にたくさん持っている。

私は大人の姿を持っていながら夢中で駆け回ることのできるえまこさんのような人がとても好きだと思う。

もしも5人目のバク氏がパーフェクトを叩き出してしまったら、ちょっと淋しいなんて、思ったりして。
言われなくちゃ気づかないような小さな違いを、発見しつづける機会が欲しいだけなのだ。
あ、こちらのほうがお腹が大きいね、という具合に。
その方が実はきっと、いのちが豊かなんじゃないかなと私は思っている。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る