当番ノート 第28期
地下鉄の駅を出て長い階段を上り、交差点に立った時、和光ビルの時計が九時を告げた。周囲のけばけばしい明かりとは違って、あの時計の光は柔らかい。けれどそれを眺めたのは一瞬で、僕は信号が青になると同時に歩き始めた。夜になったというのに、茹だるような暑さだ。 なぜ銀座に来たのか?熱風に髪をなびかせながら、僕はふと疑問に思った。ここ最近ずっとそうだ。僕は自分が何をしようとしていたのか忘れてしまう。お湯を沸か…
日本のヤバい女の子
【8月のヤバい女の子/別れとヤバい女の子】 ●乙姫(浦島太郎) 泳ぎに行きたくて居ても立ってもいられない日々です。雑誌なんかもう、Instagramに最適な浮き輪やら水着やらでお祭り騒ぎです。みんな海のことを考えている。魅力的で恐ろしく、優しい海のことを。 ――――― 《浦島太郎》 昔むかし、浦島太郎という漁師がいた。ある日魚を釣りに行った浜で子供が亀をいじめていたので、かわいそうに思い助けてやっ…
長期滞在者
1993年にブリュッセルに住み始めたその10月の終わりに大雪が降ったのを体験して以来(しかもその日はゼネストの日と重なっていた)、ベルギーの天気というのは異常気象が基本なのだと思ってはいるのだけれど、年間を通しての日照時間の少なさだけはマジ勘弁してくれと思うことは本当に多く、それは日常茶飯事だ。いや、ここは「日常麦酒揚芋事」とでも言ったほうがいいだろう。 今年も例年に違わず、7月に入っても最高気温…
当番ノート 第28期
はじめまして。 韓国生活で日々感じること、考えさせられることを綴っていこうかと思います。 自分は韓国で美容師をして4年目を迎えている。 この3年ちょいでいろんな大変なことがあったでしょ?とか、どうして韓国で美容師をしているの?など 良く聞かれるがまたちょくちょく機会があれば書いていこうと思う。 今回は最近感じたことを文字にして整理してみることにした。 今の自分のお客さんの割合は日本人50%、韓国人…
長期滞在者
ここ数ヶ月間の結婚式ラッシュがひと段落して、実のところとても安心している。もちろん、めでたいことだし、心から祝福しているけれど、それとはまた別に、自分たちの生活もあるわけで。そんなことを言いつつ、ハワイでの結婚式はとても良かった。帰りの飛行機の中では、「Vacationの後の現実は、火傷した肌に水を差す」という言葉が胸の中をこだましていた。子どものころに好んで聴いていたBonnie Pinkの&…
当番ノート 第27期
フジコの一生は散々だった。一生、と銘打ってはみても、まだ人生を終えずにちゃっかり生きているのだから、それが情けない。 フジコは三重県四日市市の生まれ。兄弟は居らず、一人っ子。フジコと呼べども男の子である。幼い頃はよく女の子に間違われた。本当は女の子が欲しかった両親が、フジコに女の子の格好をさせていたせいもある。無理も無い事だ。本名は藤原雅美。これも両親の計らいにより、男の子でも女の子でもどちらでも…
ギャラリー・カラバコ
ここはとあるアパートの一角にある、小さなギャラリー「カラバコ」。 白い壁に空っぽの額縁が無造作にならび、その下には題字だけが添えられています。 タイトルだけを頼りに、二人の作家が別々に文と絵を寄せ、2つが合わさった時に初めて作品が完成するのです。 01 桟橋 02 物差し 03 帯 第4回は、「時化」 今年の梅雨は、やる気があるんだか無いんだか分からない、 じめじめむしむし湿気度合いが大したことな…
当番ノート 第27期
映画「恋人たち」を観ましたか。 公開当初香川での上映予定がなく、しかしどうしても「劇場で観なければ」という気持ちに急きたてられていたわたしは、鞆の津ミュージアムで「障害(仮)」展を観たあとで、福山での最終上映回ならばその日のうちに高松に戻ることができると気付き(翌日朝から仕事だったので)、劇場に滑り込みました。 「どうしても」と思ったのは、この映画が「ぐるりのこと」以来7年ぶりの橋口亮輔監督の長編…
当番ノート 第27期
今回は、最後なのでアパートメントで記事を書くきっかけをくれた大見謝さん(みじゃさん)と対談形式で、これまでと今、これからのことを話していこうと思います。 —————————————————R…
当番ノート 第27期
七月もあっという間に最終週・・・ということはこの連載も今回で最終回。 このクールの当番ノートの中で一番最後に現れ、早々(二番目)に去りゆき、寄稿自体も多くの皆様より一本少なく、コンパクトにまとめるこの潔さをアピールしながら綴っていきましょう。(ただのカレンダー上の都合ですが笑) さて最終回にあたり、自分の書いたものをじっくりと振り返ってみると、「何か」に対して物申したり、「何か」を諭そうとしたりと…
当番ノート 第27期
只今7月18日(月)の6:40。起床は4:45ながら弾けだした蝉の声にまどろみを 拭われて、そろそろお尻にチャッカマンな祝日の朝。 先週は京都での2日間の出店を終えて荷下ろし、片付けからスタート。 平生は家業である工場のお客さま主体の糸屋の仕事(地元奈良や各地での営業、受発注、納期管理&折衝、 工場さま向けリサイクルコットンの梱包出荷、計数管理に資金繰り etc…)に追われ、sared…
当番ノート 第27期
わたしは随分長い間、誰かからの手紙を待っていました。 どんな内容なのかはわからないけれども 確かにある、素晴らしい何か。 想像もできないゆめのような何か そんなものを 月を見上げるたび、街を歩くたびに 祈って 願っていました。 そうして長い長いトンネルを抜けた時、 目の前に現れたのです。 それは例えばお茶の時間 毎朝目覚めること 働くことができること 足元のお花 話し合える友達 ほおばったパンの味…