当番ノート 第28期
嵐がやってきた。 天気がひどい日は、島の輪郭は曖昧になる。灰色の雲と山は滲み、近くの大きく揺れる木だけがはっきりとうるさかった。まだ日が出ているはずの時間でも暗い外で、大きな雨粒と風がごうごうとうねり、家を揺らす。 母は役所に取り残されているようだった。でもあそこは海にも山にも近くないし、食料なんかもある。建て替えられて間もないし、何の問題ないだろう。むしろ古い実家よりは安心だ。モリヤさんも…
当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① suicide cats in seaside② アマリがまだ 海の底で揺らぐ粒子だった頃、老いた人魚から様々な伝承歌を聴かされていた。 その歌は時間をかけて命に染み込んでいき、人魚を形成する核となっていく。 ”泡沫人は揺蕩いながら 光の彼方へ遠ざかる 交れば命は永遠となる 神様からの捧げ物 掠れることは許されど 染まることは許されぬ 喰らうこと…
the power sink
こんばんは!今回も絵を載せます。見て頂けると嬉しいです。 ではよろしくお願いします! 僕はどこかに詰まった 三角の帽子を被って三角の木のところをずっと歩いているので、気分が良くない この人達は心底焼き魚を食べたいと思っているのに、一体何でなのか誰も魚を全然見ていないんだ 海の中で光る米粒を見ている バイパスの上にいる人。いいトレ…
当番ノート 第28期
品川駅に着くと僕は人の多さに圧倒された。夕方の四時でも日差しは強く、駅の窓を通してもなお僕の肌をじりじりと焼く。僕は通路の端を早足で歩き、待ち合わせ場所に向かった。 ビルに入ってすぐ、白くて大きな機械が目に入った。どこかで見たことがある。人々が並んでかばんをカゴに入れ、箱のような形をしたスキャナーに通し、その間に自分はゲートの下をくぐる。金属探知機だ。 僕は訝しがりながらも小さなショルダーバッグを…
当番ノート 第28期
先日、カメラを買おうと決意して お店の韓国人にカメラを調べてもらった時に 「新品にしますか? 中古にしますか?」 と聞かれたのでとりあえず どっちも値段とか調べて教えもらったが 韓国での新品と中古に対する値段の差が 面白いほど分かれててビックリした。 日本なら中古でも開封したけど使ってなかったり 数回しかシャッター押してないとかで ほぼ新品のカメラがあるわけで 値段はある程度高いまま…
当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第6回目。 前回は、僧侶としての個人の活動を増やしていった僕が、今一度自分を見つめなおした結果、気づいた思考についてお話させていただきました。 気づいたことは「できない自分から逃げる」という行動パターン。 さらには、その逃げる行動パターンに従い、イベント中、「人前で恥をかきたくないという気持ち」からあまり自分を語っていない事実。 どこか僧…
長期滞在者
物事には「期限」というのがある。その線を超えてしまうと、取り返しのつかないことも起こる。 食べものであれば、賞味期限を過ぎて口にすると、お腹を壊してしまうかもしれない。付き合いの長いカップルであれば、「いつまでに結婚してくれるの?」と思ってはいるが口にしない彼女がいたときに、それを彼氏がむやみやたらに先延ばしにしてしまうことで、破局につながったなんて話もよく耳にする。 俗に言うクリエイティブであれ…
当番ノート 第28期
ちょうど仕事もなかった私は隙があれば、取材と銘打ったモリヤさんと喫茶店に入り浸った。 「私も書く作業は真夜中にやるとはかどるので、相手してくださると嬉しいです」 そう言うモリヤさんとの会話は、ずっと新鮮で、奇妙なものだった。 この先関わることがないだろうとわかりながら、その場の時間を埋める会話はこの島の中ではまずありえない。島にやってくる人間は大概、大きな決意と共に移り住んでくる。その事情は…
当番ノート 第28期
suicide cats in seaside① ばくばくと鼓動を打ち続ける毛むくじゃらな生物の身体は暖かく、 腕の中にもうひとつ心臓ができたような、奇妙な心地よさがあった。 これから自らの命を絶とうとするものが、突如目の前に現れた関係のない命を救おうとしてる。 その矛盾に疑問が浮かばなかった訳ではないが、 アマリは見知らぬ命をしっかりと抱きしめて水面を目指し泳いだ。 海中から勢い良く飛び出し、目…
当番ノート 第28期
「スーツケース?」 「はい。見当たらないんです。あと去年使っていたはずの手帳も」 診察室はいつもの匂いがした。草のようなハーブの香りが、ディフューザーから静かに流れてくる。 「それが見当たらないことが不安なのでしょうか、それとも・・・」 僕は頷いた。 「それが僕の記憶を呼び起こす鍵のように思えてならないんです」 「なるほど」 医者はそう言っただけで深追いはせず、カルテに暗号のような文字を書き込んだ…
長期滞在者
暑い。とっても蒸し暑い。これを書いているのは8月末の週末なのだけど、先週末くらいから、まだ夏なのだということをベルギーの空がふと思い出したように暑くなっている。 いくら日照時間の少ない、四季の区別のない、天候が不順だから7月8月になっても上着をしまいこむ事が出来ない、そういう国に住んでいるからといっても、やはり暑すぎるものは暑すぎるので、贅沢な話だとは思いながら愚痴も言いたくなる。 エアコンが一部…
当番ノート 第28期
一人でご飯を食べたり、カラオケに行ったり、旅行をする。 という話を韓国の人に言うと、すごく心配される。寂しい目で見られがちだ。 「お一人様」 という概念が、韓国にはまだ根付いていない。 韓国はご飯もみんなで食べるし、何かする時もみんなでしようとする。 外食しようとしても、一人では入れてくれないお店ばかりで大変である。 昔、吉野家の牛丼が進出してきたが、一人で食べるスタイ…