当番ノート 第12期
世界は毎分のように傷付いたフリをして、まやかしのような希望を抱きながら流転する。 光指す方向へと走るように生きてはいけない僕達も、 せめて誰かが落としていった光を辿るように生きることは出来る。 「あなたは、死んだのに」 みみこちゃんのその一言のお陰で、僕は大事なことを忘れていたことに気が付いた。 たった一日、物を見たり聞いたり考えたりするだけで 自分が死んでいたことを忘れるなんて、思ってもみなかっ…
当番ノート 第12期
俺はギャンブルの類は一切やらないのだが、競馬が好きだ。 スポーツとして観戦している。 というかスポーツ全般だいたい好きで、ぶっちゃけると競馬と野球と相撲に関しては、ロック音楽よりもよっぽど詳しいと思う。 だいたい家に帰るとロック音楽をほぼ聴かない。 ずっとライブハウスにいるので、もうそれでお腹一杯になるのだ。 レッドツェッペリンとローリングストーンズをちゃんと聴いたことが無い。 そういうわけで今日…
当番ノート 第12期
自分の育った街がどんどん変わって行く。 幼い頃からそこに存在したスイミングスクールが解体され、 パン屋は無くなりテナント募集の看板が貼られていた。 変化は悲しい面もあるが嬉しい面もある。 今までのものが無くなる寂しさもあるけれど、 新しいものが生み出されることに対してはやっぱり期待してしまう。 この事は街だけでなく、人にも当てはまる。 安定することでチャレンジをしなくなることが多い。 歳を重ねれば…
長期滞在者
十年くらい前の話、例のUFO研究家の某Y氏が『カラスの死体を見ないのはなぜ?』とかいう本を書いていて、それが間違って紀伊国屋の生物学の棚にあったもんだから、大まじめな生態学の本だと思って立ち読みした。そしたらカラスの体は死んだ瞬間に一瞬で消えるのだとか何だとか、トンデモなことが描いてある。なんじゃこりゃ、と思って背表紙を見て著者名に気づく。あーあ、もう。紀伊國屋の店員も何を間違えてるんだか。 あほ…
当番ノート 第12期
玄関を開けると、女性の手が目の前の塀から出ています。 わ、 と思って思い返してみたら、 前の日の晩に、真っ暗なアパートの廊下に黒い染みがふたつついてて、 なんだろうなあと思って触れたら柔らかくて、それをじぶんで塀の上に置いたのでした。 ああ思い出したと安心してその女性の手をそのままにして、 ぼくは近ごろ出かけたりしているのですが、 そんな安心した朝はもう一週間ほど前のことで、 いまだに玄関を開ける…
当番ノート 第12期
色。いろ。 それはどうやら 組み合わせ ということです。 白い画用紙 に 赤い色鉛筆 クリーム色の紙 に こげ茶色のインク オレンジのような赤 と ほとんど黄色の黄緑 という具合です。 色は色ひとつではなりたたなくて、 必ず隣の色が とても重要なのです。
当番ノート 第12期
人間の心や行動のほとんどが無意識で占められているという 抑圧された潜在意識とは 表層意識下の深層意識とは 何処まで深い深いものなのか
当番ノート 第12期
すっかり陽の落ちた室内にて、ランプを灯しては街を沈め、 窓ガラスに映り込む部屋を隠すように、ねこたくんはカーテンを閉めました。 その拍子に、カーテンの外側に付けられていた鳥を模したオーナメントは まるで鳴いているかのように身体を揺らします。 バン バン と、お腹の深くに響く音をあげ、ゆっくりと扉が開きます。 「こんにちは…いえ、もうこんばんはですね。 どうぞ、こちらへ来てお名前を」 最後の訪問者…
長期滞在者
初めて「お話」というべきものを書いたのは小学4年生の頃。 それはこんな風だ。 ”主人公の「わたし」は醜い女の子で、両親は美しい顔立ちをしているのになぜ、と悩む日々を過ごしている。 ある日「わたし」は思い立って母親のいない隙にこっそりと、「ママ」の化粧水やら美容クリームやらを顔に塗りたくった。 するとどうだろう、見紛うほどの美人に変身したではないか” 「醜い」の箇所を「ブス」、「するとどうだろう」は…
当番ノート 第12期
八年前、俺はギャンブル、それも他人に言えないくらいリスクのでかいギャンブルが原因で、 1200万の借金を背負っていた。 まずどうしてもタバコが吸いたくなるのだが、それを買う金も無く、 というかまず飯を食うための金が無い。 しかしタバコが吸いたい。 不思議なことに、貧乏になればなるほど、 飯の心配よりタバコの心配のほうが大きくなるのだ。 これがクズ人間という奴だ。 仕方が無い。 俺は人間社会から、ク…
当番ノート 第12期
人々はそれぞれの想いで同じ社会の中にいる。 駅のホームにいる人は何を目的にどこへ行くのか。 同じ交差点を渡っている人は渡ったあとどうするのか。 道ばたで待っている人は何を待っているのか。 カフェにいる人は休憩をしているのか、おしゃべりを楽しんでいるのか、仕事を片付けているのか。 なんてことを日々想いながら、自分も社会にいて他人とは違う人生を歩んでいる。 同じ社会にいるのに、関わる人はほんの一握りで…