はてなを浮かべる
「では、お願いします。」 僕は腕の中に抱えていたはてなを差し出した。 白衣を着た人がそれを両手で受け取って、薄汚れた秤にそっと乗せる。 「うーん、残念。もう少しといったところですね。」 「はぁ。そうですか。」 「見た目は大きいのになあ。」 また来てください、の一言を添えて、手馴れた様子で僕のはてなは返される。 「次の方。」 すぐさま別の人が入ってくる。 同じようにして、抱えていたはてなを差し出す。…
Native Language
長期滞在者
子どもたちが、たっぷりクリームのかかったイチゴをお皿に山盛り食べることができたら大喜びするように、ほんものの魔女は、子どもをぺちゃんこにつぶすのが最高の喜びなのだ。 一週間に一人は消すぞ、と決めていて、それができないと不機嫌になる。 週に一人で、年に五十二人。 つぶして、ひねって、さっと消せ。 それが、魔女のモットーだ。 (『魔女がいっぱい』より) 夏休み前最後の図書室での時間。今日の本は何だろう…
当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第5回目。 前回は、僕がなぜお寺のみならずカフェ、図書館や公民館などいろいろな場所で活動をするようになったのかについてお話させていただきました。 その理由は、僕自身を知ってもらうことで、お寺にいる僧侶の魅力を感じてもらい、それが参拝、お寺でのイベント参加につながるのではないかという気持ちからでした。 それがいつしかお寺の敷居を低くすること…
日本のヤバい女の子
【9月のヤバい女の子/理不尽とヤバい女の子】 ●トヨウケビメ(羽衣伝説/奈具の社) ――――― 《羽衣伝説/奈具の社》 岩陰に水音と女の声。 丹波の山にて八人の天女が水浴びをしていた。 飛沫が舞い、傍らに置かれた彼女らの羽衣を湿らせる。薄く発光するように美しい布は岩の上に無防備に投げ出されたままだ。 軽やかに遊ぶ八人に、ふと不穏な影が近づく。近くに住む和奈佐という老夫婦である。彼らはこっそり水辺に…
当番ノート 第28期
扇風機しかない部屋は、すこし暑い。でもあおいがいないから、シングルベッドをひとりで使える分まだ涼しかった。風はないが、一応窓を開け放してベッドで寝そべっていると、星がちらちらと光って見えた。 十年前、流れ星みたいだと一緒に笑った友人は、結局半年もしないうちに外へ出て行ってしまった。あそこは両親が仲が良かったから仕方がない。私たちは手紙を書くよとうそぶきあって、結局住所も忘れてしまった。電話だけ…
長期滞在者
自意識ってすごく厄介なもの。自分ではすごく気になることだったり、こだわっていたりすることが、他人の目から見たら「そんなこと気にしてたの?」っていうのはよくあることだけれど、その自意識が自分の行動を縛っているのだとしたら、それはとても勿体無いことだ。 4月に転職して、あえてこれまで苦手意識があった言語に関わる仕事に就いたのも、自意識やコンプレックスが確実に自分を狭めていると感じていたから。苦手な…
当番ノート 第28期
アマリはあと2時間ほどで14歳になる。 正確に言えば、14歳になってしまう。 物心ついた頃にはすっかり憎悪と嫌悪の対象になっていたナンバー。 逃げようにも逃げられない、この日がとうとうやってきてしまった。 夜中の0時を過ぎ、自身の肉体におぞましい呪いの数字が刻まれてしまったら、例の計画を試みるつもりだった。 その計画とは、 海を出て 砂浜に横たわり そのまま朝日が昇るのを待ち 干からびてミイラにな…
当番ノート 第28期
クローゼットを整理してわかったのは、荷物が明らかに減っているということだった。そして一番驚いたのは、スーツケースが見当たらないことだった。 黒い、どこにでもあるようなスーツケースだ。大学の卒業旅行のときに買った。壊した記憶はない。いや、壊して捨てたのを忘れたのだろうか?誰にも貸していないはずだ。空き巣が入って、スーツケースだけ奪っていく可能性も考えにくい。僕はクローゼットを閉めると、ベッドに倒れこ…
当番ノート 第28期
最近、撮影やブログ、インスタなどの写真のクオリティなどをあげたいのと 昔からずっと興味のあったカメラを始めようと決心した。 でも、買おうと決心したものの自分の性格を知っているから 今まで触れてこなかったのでどこのメーカー、どんなやつを買ったらいいか凄く悩んでいる。 なので純粋に「カメラを買おうと思っているんですがどんなのがいいですかね?」と お客さんや友達に聞いてみている。 そうするといろんな意見…
長期滞在者
私は焦っています。大学時代の友人と久しぶりにお酒を飲むために乗り込んだ夕方の満員電車で、狭いスペースのなか苦労してスマートフォンを取りだし、待ち合わせ駅周辺の飲食店を調べます。平行して友人とチャットのやりとり、どんなジャンルの店が良いか少し聞いて、後は自分の好みで決める。そのはずが、お店情報の下についた星の数が気になります。 「ランキングは低いけど3.4だからいいか」、「いや、口コミを読むと店員…
当番ノート 第28期
お疲れ様です。 僧侶の鈴木秀彰(すずきひであき)です 今回で第 4 回目。 前回は、なぜお寺でさまざまなイベントを開催するようになったのかについて、お話させていただきました。 1 つ目の理由は、老若男女の日常生活により身近な存在として、仏教の教えを広げていくため。 もう 1 つの理由は、イベントで参加者と直に対話するなかで、書籍からは学べない実践的な学びや気付きを得て、僧侶としての力を高めていきた…