長期滞在者
最近、どういったわけか、花をよく見つめてしまう。 花はもともと好きだし、道端に咲いているものがあったら写真に撮ったり、花屋で気になったものを買ったりもしていた。 けれどその「好き」具合が、濃くなったように思う。 じいっと見つめてしまう。そしてそんな私に「こんなところに花が咲いてたのね、気づかなかったわ」と話しかけてくれる人までいる。 私は花という存在の優しさに、凛とした佇まいに、エネルギーをもらっ…
当番ノート 第51期
昨年の夏、新卒で入った職場を半年で辞めた。 今では「そういえばそんなこともあったな」という感じで受け止めているが、これをあんまりよく思わない人も一定数いると思う。私自身は、退職したことを全く後悔していないどころか、むしろ成功体験として捉えている。この感覚はおかしいでしょうか。そんなことないと思いたい。 「何が理由なの?」と聞かれても、納得させられるような返事をすることが今もできない。何人かの親しい…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
ここまで「場の詩プロジェクト」の各企画意図についてあれこれ書いてきたけれど、「実在しない恋人カフェ」という企画に関しては、とくに深い意味はない。ただわたしが”恋バナ”をしたかっただけだ。私利私欲。 恋バナ=恋愛の話をするのはむずかしい。というとふしぎそうにされることもある。しかしこんなにむずかしいことはない。恋愛といえばなんとなく響きはいいがようは性愛であって、そんなパーソナルな話ができる相手はそ…
Do farmers in the dark
アパートメントには最近起こった事で、楽しかった事、印象に残った事を書いている。何も書けないのでいつの間にかいつも日記風の文章を載せるようになってしまった。今まで自分が書いたものを読み返すと、すごくやばいと思う。楽しかった事、印象に残った事のレベルが低すぎて、もっと他に楽しい事ないのかと思ってしまう。 いつか友達と海に遊びに行って、砂浜でたらふく酒を飲んで意識を失ってビンタしてもらってまたニコニコ飲…
当番ノート 第51期
小学生の頃、兄の影響で昆虫を恐れていなかった私は、近くの公園にいたトカゲをこっそりと手の中に入れて家に帰った。 「ただいま、ママ見て! トカゲいたの!」 母は「かわいそうだから放してあげなさい」と言って、私にトカゲを飼うこと許してくれなかった。トカゲは可愛い顔をしながら、私の手の中でくるくると歩き回り、手のひらをくすぐる。 落ち込みながらマンションを降りて公園に戻ったが、地面に置いても逃げていかな…
お直しカフェ
誰が予想したか、新しい感染症の流行と共に、世界はうんと過ごしやすい場所に変わりつつあるのかもしれない。0歳児との暮らしは元からステイホームだっただけに、各種リモートツールの浸透やご自愛の風潮で、私は逆に、社会との接点を急速に取り戻した。無理をせず、だけども楽しく健やかに。オンラインで、産後はじめてのお直しカフェ、ダーニングのワークショップを開催した。 企画してくださったのは、モデルでエシカルファッ…
当番ノート 第51期
みなさんお元気ですか?連載をはじめてから、1ヶ月が経ち、7月になってしまいました。あっという間です。 7月というと、夏のイメージがありますが、例年ようやく猛暑がくるのは下旬で、上旬の天気は荒れています。じめじめとしていて、重苦しい。さっき飲んだ頭痛薬は全然効き目を感じられないし、髪の毛は広がって、アホ毛だらけ。1年の中で苦手な時期です。 今まで過去を振り返ってきたので、今回は現在の状況について書き…
当番ノート 第51期
そのアトリエを見つけたのは、偶然だった。 いや、もしかしたら直感的に今の自分に合う環境を嗅ぎ分けて、選び抜いていたのかもしれない。 東京 絵画教室 で検索すると、都内に数校展開しているような中規模な教室から、個人の画家が自宅で開いているような小規模な教室まで、色々な教室が数多く存在していた。 その中で最初に見学に行った教室は、 ホームページの様子からちょっとおしゃれっぽくて、初心者でも…
当番ノート 第51期
夏が近づいている。晴れの日の朝は、カーテンの隙間から日差しが差し込み、起きると首回りがベタついている。 起きる時間の三十分ほど前からアラームを設定し、十分おきにアラームが鳴って、それを解除する動作を繰り返してようやく起き上がることができる。本当ならばもっと寝ていたい。餃子型のクッションに顔を埋めて「うぅ」と唸る。起きてから、家を出るまでの間は最高に仕事に行きたくない。 社会の歯車になってしまうこと…
当番ノート 第51期
家から数メートル先に、町のたばこ屋があった。重い引き戸をガラガラと開けて「すみませーん」と声を大きめに張ると、まばらの大きさの丸い木がぶら下がっている玉暖簾をかき分けて、「はいはい」と面倒臭そうにおばあちゃんが出てくる。 ある日、奥から出てくるのが中年の女性に変わった。一言も発さずに、お金を受け渡す。彼女を声を聞くことはできなかった。 玉暖簾の奥を見ると、奥に仏壇が見える。きっとおばあさんは亡くな…
当番ノート 第51期
「あれがホタル?」 「違うよ。あれは電灯の光に照らされた塵だ」。 久我山のホタル祭りに行った。目を輝かせてホタルを探したが、神田川の川面で光るそれはホタルではなかった。(2019.6.16) 6月最後の日記。月に5日〜10日分くらい、自由気ままに日記をつけていますが、去年の7月、8月だけは空白です。 7月。家ではひたすらに眠り続ける生活を送っていましたが、職場では至って明るく働いていました。医薬品…
かさねのせかい はざまのものたち
はざまのものたちは かさねのせかいのうすい膜を けっして穿つことはないかれらは 輪郭など もたないものたちだから いくつもの層を すがたを変えながら 緩々と 行き来しては いろとりどりのタネをあつめる そして あつめたタネを ヒトに蒔きにやってくるのだ