長期滞在者
  
  
  街を舞い飛ぶビニール袋は、予期しないときに突然現れる。 初夏の真っ青な駅前広場で、緑の文字が書かれた白いビニール袋が、ふわふわと舞い降りてくる。その気配に気づいて、スマートフォンを取りだしてカメラを起動する頃には、もう、地面にぺしゃりと潰れており、ふたたび動きだしそうな様子はまったくない。ビニール袋をすかしてコンクリートの地面にうつる透明な影が、今でも目に見えるような気がしてしまう。 地下鉄に通じ…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  つい先週、ずいぶん久しぶりに、他人に対して怒りをぶちまけてしまった。 「相手のために叱る」なんてかっこいい話ではなく 、ただただ、こらえきれなくなって、暴発。 燃え盛る火事場に駆けつけて、太めのホース引っ張っていざ消火、と思いきや火炎放射器ボッファーーー!!えええーーーー!!!消すんちゃうんかーーーーーーい!!!という感じで、やってしまった。 怒りって、その内側に溜まりに溜まったいろんな感情的なも…
        
  
  
    
  
  
    
    
長期滞在者
  
  
  東京から遠く離れたところで、活動の拠点を置いている写真の作家さんが近々地元に作品の発表の場を自分たちで立ち上げようと準備していると聞きました。 写真ギャラリーが今までなかった地域にその土地に根を下ろして、自分の表現の実践と思考を深めていく、ならびにその地域の人々と結びついていく場を持つというのはとても意義深いと思います。 地方都市において、写真展といえば、地元のアマチュアカメラ愛好家の人たちの、お…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  あめ【雨】 ①大気中の水蒸気が高所で凝結し、  水滴となって地上に落ちるもの。 ②雨天。 ③絶え間なく降りそそぐもののたとえ。 あま・よろこび【雨喜び】 ①旱天時に降雨を得た場合、  仕事を休んでする祝い。  雨遊び。雨休み。雨降り正月。 -『広辞苑 第七版』より抜粋 - あなたは雨が好きですか? 私は、どうだろう。 正直な話をすると、 雨の日の外出は億劫だ。 傘を持ち歩かなければならないし 服や…
        
  
  
    
  
  
    
    
Mais ou Menos
  
  
  Hi, お元気ですか? 今月の往復書簡ですが、わたしとパートナーの間のお手紙ではなく、わたしから普段読んでくださっている方々へのお便りという形にさせてください。突然のことで、驚かせてしまったらすみません。 近況報告からですが、わたし(Maysa)とパートナー (ぴちゃん)は、相変わらず日々、必死に生きています。健康維持が、ここ最近のわたしたちのテーマになっているのですが、生きていると、予想していな…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  ぐしゃぐしゃの頭で着替えだけしてパソコンを開く。 ベッドサイドにスープと飲み物だけ用意して、そのまま書くことにした。 眼精疲労であいかわらず目はよく見えない。 小学生の頃だったか、たしか目を閉じて絵を描くことをした気がする。 文章はわたしの我流のタイピングでは無茶苦茶になりそうだ。 写真ならどうだろう、と思ったら、すでにやっていたと気づいた。 わざと被写体を見ずに撮ることは、写真の手法のひとつであ…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  挿絵が目に焼き付くほど、繰り返し読んだ本がある。 家には本棚が沢山あって、縦横無尽に本が詰まっていた。図鑑、絵本、のんたんシリーズに分厚い辞書や小説。中でもお気に入りは「世界の昔話」シリーズで、日本の昔話ももちろんあったけれど、繰り返し読んだのはギリシャやヨーロッパのそれだった。 忘れられない話がある。 『チッコペトリロ』という、イタリアの童話。 幸せいっぱいの花嫁が、結婚の祝いの席で地下にワイン…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  滋賀県高島市の山深い土地に朽木古屋という集落があります。いまでこそ年間通してここに住まう世帯は片手で数えられるほどの過疎集落ですが、この古屋には800年以上にわたり継がれるとされる六斎念仏踊りという芸能が伝承されています。 六斎念仏といえば、この朽木古屋をふくむ、奈良/京都から若狭に掛けての鯖街道沿いをはじめとして、大阪、和歌山、遠くは高知、長崎にもその分布がみられ、その土地の生業や歴史からそれぞ…
        
  
  
    
  
  
    
    
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
  
  
  人生を通り過ぎて行くもののなかで、絵本や小説に出てきた登場人物もまた、私のなかに強い印象を残している。ときには実在する人以上の存在感を感じることさえある。物語のちからは強大だ。 「おっきょちゃんとかっぱ」という、小さな女の子が川底のカッパの世界に行ってしまうお話を、夏になると必ず思い出す。おっきょちゃんはひとりで川遊びをしているときにカッパのこどもに出会い、誘われるまま川底でのカッパのお祭りに行っ…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  東京国立博物館で「縄文ー1万年の美の鼓動」が始まっている。 ここで展示されている土偶のうち1体と再会できるということもあり、とっても楽しみにしている。 そいつを初めて観たときのことは、今でも印象に残っていて。 もう一度実物と向き合うにあたり、土偶を通じて思うところについて、自分なりに書き留めておきたい。 展示をすでにご覧になった人もそうでない人も、しばしおつきあいいただければ幸いです。 問いかけ続…
        
  
  
    
  
  
    
    
長期滞在者
  
  
  実家に住んでいた頃は、家を出たくて仕方がなかった。人生とはこうあるべきと言わんばかりの、あらゆる押し付けに耐えられなかったからだ。 私の両親は「こうすれば人生は安全だ」という正解を持つ世代だった。大学に入ること、大手企業に就職すること。結婚して子供を産むこと。 けれど私の世代は違う。正解はない。学歴や職歴、家や車を持つよりも大切なことがある。 この家には、正解という虚像に近づくことよりも自分の納得…
        
  
  
    
  
  
    
    
当番ノート 第40期
  
  
  いろ【色】 ①視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。 ②華やかな様子・姿。 ③表にあらわれる様子・おもむき。 ④愛情・情事。 いろ・どり【色取り・彩り】 ①いろどること。彩色。着色。 ②色の配合。配色。 ③はなやかな変化。おもしろみ。 -『広辞苑 第七版』より抜粋 - この人たちの世界は何色をしているのだろう。 テレビやスクリーンの向こう側にいる 青色や緑色の瞳を持つ人たち…