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星座を結び直す。ふとそんな言葉が降りてくる。 12月の前半を、私は沖縄で過ごした。 大切な友人、えりの結婚式に加えて、現地でまた仕事をすることになった。 3年前。産後の体調不良で私がにっちもさっちも行かなくなっていた時、 「旅がしたい」と呟いた言葉を拾ってくれたのが、えりだった。 私としおは初めてふたりきりで飛行機に乗って、えりのところに行った。しおのリズムに合わせて動く旅の時間。 あの時間を経て…
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1) 紅葉、イチョウ、楓。そして名前をしらない、木々の落とし物。かしゃかしゃとブーツをくぐらせて、ふわりと巻き上げる。 秋の出口に、お約束のように思い出すことがある。 10代の昼下がり、盛大な紅葉の中にゴロンと寝転がったら友達が私に落ち葉をかけていった。葉っぱ布団はふんわりと軽くて、いい匂いがした。おそらくその何日か前に雨が降ったのだ。「さあ、願いを全部いうんだ!」と友はおどけた。私はぽつぽつと話…
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10月7日 今日は休みと決めて夫とランチを食べに行った。選んだお店はとても賑わっていてたくさんの話し声が木霊していて周りの音が気になって 何を話したのかあまり覚えていない。 でもなぜかもう少しだけと思って デザートを頼んで 話題を転がしていたら あっというまに30代が終わりそうなこととその割には自分のやっていることが小さいなと思っていること周りに本気で社会と接続して 邁進して形になってきている人た…
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今、踊るということ(9月1日) 気づけば夜通し 踊りの動画を見ていたいま踊ることを 考えていた色々と探して結局 街のジムに通い始めた いま踊ることを 体が求めている内に籠るものの 発露を求めている 何が籠もっているんだろう とも考える 言葉で縁取る前の 前の もっと前のものそれはどろっとしていて ぐるぐるしているもの 言葉にする必要もないものそこから言葉をとりだすには、 たぶん 川の水が泥を洗って…
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8月2日 日曜日。朝、起きる。パンケーキを焼く。しおにリクエストされたミッキーマウスや、スナフキンの形を作る。いくつか失敗して、私が勝手に名前をつける。着替えて3人で買い物に出かける。1週間分の食料を買い込んで、スーパーの隣の100均で、しおの選んだシールを買う。帰り道に魚がとってもおいしい定食屋さんへ。お店のおかみさんから、大好きないくらをおまけしてもらってしおはご機嫌だ。お勧めされた近所のお花…
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7月4日 「ばいばーい」小さな手が振られて、タクシーのドアがすうと閉まる。朝6時。しおと順が実家に帰った。「おじいちゃん、おばあちゃん、来ていいって」先週そう伝えた時は、「やったああああ」と叫びながら、保育園からの帰り道を駆け出し、昨日荷造りの前にもう一度伝えると、四つん這いになって両足を宙に何度も蹴り上げた。おかしくてカメラを向けると、たまらず顔を自分の腕に埋めて、ひとこと「よろこびです」と、呟…
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6月1日 家の空間が違う。たとえば、バンドのメンバーがひとりおやすみ、ってこういう感じなんだろうな。ひとり分の音、気配がない昼間。夕方並んで歩いていると「お昼ご飯がすっごく美味しかったの!」 としおは言った。私たちが頑張って作っていたお昼は…? と、思わず拗ねそうになったけれど、楽しくてよかった。保育園、再開の日。 6月2日 昨日とても遅ればせながら、アメリカで起きていることの記事を読んだ。そして…
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愛でる時間は、たっぷりあった。考える時間は、細切れだった。 5月1日(金) 晴れ 布団の中で考えていた。言葉や文章を柔らかくしておくこと。輪郭をガチガチに固めてしまうと、閉じ込められた中身はそこからどこにも行くことができない。中身が本質を捉えている、輪郭がその本質を囲っている、その上で、解釈のスペースは空けておく。余白と余韻を含んだ文章、言葉を目指したい。 躍動感。昨日、動画で見たピカソの、まるで…
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4月1日(水) 友達からメッセージ。「こんな状況になって、あなたの感性にも変化がありそう。最近何を感じてる?」個人的には、ここのところずっと止まりたかった。「世界が不安で繋がっている」と彼女は言った。「fearよりもcareで繋がりたいね」と、返事を書いた。書くのは簡単。でも誰かをちゃんとcareするのは難しい。 今日は雨。庭の花の写真を撮った。もう8年もこの日は命日。思い出させて辛くなるだけなら…
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色々なことが取りやめや延期になってようやく、日常を広げて考えられる感覚がある。地球の裏の友達と、数年ぶりのやりとりが再開している。「そっちは大丈夫?」「そっちの様子はどう?」なんて、いままでにない共通言語で会話をしている。 怖いんだよね。と布団の向こうで声がした。これから、たくさんの人が亡くなって、大事な人が死ぬかもしれないのが怖いんだよね。 SNSを1ヶ月閉じていても平気だったのが、いつのまにか…
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2月1日 目が覚めたら朝の4時だった。 夜と朝の間、起きると眠るの間。少なくともこの家で起きているのは、私だけ。というのはあと2時間くらいだろうから、30分でメールを返して、1時間で原稿できるとこまで進めて…と段取りを考えるも、ぴんとこない。 こんな贅沢、もっと踊ったらいいじゃないと声がする。 最近、言葉の鎖を解くことについて考えている。惰性で繋がれていたものを、いったん解いて、ほんとうはひとつひ…