当番ノート 第47期
誠とのことについて思い出そうとすると、呆然となる自分がいる。 もの凄いたくさんのことがあるのに、頭の中にロールスクリーンがたくさん張られているようで、もどかしくて辿りづらい。 けれど、苦労しても思い出すことが出来ないのに、音楽を聴いていると唐突に感情、光景、香りまで脳内に蘇ってくることがある。時々、思い出したくないことまで思い出されてしまって、慌ててて曲をスキップさせる。 音楽だけではない。香りや…
当番ノート 第47期
ついたちは 月に一度のおたのしみ 6時主婦 掃除洗濯御飯の支度 7時家内 愛し夫を起こして給餌 8時愛妻 モナリザの笑みで御見送り すまない、今日も残業で遅くなるよ わかりました、いってらっしゃい 鏡よ鏡 私は鑑 あと14610日間 続き続けるルーティーン 9時外出 財布とエコバッグとハンカチを持って 平日午前中の映画館はガラガラ …
長期滞在者
UNHCRを通して難民支援を始めてから、毎年秋のこの時期は、難民をテーマにした映画祭に参加している。 最初は観客の一人として映画を観に行っていたが、ここ数年は会場での司会、上映後トークイベントの司会に加え、 字幕翻訳者のみなさんや、映画祭を応援してくれている著名人のインタビュー記事の執筆など、 映画祭と長い時間を密接に過ごしている。 これまで13年間行われていた「UNHCR 難民映画祭」は、今年は…
当番ノート 第47期
「恋」や「愛」というものは、きっと人の数だけ存在している。 「交際」や「結婚」の形も、きっと一枚面(おもて)を剥がせば多様なはずだ。 ここ数年、「好き」とか「付き合いたい」とかの意味がいまいちしっくりこない期間が続いていた。 別に仲良くするには友達でも成り立つし、セックスがしたいならそれだけの関係でも成り立つ。「結局は独占欲みたいな話なの?」という論にはすぐにたどり着くけれど、それでもいまいちしっ…
長期滞在者
一眼レフというものをはじめて触ったのは高校生の頃である。 僕は演劇部に所属していて、その舞台写真を写真部の友人にお願いした。そのときにその友人のカメラをちょっと触らせてもらったのである。それまでカメラに何の興味もなかったから、一眼レフカメラとは何ぞやということも知らずにファインダーを覗いた。 万華鏡のようだった。 たまたまその友人のカメラのピントがそのとき至近距離になっていて、普通に覗くとファイン…
当番ノート 第47期
生きづらさは、時に自分から、他人から、与えられるものだったりする。 人はいつだって、何かしらでマイノリティを抱えている。 多数派が正しいと見える世界で、同調圧力ほど少数派を苦しめるものはないだろう。 絶対的な正解も、絶対的な常識も、そんなものはどこにもないのに、どうして人は、白黒はっきりとしたがるんだろう。 多数派が選ぶものは、少数派にとっては理解し難いものなのかもしれない。 少数派が選ぶものは、…
長期滞在者
少し前に福岡のホテルフェアに参加してきました。ホテルのワンフロアーを貸し切りにして、ひとつひとつの客室に各地から集まってきたギャラリーがそれぞれの部屋の中で自分たちの扱っている作品を展示します。お客様にとっては、一度に沢山のギャラリーを回ることができますので、アートには関心があっても、どこのギャラリーに行けば良いのか全然わからない人でも、このイベントに来れば、一度に沢山のギャラリーと作品に出会うこ…
当番ノート 第47期
先週、白川通のちょっと裏にある雑貨屋さんに立ち寄ってみた。明るい座敷に仔猫がいて、猫好きな私は思わずお店の方に声をかけた。 ケージから出たそうにしてニャーニャー鳴いている。 何か月ですか、と聞いてみたら、「生後4か月で、引き取って来て3週間なんです」と教えてくれた。 そしたら急に涙が溢れてきてしまった。自分で驚いて、とっさに息を詰めて涙を堪えた。 すごい元気そうな仔猫だし、とても大切にされているこ…
Mais ou Menos
Pちゃん 気がつけば、もう10月。2019年も、もうあと2ヶ月ちょっとか…。冷静になると、時間のはやさに腰を抜かしそうになる。 10月に入って、Pの心身の体調が乱れてきたのが心配です。冬が苦手だから、仕方ないとは思いつつ、つらそうにしているのを見ていると、心が張り裂けそうになります。でも、つらいなりに、生活リズムを整えるために、いろいろ考えて対策していることを知って、すこし安心した。苦手な季節って…
当番ノート 第47期
月末の金曜日なんて、いつもなら月次決算に向けたデータの整理やらで残業待ったナシなのに、あの日は経理部全員が16時に退社させられた。プレミアムフライデーというやつが初めて実施された日だった。課長は終日「後でしわ寄せくるだけなんだけどなあ」とぼやいていた。 大手町から丸の内線に乗り込み、20分ほど揺られ、地上に出た。まだ薄っすらと明るい夕方の新宿は、浮足立った会社員たちで賑わっていた。居酒屋やバル…
当番ノート 第47期
以前から、わたしは「モールス信号」というものが気になっていた。 元来は可変長符号化された文字コード。単音だけ、あるいは光の明滅のみで言葉を伝える手段。SOSを伝えるために使われたりもするという、言葉の形を持たない言葉。 日本の平成の時代に生まれたわたしには、これまで一度もモールス信号との接点はない。けれど、その普遍性のようなものにひどく心惹かれる自分がいた。 国を超えて、時を超えて、その単調な調で…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
今まで知らなかった国に友だちができた途端、そこは自分にとって「友だちが暮らす場所」になる。その変化が自分のなかで起こる度に世界中にいろんな国があって、いろんな文化があって、違いがあることや共通点が見つかることは素晴らしいことだと感じる。 同時にニュースで聞き流していた悲惨さが現実であることも、また全くニュースとは異なることも知ることになる。知ることは素敵なことばかりではないけれど、それでも友達が暮…