当番ノート 第47期
外は、大雨だ。おまけに雷も鳴っている。 大きく息を吸い込むとき、気管支が詰まったように、ひゅー、という音が聞こえることがある。 ごくわずかに喘息を持っているのだけど、それとは別に、息苦しさを感じるときがある。 何年も前のこと、僕はこの世界が灰色に見えていた。 ようやく色が着き始めて、彩色が薄ぼんやりと見えるようになってきた。 息も出来ないほど苦しかった灰色の世界は、何回息を吸っても上手く酸素を取り…
長期滞在者
絹江ちゃんについて話そう。 絹江ちゃんはいわゆる大手企業で働くバリキャリウーマン。仕事ができるだけではなく、話すと独特の目線で愛のムチを叩いたり、誰も想像できないような鋭い切り返しをしたり。しみじみ、この家に住まなかったら出会わなかったタイプの女性だろうな、と思う。 彼女とは25歳の頃から数えて約7年(!!)も住んでいたわけで、よく恋愛の相談に乗ってもらっていた。25歳からの恋愛といえば、もう10…
Do farmers in the dark
表題:逆さ吊りになった友人と話す居心地の悪さよ。どうにか正位置に戻してあげたいけど、私には無理だ。私も、後ろになんかゴツいものがあって、それが後頭部にいつ叩き込まれるか心配なので。 こんばんは!今回は、前に途中になってた漫画を描こうと思ったのですが、脳が諦めてしまい描くことが出来ず、4コマみたいな漫画だったら描けるかなと思いまして、精一杯やれるだけ描いたのですが酷いありさまでした。そ…
当番ノート 第47期
大学3年生になる前の春休み、私は運命の出会いをした。 同じサークルのF田に誘われて、先輩と3人で鍋パーティーをした。みんなの噂では最近失恋をしたばかりらしい、いっつもpaul smithを着て、赤いFITを乗り回している、車椅子の、石井誠という先輩。それから、頻繁に何度か遊んだりまた鍋をしたりして、大した駆け引きもなく、とても自然に私と石井誠は一緒に暮らすことになった。私にとっては初めてのお付き合…
当番ノート 第47期
とびっきりのお洒落をして 開始5分後 闇に紛れる この回だけは いつも人が入らない まばらに埋まる席 誰もワタシを気に留めない 大好きな曲と 憧れの女優 大胆不敵な 恋の駆け引き モノクロでも 色めく世界 2時間だけの 逃避行 仕事もきらいじゃない 家庭もきらいじゃない それはウソじゃない できればウソは つきたくない エンドロールの5分前 ワタシはそっと 席を立つ 魔法は解けてしまう前に…
お直しカフェ
上京して大学生活を送っていた2000年代、東京はカフェブームだった。オーナーの趣味がライトに凝縮された空間。壁にかかる額装された海外のポスター、ちょっとこだわりの椅子(イームズチェア)、ふわふわのカフェラテ、ふわふわトロトロのオムライス。三角のサンドイッチを出すのが喫茶店で、バケットに挟んだサラミサンドを出すのがカフェ。私のダイスキなカフェ。そういう会話を友人達と大真面目にした記憶がある。19、2…
当番ノート 第47期
2019年10月。今日から、アパートメントで連載をさせていただくことになった。 「何ができるだろう」と考えたとき、 自由に過ごせるこの場所だからこそ、「言葉の拡張」をしてみようかな、と思った。 月曜日の夜。きっとみんなくたくたで、ちょっとの安堵と一緒に帰路についているだろう。 うつくしいものや、おかしいものを見て、感じて、ときには考えて、 ほんの少しだけ、明日からの活力にしてもらえるようなものにな…
当番ノート 第47期
人はみんな、何かしらの生きづらさを抱えているのだと思う。 僕は、性同一性障害で、女性として生まれたけれど、男性として生きている。 僕は、発達障害で、不注意やこだわりがたくさんある。 僕は、解離性同一性障害(多重人格性障害)で、記憶が飛ぶことがある。 ずらっと並べてみれば、僕は生きづらさの塊を抱えている気がする。 確かに今まで何度も、世の中に絶望して生きるのを止めたくなったことがあった。 生きづらさ…
当番ノート 第47期
毎日、夜中に目が覚めて、布団の中でなんとなくスマホをいじる。 今朝方はfbのタイムラインのトップに「5年前の今日」がでてきた。大阪・梅田近くにある北野病院の11階の窓から夕焼けに浮かぶ飛行機の光を私が撮った写真。誠がいつも入院していた馴染みの個室から、暇つぶしに撮った写真。 私は今日、京都市の隅にあるシェアハウスのリビングでこれを書いている。 築年数不明、ハウスルールは「風呂上りは床びしゃびしゃに…
当番ノート 第47期
過度なノスタルジーとか“レトロかわいい”とかホント勘弁してほしい。レトロ=かわいいでは決してない、そんな消費的な代物ではない。時の流れに消費されず、形をそのままに残ってきたものなのだから。 だからこそ、流れに飲まれて消えてしまうものもあるだろう。それはさ、寿命だよ。人の毎日に寄り添ってきた生活文化は、いまを生きている人たちのライフスタイルに適応していかなければ、消えていく運命だ。変わらないからこそ…
当番ノート 第46期
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの長編アニメーション映画『ピノキオ』に、プレジャー・アイランドという遊園地で好き勝手に遊びまくった子どもたちが人身売買にあう場面がある。しかも、どういう訳かロバにされてしまうのだ。子どもが「ママの元に帰りたい」と泣き叫ぶなか蹴飛ばされ、ピノキオと行動を共にしていたランプウィックが「ママーー!!」と絶叫しながらロバに姿を変えるシーンは、未だにわたしのトラ…
当番ノート 第46期
ここにもの書く2か月で何か変わるだろうか、と期待していたけれど実際はそんなことは無く、相変わらずうだうだと働いているというのが正しい。 先日、会社で秋の歓迎会があった。 私の働いている会社では、一年を通して履歴書が送られてきて ぱらぱらと新しい人が入社してくる。そのため半期に一回、親睦を兼ねた歓迎会が行われる。 1人、同い年の人が入ってきて、彼女が夢を持って会社に入ってきた人だったので 特に何も考…