当番ノート 第12期
コツン、コツンと 弱気なノックの音がはじめに部屋の中に入ってきました。 「どうぞ」 小さな体にはややアンバランスなサイズの蝶ネクタイをつけた、ねこたくんがそう呼びかけます。 「どうぞ、こちらにおかけになってください。そしてお名前を。」 部屋の外はこの時期には珍しい、しっとりした雨が落ちていました。 ここは小さなアパートメント。 床も柱も木でむき出していて、大きな風が吹いた日にはすぐに飛ばされていき…
当番ノート 第12期
というわけで「うさぎのまんが」始めました。 MARUUは普段、おもにイラストの仕事をしています。 このたびは「アパートメント」になるべくない感じの 異様にかる〜いスーダラな物が作れたらいいな〜と思い そうだ、ではエッセイ漫画などどうだろうか?と思いついたのです。 まず手始めに、 ものすごーく身近な ものすごーくゆるいものを描こう、とだけ決めて描き始めました。 そうしたら楽しくてしょうがなくなってし…
当番ノート 第12期
<タバコがやめられるかもしれない話> 午前11時30分に足が攣って、激痛のうちに目覚める。 三十秒くらいうめき声をあげていると、痛みは次第に和らいでゆく。 しかし勢いよく足を動かすと、また攣りそうなので、ゆっくりゆっくり足を元の位置に戻す。 心拍数があがった状態で、とりあえず枕元のiphoneを手に取る。 LINEが8件、メールが三件、着信が1件入っている。 舌打ちをしながらそれを放っておき、性欲…
長期滞在者
みなさんこにゃにゃちは。前回ちょっと長くなりすぎたので今回は反省を込めてちゃんと短くスッキリまとめて書こうかと思ったりしています。なので、本来ここで書こうと思っていた、イワン・イリイチとミッシェル・フーコーと高山宏の言語観と貨幣観をつなげて並べて現代にその問題点がどのように引き継がれていて、どんなふうに顕在化しているのか、またその問題は芸術の分野にも明らかに反映されているのですよ、というようなこと…
当番ノート 第12期
今年の夏にアパートメントの住人にならないかと打診を受けた。 実はアパートメントが始まった頃にも1度あったのだが、断ってしまった。 僕はあまり文章を書くのが得意ではない。 だから、不安になってしまったのである。 そういう経緯もあり、またお話を頂けたのは不思議なことであった。 続けて、彼はこう言った。 「ふみちゃんが何を書くのかをみてみたいのです。」 そうか。興味を持ってくれる人がいるのか。 2回もお…
長期滞在者
≪眠れない夜、地上をやさしく照らしている月を思う。月が照らしている家の一軒にベットが2台並んでいる。2人の子。1人はすやすや寝ているが、傍らの1人は今にも泣きだしそうだ。何かにおびえ、じっと天井の一点を見つめている。彼女は何を見ているのだろう。≫ 私は小学生になっても、自分で部屋の灯りを消してから眠る、ということができなかった。私が布団に入ってから小一時間が経ち、もう寝ただろう頃を見計らい、母が…
当番ノート 第12期
18歳で生まれたおうちを出てから、 すでに10年以上経っていて、 そのあいだに、そのおうちがなくなりました。 そのおうちもなくなったし、じぶんの有様も、 そこに住んでたころとは幾分変わっています。 いろいろな町、いろいろな部屋に住んで、 今回はこのアパートメントに引っ越してきました。 面白いことに、これまで住んだ町や、住んだ部屋と違って、 いろいろな声が聞こえてくるようです。 もしかしたら、目が合…
当番ノート 第11期
ある言葉の持ち主は 例え自らの身と心がついばまれることになろうとも 愛されることを願った ある言葉の持ち主は 誰もが孤独を抱えている仲間なのだと伝えたかった 「君は一人じゃない」 そう思いながら今でも友人の亡がらをどこかで見守り続けているのだという ある言葉の持ち主は友人の旅立ちを祝ったが 幸せを望むがゆえ その行き先に対する不安を言葉にできなかった ある言葉の持ち主はこれから迎える自分の運命を …
虫の譜
それまでちっとも聞こえていなかった音なのに、ひとたび耳が憶えると騒がしい雑踏の中からでもそれを聞き分けられるようになる、ということがある。カネタタキの鳴き声というのはまさにそういった類の音だ。そこここの街路樹や植え込みで彼らは一生懸命に鳴いているのだけれど、知らずにいると控えめなその音は意外に意識にまで届かない。 けれども、いったん彼らの声を捉えられるようになれば、人生における真夏の夕暮れ時の楽し…
当番ノート 第11期
いよいよ寒くなった 今年は気を抜くつもりは、なかった だから私は10月から すっごく意識して冬を待っていたんだ 空を見上げれば ぐずな私でも数え切れそうな、星 見慣れた星空があって 数えてみることにしたんだ 一番右の、ファミマの上のあの星から、 ひとおつ ふたあつ 19くらいのとこで面倒になって 27で、やめた なんだ…
長期滞在者
… ないてもないても まだいたむ ふいてもふいても ちがにじむ ひとりできった くすりゆび こばやしのぞみ 8さい (当時の日記より) … 子供の頃の私はひどく臆病だった。 「のぞみちゃんはおもしろいね」って言われるとほっとしていた。 いつも あとひとことを あとひとときを 急いでくしゃくしゃに固く固く丸めて そのちいさな塊を飲み込んでは 乱雑に見えない場所へと追いやって うずたかく積み上げてい…
当番ノート 第11期
何となく表面に寝転がる。かすかに与えられた柔らかい眼で空間を見定める。そこは受信のみを繰り返し、振動が成り続く。アスファルトにこすり続け、傷だけを許し、反射のガラスは割れることなく流される。過去に冠り続けた幾つもの仮面は果てしなく剥がすことはできない。変換ケーブルをなくした一定の信号。メトロノームが鳴り響き、積み重なる解体から詳細を分離し、定まらない未知数。 錆びた付根から生えた壁。完了に抱かれた…