タバコがやめられるかもしれない話

第12期(2013年12月-2014年1月)

※女性蔑視ととられかねない発言があることを自覚しておりますので、先にお詫び申し上げます。

先日、俺は20対20の合コンに行った。
まずは居酒屋和民。
俺たちの向かいに座る女共を見渡す。
左からべっぴんさん、べっぴんさん、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、オカマ、ブス、石原さとみ、ブス……
……石原さとみ!!!!
そう、なんとブスだらけの合コンに石原さとみが来ていたのだ。
しかも、俺の真正面に座っている。
こんな奇跡が果たしてあって良いものか。
嬉しい。嬉しすぎる。
しかし、
これまで一切モテることの無かった30数年間を反芻しながら
石原さとみちゃんを見つめていると、さとみちゃんがこんなに近いのに遠く思える。さとみが遠い。嗚呼さとみ…君のブラックホールみたいな唇に吸い込まれそうだ…なんというか、その、ええと、その、まあしかしその、

「起床!!!!」
起床の号令で目覚める。
また石原さとみの夢をみた。
布団を素早く畳み、格子があけられ、整列し、点呼をとり、食堂へ。
俺はうまくも不味くもない朝飯をぼんやり喰いながら、
今朝の夢を反芻する。
モテることの無かった30数年間を反芻する。
石原さとみのような美人と会うことなど万に一つも無い人生。一度で良いからそんな美人さんもいろいろあっても良かったろうに、俺の人生はとことん暗かった。
石原さとみっつうか、有村架純でも良い。長沢まさみちゃんも同じ静岡人として好きだしでもなんだかんだで森高千里が一番好きなんだよなあ。
竹内結子はデビューしたときから知ってる。初出演ドラマ観てましたから。
あれは学校の怪談シリーズの
堂本光一主演のドラマで…

「おい2762番、飯を早く喰わんかー!」
看守の怒号。
また怒られた。
服役して五年経ったが、いまだに飯を早く喰わねばならないことに慣れない。
ちなみに何故俺が服役しているのか、詳しくは第四回あたりの更新を参照されたし。
放火殺人は殺人罪の中でも重いので、余裕の死刑判決に抗うつもりもなく、刑務所の中でひたすら死を待つ毎日だ。
シャバに比べれば退屈で不自由な生活であるが、
良かった事が一つだけある。
それは、ストイックな生活のおかげでついにタバコをやめられたことだ。
もうタバコに左右され、踊らされ、支配されることはない。
アレだけ吸いたかったのにもう吸いたい気持ちはすっかり失せた。

朝食後、急に呼び出される。
翌日の午前、俺の刑が執行されるとのこと。
「今日の夜と明日の朝、食べたいものがあればどうぞ」
と言われたので、夜はラーメンとビール、翌朝は鍋焼きうどんをリクエストした。

ラーメンは醤油ラーメンかと思いきや、豚骨ラーメンだった。美味かった。
その晩は以外にすんなり眠れて、朝はすんなり起きた。
鍋焼きうどんが手配出来なかったとのことで、讃岐うどんが出された。
鍋焼きうどんごときを手配出来ないというのは一体どんな仕打ちだと思ったが、讃岐うどんも好きなので黙って食った。
で、執行室へ連れてゆかれる。
お坊さんに何やかんやと優しい言葉をかけられる。
最期に言い残すことはありますか、と聞かれて考える。
ない。びっくりするほどない。
あ、そうだ!
急に思い立った。
アレを、やっぱり最期にアレを…!
坊主にリクエストすると、「私のでよければ」と、
看守がポケットからライターとラッキーストライクのソフトから一本取り出して、渡してくれた。
まさしくこれは以前俺が吸っていた奴と同じだ。
なんという幸運。
以外に良い人生であったな。
頬から一筋の涙がこぼれ、俺はようやくそこでタバコに火をつけたのだった。

みなさんさようなら!