当番ノート 第47期
とびっきりのお洒落をして 開始5分後 闇に紛れる この回だけは いつも人が入らない まばらに埋まる席 誰もワタシを気に留めない 大好きな曲と 憧れの女優 大胆不敵な 恋の駆け引き モノクロでも 色めく世界 2時間だけの 逃避行 仕事もきらいじゃない 家庭もきらいじゃない それはウソじゃない できればウソは つきたくない エンドロールの5分前 ワタシはそっと 席を立つ 魔法は解けてしまう前に…
お直しカフェ
上京して大学生活を送っていた2000年代、東京はカフェブームだった。オーナーの趣味がライトに凝縮された空間。壁にかかる額装された海外のポスター、ちょっとこだわりの椅子(イームズチェア)、ふわふわのカフェラテ、ふわふわトロトロのオムライス。三角のサンドイッチを出すのが喫茶店で、バケットに挟んだサラミサンドを出すのがカフェ。私のダイスキなカフェ。そういう会話を友人達と大真面目にした記憶がある。19、2…
当番ノート 第47期
2019年10月。今日から、アパートメントで連載をさせていただくことになった。 「何ができるだろう」と考えたとき、 自由に過ごせるこの場所だからこそ、「言葉の拡張」をしてみようかな、と思った。 月曜日の夜。きっとみんなくたくたで、ちょっとの安堵と一緒に帰路についているだろう。 うつくしいものや、おかしいものを見て、感じて、ときには考えて、 ほんの少しだけ、明日からの活力にしてもらえるようなものにな…
当番ノート 第47期
人はみんな、何かしらの生きづらさを抱えているのだと思う。 僕は、性同一性障害で、女性として生まれたけれど、男性として生きている。 僕は、発達障害で、不注意やこだわりがたくさんある。 僕は、解離性同一性障害(多重人格性障害)で、記憶が飛ぶことがある。 ずらっと並べてみれば、僕は生きづらさの塊を抱えている気がする。 確かに今まで何度も、世の中に絶望して生きるのを止めたくなったことがあった。 生きづらさ…
当番ノート 第47期
毎日、夜中に目が覚めて、布団の中でなんとなくスマホをいじる。 今朝方はfbのタイムラインのトップに「5年前の今日」がでてきた。大阪・梅田近くにある北野病院の11階の窓から夕焼けに浮かぶ飛行機の光を私が撮った写真。誠がいつも入院していた馴染みの個室から、暇つぶしに撮った写真。 私は今日、京都市の隅にあるシェアハウスのリビングでこれを書いている。 築年数不明、ハウスルールは「風呂上りは床びしゃびしゃに…
当番ノート 第47期
過度なノスタルジーとか“レトロかわいい”とかホント勘弁してほしい。レトロ=かわいいでは決してない、そんな消費的な代物ではない。時の流れに消費されず、形をそのままに残ってきたものなのだから。 だからこそ、流れに飲まれて消えてしまうものもあるだろう。それはさ、寿命だよ。人の毎日に寄り添ってきた生活文化は、いまを生きている人たちのライフスタイルに適応していかなければ、消えていく運命だ。変わらないからこそ…
当番ノート 第46期
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション映画『ピノキオ』に、プレジャー・アイランドという遊園地で好き勝手に遊びまくった子どもたちが人身売買にあう場面がある。しかも、どういう訳かロバにされてしまうのだ。子どもが「ママの元に帰りたい」と泣き叫ぶなか蹴飛ばされ、ピノキオと行動を共にしていたランプウィックが「ママーー!!」と絶叫しながらロバに姿を変えるシーンは、未だにわたしのトラ…
当番ノート 第46期
ここにもの書く2か月で何か変わるだろうか、と期待していたけれど実際はそんなことは無く、相変わらずうだうだと働いているというのが正しい。 先日、会社で秋の歓迎会があった。 私の働いている会社では、一年を通して履歴書が送られてきて ぱらぱらと新しい人が入社してくる。そのため半期に一回、親睦を兼ねた歓迎会が行われる。 1人、同い年の人が入ってきて、彼女が夢を持って会社に入ってきた人だったので 特に何も考…
当番ノート 第46期
ここでのエッセイも今回で最後、何を書こうか、とても迷った。2ヶ月間、自分自身について書いてみて思ったのは、わたしはまだ、わたし自身のことがよくわからないということ。 自分の思う自分とは、他人のまなざしを積み重ね、それによって自己像が少しずつ、ほんの少しずつ鮮明になっていくもの。優しい、気難しい、面白い、社交的、そういった気質は他人との比較のうえで生じてくる。誰とも比べず、他人の目を気にせず、内面化…
長期滞在者
2週間前、実家の神戸に帰省していた時、使い古されたメモ帳が部屋から出てきた。 いつのメモ帳やろうかとページを開くと、10年前に海外に初めて一人旅したときの日記だった。 読み始めてみると意外と面白い。 当時の、浮かれてることを気付かないほど浮かれてた姿が思い浮かぶ。 生意気なこと、お門違いなこと言ってる箇所も多々あるが、あくまで自分の記録用として書いてたのでご了承くださいませ。 誤字脱字、意味不明箇…
当番ノート 第46期
8回目の投稿です。「トルコで出会った女性たち」シリーズ最終章です。トルコで出会った印象的な女性たちとそれにまつわる私の記憶を書いています。1回目の投稿「ハティジェ」の冒頭にてこのシリーズの説明を詳しく書いておりますので、一体何について書かれているのか混乱された方はどうぞそちらをご確認ください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…
当番ノート 第46期
深夜0時が過ぎようとしていた。私は眠気で目の玉がひっくり返りそうになりながら、都内の居酒屋で彼女の話を聞き続けていた。トピックは、「パートナーについて」だ。 「こんなこともあって……」 「うんうん……」 この類の話は、(酒が入ると余計に)終わりがみえない。それでもこういうとき、私にできることはただひとつ「聞く」だけなのだ。 * 私にもパートナーがいる。出会ってから10年、結婚してからは8年目。子ど…