当番ノート 第51期
自分として、いきてゆくこと それが今の自分のテーマなのだと思う。 小さい頃から自信がなかった。 何につけても自分を認めてあげられず、なにをすれば自分で自分を認められるのか分からず、 評価軸を他者に預けて人任せにいきてみたり、 自分じゃない人間をいきてみようとしたりした。 でもそうやって過ごしてみても 結局はっきりとしない、つかみきれない自分が深まっていくだけだった。 そうやってなんとなく雰囲気でい…
長期滞在者
家の近所となると、家から何キロくらいまでを指し示すのか。 「ご近所さん」という響きにはそぐわないが、家から7-8キロほどの海沿いの町がとても気になっている。何か沼のように惹きつけられる町なのだ。 その町には東西方向に2本の鉄道路線が走っており、それらの路線の北側はチェーン店が密集したターミナル駅の様相なのだが、南側には個性的な昔ながらの店がたくさんある。 特に南側へ10分ほど歩いた場所にある、漁船…
当番ノート 第51期
何となく、先週あたりから体調が悪い。周囲に「体調が悪い」と言うと、通常の二倍くらい心配されてしまうので、口にしづらいけれど、体調が悪い。気圧のせいだ。 この連載は配信の一週間前が原稿の締め切りなのだけれど(つまり、この記事の締め切りは七月十七日)、いくら「調子が良くなるまで少し待ってみよう」と様子を見ていても、一向に体調がよくなる気配がなかった。前回の記事は締め切りの三日前くらいに入稿できて余裕綽…
管理人だより
こんにちは。アパートメント管理人室です。 このたび、住人さんの作品を販売する期間限定のショップをオープンしました!作品は以下、minneのページからご覧になれます。 https://minne.com/@apartment-s アパートメントではリニューアル時から、住人さんの活動をもっと知ってもらうための機会を作りたいと考えていました。今回のマルシェはそのひとつ。普段アパートメントのページ上で見て…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
「しょぼい喫茶店」での営業について書いてみよう、と思ったときと今とでは、ずいぶん世の中が様変わりしてしまった。こういうふうに書くのさえ、今さら言い尽くされたことだと感じるほどだ。当たりまえのように毎週店をあけ、肉体ごと集まってくる人を肉体ごと待っていた日々が嘘のように、今や会うことはおたがいにとってリスキーなものになった。 さいきん、会うことへの郷愁のようなものがあちこちに漂っているのを感じる。ビ…
当番ノート 第51期
黒下さんとの出会いは、夜の帰り道だった。 近頃の私の楽しみは、このコラムの第二話に登場する渡辺さんのいるスーパーよりも、少し離れたところにある高級な食材や輸入品が多く並ぶスーパーへ行き、いつもより質のいい食材や変わった野菜、果物を買うこと。 散歩ついでに少し遠回りしながら上機嫌で一直線の道を歩いていると、公園の隣にある凹型にくぼんだゴミ捨て置き場から視線を感じた。 暗い中、目を凝らしながら進むと、…
長期滞在者
4ヶ月ぶりにマイクを握って司会をした場所は、ライブハウスだった。 2020年7月4日。埼玉県にあるライブハウス、浦和ナルシスからYouTubeを使って、13時から17時までの生放送を行った。タイトルは「バンギャがライブハウスを借りてみた」。バンギャルの哉美さんが特別給付金10万円全て使って、音楽、バンド、ライブハウスでできることとして、ライブハウス、浦和ナルシスで曲をかけて、ステージには照明をあて…
長期滞在者
職場(西宮)から自転車で寄り道して帰る定番ルートの一つに、武庫川沿いを北に伊丹方面まで遡上して尼宝線から尼崎へ帰ってくるコースがあって、その途中に時友という地名がある。 一部建て替えがはじまった古い市営団地があり、人口減で寂れてきた商店街があり、町全体が贔屓目にも華やいでいるとはいいがたい場所だが、いつもそこを通過するたびにバス停や商店街の看板の「時友」の文字、この地名がなぜか気になってしかたがな…
当番ノート 第51期
姉と二人暮らしをしている家に、妹が遊びに来ました。「彼氏とは2週間前に別れたよ。今日は新しく出会ったサークルの先輩とデートをしてきた」と言うのです。 小学生の頃から部活一筋だった妹は、この1年半、一途な恋愛を楽しんでいました。多感な思春期、部活に打ち込んだ反動か、とにかく勢いが凄まじくすべての行動の意味が彼につながっていました。「意外とあっさり別れたな」と横目に見ながら、自分の18歳の頃を思い出し…
当番ノート 第51期
「ちょっと上がってお茶でもしていかない。」 お寺を散策した帰り、ふらっと立ち寄った陶器屋さんの店主のおばあさんに声をかけられた。 このご時世で観光客は少なく、お客さんは私しかいなかった。 立ち話をしながら、最近私が近くに引っ越してきたばかりだと言うと、それじゃあとおばあさんが誘ってくれたのだった。 店の上がり口のすぐ先が平家の住まいになっていて、やや大きなダイニングテーブルが部屋の真ん中にあり、 …
長期滞在者
コロナとの共存生活が長くなると、時々人にあっても、なんとなく暗い話題が増えてくる。 特に僕たちの周辺はフリーランスが多いから、出口の見えない状態が長引くとなんとなく暗い気持ちになる。ただの風邪だ!と豪語してコロナに感染したどこかの国の大統領は論外としても、何十億年の地球の営みという大局的な見地からすれば、この星はちょっと風邪を引いたくらいのものかもしれぬ。そのうち必ず治ると信じて、意識的に目先を変…
当番ノート 第51期
初めて客人を部屋に招く時、嬉しい反面、少し緊張もする。 最寄り駅から家までを横並びで歩きながら、「この人は、私の部屋を見てどう思うだろう?」そんな他者評価が気になってそわそわしてしまう。 プライベート空間に招き入れるわけだし、正直、心を許した人しか入れたくない。大人になって、本当に付き合いたい友人が選べるようになった今だから、友人のほとんどが心許せる人物だと思っている。だから、来て欲しくない人はそ…