当番ノート 第44期
――恋と友情の境目は、どこにあると思いますか? 唐突ですね。それは、異性間の話? ――異性間でも、同性間でも。ある日まで友情だと思っていた感情が、いつの間にか恋に変わっていることはよくある話です。 友情と恋って、そんなにはっきり白と黒のように分かれるものかしら。「好き」という想いに、人のほうが友情や恋と勝手に名前をつけるだけだと思うの。 ――たとえば、異性愛者の男性同士は、どんなに仲が良くても、手…
長期滞在者
メール添付で送られてきたカレッジの地図を開くと、大きな庭が目に入った。3月の終わりに英国のオックスフォードでセミナーがあり、宿泊先は、カレッジと呼ばれる、キャンパスと寮を兼ねるような大学の敷地内にあった。カレッジはオックスフォードの街中にいくつも点在し、今回のセミナーで宿泊するところは、まだこれまでに入ったことがなかった。 —— 日本時間では深夜をまわったくらいの時差ぼけし…
当番ノート 第44期
早いもので、連載も第3回です。 今回は、よく行くラーメン屋さんで考えたことについて。 ラーメンについてではなく、自由について。 突然仰々しいテーマですが、軽い気持ちでお読みいただけたら幸いです。 水曜の昼下がり。いつものように暖簾をくぐり、食券を買って、着席。 すると、聞き覚えのあるイントロが。このお店のBGMはいつもラジオです。 曲は土岐麻子の「STRIPE」。 1年半前にWebマガジンの記事で…
当番ノート 第44期
東京のなかでは水道橋が好きだ。 まずおいしいごはん屋さんが多い。これは具体的にどこがおすすめとか行きつけとかいう話ではなくて、多い、ということそのものがいい。なんなら、さして色々なお店に行ったことがあるわけでも、グルメに詳しいわけでもなく、多いらしいな~と聞いている程度だが、それでも十分にいい。わたしはよく歩くので神保町お茶の水あたりまでごっちゃにしている気もする。 おいしいごはん屋さんがひとつの…
当番ノート 第44期
手紙「コンプレックスさんへ」 ごめんね、こんなこと言うのもあれなんだけど、こんにちはしたくないな、あなたには。 ごめんね、私まだ、あなたのことを受け入れることができないの。 ごめんね、あなたのことを恨んでいるの。 本当にごめんなさい。 嫌いで、憎くて、けど、あなたのことをそう思っててもいいと思うの。 誰にだって好きや嫌いはある、その「嫌い」の中の1つにあなたがいるの。 それにあなたには非はないの。…
長期滞在者
個人ではもう使わなくなったと思うけど、仕事の現場では今も、注文や、見積もりをファックスで送ったり、送られてきたりすることが多い。それでもいまは、文字や簡単な手書きの図表程度ではあるが、電子メールが普及する前は、写真の絵柄のやりとりも頻繁にファックスでやっていた。本や、生原稿を複写して送信するのだけれど、これがまた不鮮明な画像で、中には、真っ黒にしか再現されない場合も多かったが、とりあえず情報として…
長期滞在者
私が最初に洋楽の音源を買ったのは、家族旅行でハワイに行った時。 ショッピングモールにあったレコードショップで、 ティファニーの1stアルバム『Tiffany』とマドンナの3rdアルバム『True Blue』のカセットテープを買った。 家族でマイケル・ジャクソンやマドンナの来日公演を観に行ったこともある。 振り返ってみると、私の洋楽への入り口には家族との思い出がある。 2月のグラミー賞の発表が終わる…
Mais ou Menos
まちゃんへ ここ数日、まちゃんが前よりも少しだけ楽しそうに見えます。 体はもちろんしんどいと思うし、体調もいい日も悪い日もあるやろうけど、精神面が違う気がします。まちゃんの中から、何か新しいまちゃんが生まれ出している感じ?今まで苦しんでいたまちゃんが苦しみから少し解放されていくような…。自分の縄をひとつ解いたような… 昨日まちゃんが私が家に帰ったとき、元気にジャンプして出迎えてくれたの本当に嬉しか…
当番ノート 第44期
――お金持ちになることに憧れますか? そうですね。都心のタワマンの最上階に住んでみたいです。 ――今の仕事には満足していますか? まあ、はい。有名な大手ですし、給料も待遇も良い。そりゃ社会に出れば色々あるので、100点満点ってわけにはいかないですが、デカい失敗してもフォローしてもらってきましたし、そうやって自分も下の尻拭いしてみんなでやってきたんで、しんどいとかそういうのはあまり。でもときどき、考…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
ジェニーは褐色の肌が美しいアメリカ人。私の一番最初のホームステイ先の女の子だった。中学2年生の夏、2週間弱のプログラムでアメリカ・テキサス州のガルヴェストン島を訪れた。地図で見ても大陸に比べてあまりに小さい、田舎に思えたその島が、私にとっての最初の外国だった。 外国への熱意だけで参加した当時、私は「言葉が通じなくても大丈夫」という自信に満ちていた。なんとなく、「心で通じあう」ことはこちらの熱意次第…
当番ノート 第44期
僕の地元は愛知の長久手というまちです。 生まれてから大学までの19年間をここで過ごしました。 郊外のベッドタウンですが、結構強い愛着があります。 愛着を育んだ場所の一つが、道場です。 小学校入学直前から高校3年生まで通った、空手の道場。 多いときには、大人から子どもまでだいたい100人くらいが通っていました。 幼なじみが通っていたことがきっかけで始めたものの、小学校高学年くらいまでは、いつもやめた…
当番ノート 第44期
今年はなぜか桜の時期の中目黒に三回も行った。たまたま用事が立て続いたのだ。ふだんはなるべく人混みを避けて暮らしているので、これは不覚だった。 中目黒には行きつけのワークショップの教室があるのでしばしば足を運ぶ。生活と商業のけはいが、またにぎやかさと静けさとがシームレスに交じり合う町で、歩きごこちがいい。 ところが、桜が咲くだけで、町はまったく別の顔をみせる。 目黒川に人が殺到するせいで、改札を出た…