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2F/当番ノート

第三回 バンドネオンはアコーディオンではぬぁい!!

当番ノート 第18期

皆さんこんにちは、まりもをこよなく愛するバンドネオン奏者の早川です。
今回は、僕が演奏している楽器、バンドネオンについて
蛇腹楽器の仲間達と比較しながら話を進めて参りましょう。

ドイツ生まれのバンドネオンが、
南米はアルゼンチンに移り住んだ移民達のロマンの象徴としてタンゴという音楽の魂になった。
というお話しをしましたね。
ヨーロッパの辺鄙な田舎町で、アコーディオンの亜流として目立たずに生涯を終えるのか、
はたまた新天地に渡り、新しい魅力を開花させるのか。
それはバンドネオン自身にとっても、大いなる挑戦だったのかもしれません。
…今、敢えて「アコーディオンの亜流」という言葉を使いました。
でも、バンドネオン奏者に「アコーディオン奏者の○○さん」と声をかける事はタブーです。
バンドネオンとアコーディオンは、親戚のような関係にあるものの
全く異なる楽器です。

「でも実際、なにが違うのよ?見かけも音も一緒で見分けつかないんですけど」

という野郎…じゃなかった、御方の為に、ご説明しようではありませんか!
耳の穴かっぽじいて…もとい、そこに正座して…でもなかった、
面倒くさがらず最後までお読みになって下さいませ!!

…ここからはクールにお届けします。
それぞれの楽器の異なる部分のお話しをする前に、
先ず蛇腹楽器に共通する事として、発音の仕組みが同じである事が挙げられます。
簡単なイメージをお伝えしますと、ハーモニカが仕組まれた二つの箱を、蛇腹でくっつけていて、息を吹いたり吸ったりする代わりに、蛇腹で空気を送り込んで音を出している、というイメージです。
実際ハーモニカの発音機構と同じように、金属のプレートに金属の薄いリードが取り付けられていて、そいつが振動して音が出る仕組みです。ここ、押さえておきましょう!

バンドネオンとアコーディオンの形は、実際にはかなり違います。
アコーディオンは比較的、縦に長い形をしています。
右手側にピアノのような鍵盤が並んでいるタイプ、ボタンが並んでいるタイプとありますが、いずれのタイプも基本的に左側にはボタンが配列されています。
アコーディオンの左側のボタンは、スイッチを切り替える事で、一つのボタンで単音から和音まで演奏可能になっています。また、鼻に掛かったような甘い音から、華やかで煌びやかな音まで音色を変えることも可能で、まさに「アコースティックなシンセサイザー」といった趣です。
アコーディオンは背面にベルトが二つ縦に付いていて、
イメージとしてはランドセルをお腹側にしょったようなスタイルで、身体に固定して演奏します。
こんな感じ
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かたやバンドネオンは、真横から見るとかなり正方形に近い形をしています。
右も左もボタンが並んでおり、一つのボタンは押引それぞれ一音のみ、音色も変えられないとてもシンプルなシステムです。
但し、楽器の内部の構造から右手側は比較的鋭くストレートな音、左手側は籠った温かい音がします。
身体に固定するベルトは付いていません。
左右のボタン群の手前に、小さなベルトがついていて
そこに手を通して引っ掛けて演奏するのです。
楽器の重さを手だけで支えながら演奏する事は困難な為
バンドネオンは基本的に座って、膝に乗せて演奏します。
こんな感じ
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ちなみに同じようなボタン式の蛇腹楽器で、コンサーティーナという楽器も存在しますが
これはまた別の楽器。コイツはかなり軽量で小さな楽器なので、手だけで支えて立っていても演奏が可能です。ボタン式の楽器ですが、アコーディオンともバンドネオンともまた配列が違い、音域も狭いですが味のある楽器です。
こんなん
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金属のリードを振動させて発音する、という基本のシステムは一緒ですが
楽器の大きさや材質、演奏方法、一度に振動させるリードの枚数が変わる事によって
それぞれの楽器の音色はかなり変わってきます。
ま、実際には同じバンドネオン といっても個体差もかなりあり
一括りにはしにくいのですが、音の違いについては
実際に色々お聴きになりながら感じられることをオススメ致します。

…なんだかクソ真面目に長々と書いてきてしまいました。
アコーディオンと間違われてしまう宿命を背負った、バンドネオン奏者の恨み節でしょうか。
いえいえ、アコーディオンにもコンサーティーナにもバンドネオンにも、それぞれの魅力や得意分野があると思うのです。
それぞれの違いを知るきっかけになったらと思い、書かせて頂いたのですよ。
決して、そう、決して恨み節ではないんですよ。全くそんなことはないんです。。はい。。。

そして、実際にはまだまだお話ししたいことはあるのです。

バンドネオン最大の謎。超バラバラに並んだボタンのなぜ!?
「142通り」が意味する事とは!?

的な感じで、続きはまたの機会に、今回は最後にとあるタンゴ楽団の動画を貼付けておきましょう。
でもこの動画をお見せすることは、いささか躊躇われます。

「タンゴだっせ〜!」
と思われるか、
「なんかヘンだけど、勢いに引き込まれる。。だめ、もう頭から離れない。。。クセになりそう。。。」
と思われるか、紙一重な演奏です。
でも、ここでは確実にバンドネオンの大きな魅力の一つが見受けられます。
楽器の大きさと重量の程良さ、リードの反応の良さから来る
楽器と身体と音の一体感。
僕のイメージでは、アコーディオンはオートマ車。バンドネオンはマニュアル車です。
演奏者の技量や感情をこれほどまでにダイレクトに反映することは、
バンドネオン最大の魅力だと思います。
その、ある一方に振り切れたスタイルの演奏がここにあります。
ご堪能あれ。

早川 純

早川 純

バンドネオン奏者。作・編曲家。
新しいタンゴを創出するユニットTango-jackと、古典タンゴの再評価を目指すユニットTango Azulを主宰。菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールのメンバー。
現在日本とフランスを行き来しつつ、バンドネオンの新たな可能性を模索している。
2月25日(水)、一時帰国のタイミングで、主宰するTango-jackというバンドのライブを予定している。聴きに来るべし。

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