ある決意( と、重要なお知らせ )

長期滞在者

何度も読みたい本があり、一度きりしか読まない本もある。
だからといって、何度も読みたい本が優れており、一度しか読まない本がダメな本だとは限らないところが不思議だ。

僕が今までに一番回数を読んだ本は、おそらく10回は読んでいるはずの、とあるノンフィクションライターのマルティニーク島への旅行記である。
マルティニークはカリやマラヴォワなどの音楽にまずハマって、その後、そこがラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本に来る前に過ごした島だと知った。この本はハーンのマルティニークでの足取りを追うルポタージュなのだが、なんせ著者のK女史が、マルティニークの暑さ、湿度、過ごしにくさを嘆きまくって悪態ついて泣き言いってるだけの本、なのである。
ハーンは今でも日本人に人気があるから「八雲会」という研究・顕彰団体があって機関誌なども出ているが、この本が出版された時の機関誌を見てみたら書評欄に「彼女は一体何しにマルティニークに行ったのだ?」みたいに酷評されていていた。そりゃそうだろう、僕もそう思った。
しかし、この本が、たしかにひどい本なのだが、気がつけばまた再読してしまう、奇妙な引力を持った本なのだ。彼女のグデグデぶり、軟弱ぶり、不本意ながらの非寛容、そういったものに共感がわくから、ではない。ある種異人種を見るような、著者の心情を対象としたルポタージュとして面白いから、というわけでもなさそうだ。内容に関係なく名文家で文章の流れやウネリが良い、ということもない。もちろん活字組みのデザインが最高だから、とかそういう類の本でもない。
何度も読む理由がわからない。
冗談で言ってるのではなく、実際、誰かに呪いでもかけられているかのようだ。
そして10回読んだからといって、印象が変わるわけでもない。「ひっでぇ本だな」。
そういって毎回本を閉じるわけだが、たぶん、そのうち11回目を読むんだろうな、という不気味な予感がすでにする。

逆に、僕が今まで読んだ小説の中でこれが一番好きだ! と断言できる本は、僕はまだ一度しか読んでいない。一度しか読んでいないのになぜか本が4冊家にあるのだが。
これは、ほめているのだから著者名を隠すこともあるまい。野呂邦暢の『諫早菖蒲日記』である。
評判を聞き、絶版で定価の3倍もプレミアのついていた文庫本を古書店で買って読み、後日彼の全一冊選集に収録されていたのを見つけたのでそれも買い、九州の地元出版社が創業何十周年かの記念で特別出版した単行本を新刊で買い、今回刊行された小説全集も入っている巻を買った。どこからでも読める。どの装幀でも読める。4人集めて朗読会だってできちゃう。
なのに1回しか読んでいない。
最初に読み終えた時のあの猛烈な感動が、少しでも弱まってしまうのが怖いのだ。
もう1回読んでみたら、あれ、そうでもなかった、とか(そんなことはないと思うが)、そういうのが怖くて読めない。もう筋とか忘れかけてるのに、それでも読めない。再読したら絶対に前より深読みができ、一度目には気づかなかった伏線的な描写を発見するとか、そういう楽しみがあるはずなのに。わかっているのに。いくじなしっ。
有史以来日本語で書かれた文芸のうち、まちがいなくトップクラスに美しい作品です。みなさんもぜひ読んでほしい。そして僕が忘れかけてる筋を教えてほしい(笑)。
あ、4冊持ってるけど貸さないよ。自分で入手してくださいね。

なにしろグールドの晩年の『ゴルトベルク変奏曲』が好きすぎて、もう多分千回以上聴いて、CD鳴らさなくても頭のなかでほぼ完璧に響きを再現できるくらいに聴きこんで、ふと「ここまで聴き込んで、もし飽きがきちゃったらどうするんだ」と不安になり、怖くて聴けなくなり、キース・ジャレットやレオンハルトのチェンバロ盤を鳴らしては「グールドはこうだった」と頭のなかで差分を楽しむという、変態的な域にまで達してしまった僕ですから、って、何の自慢なのだ。

(実は以前こういう200字小説を書いたのですが

■変奏■

友人はとあるピアニストのとあるレコードが好きすぎて聴き飽きるのが怖くてここ10年聴いていないのだといい、聴かない代わりにずっと頭の中で鳴らしているのだとうっとりとした表情で言うのだが、十年間彼の頭の中で鳴り続けているその音楽は飽きるのを恐れるがゆえにおそらく変奏を続けているはずで、もし街なかで原曲が流れてきたとしても気づかなかったりしてね、と笑ったら彼は泣きそうな顔で「もう止まらないんだ」と呻いた。
[200字]

・・・なんとモデルは自分だったのでした)

ああ、思えばみみっちい話だ。みみっちいな俺。みみっちいわ。

意を決して読んでみるかな、『諫早菖蒲日記』、もう一回。怖いな。

(以上、さして重要ではない本文、終わり)

SDIM6682

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本文より重要な 「お知らせ」

九州復興支援アートバザール「ANIMART」 開催します

2016 年 5 月 27 日(金)~6 月 8 日(水)
11:00~22:00

カンテ・グランデ中津本店内ギャラリー
大阪市北区中津 3-32-2 アルティスタ中津 B1F
06-6372-0801
http://cantegrande.com/
( ※ 5/30(月)19:00~20:30 は他イベント利用のため展示スペースにはご入場できません。)

anima は生命、mart は市場で、animart。 「元気に快活に」という、音楽用語“animato”も内包します。 関西を中心に全国のものづくりの力を、九州に還元するアートバザールです。

◎本イベントの売上は、本企画の広告宣伝費、展示設営費、梱包資材費など、最低限の必要経費を除いて、全額 を震災義援金として日本赤十字社へ寄付いたします◎
(後日必要経費の用途も開示します)

[ 運営委員 ]

カンテ・グランデ/井上 温
Gallery yolcha/イルボン
写真家/カマウチヒデキ

[ 出品参加 ]

トータス松本(ウルフルズ)
高須光聖(放送作家)
蜷川みほ(女優)
yes!yes!非非(アーティストブランド)
横山雄(デザイナー/イラストレーター)
岩瀬ゆか(画家)
白水麻耶子(画家)
taco(画家)
城下浩伺(画家)
升田学(ハリガネ画家)
JUNICHI (ドローイングアーティスト)
井上温
ナカタアヤコ(ファイバーアート)
村東剛(写真)
林直(写真)
藤原敦(写真)
熊谷聖司(写真)
田中長徳(写真)
赤城耕一(写真)
伊藤公一(写真)
島崎ろでぃー(写真)
那須潔(写真)
宝槻稔(写真)
近重幸哉(写真)
渡部敏哉(写真)
染谷學(写真)
大垣善昭(写真)
小池英文(写真)
中藤毅彦(写真)
萩原義弘(写真)
林和美(写真)
谷口円(写真)
野坂実生(写真)
山本瑞穂(写真)
吹雪大樹(写真)
腐肉狼(写真)
藤田莉江(写真)
石黒興作(写真)
椿久美(写真)
コウガチコリ(写真)
足髙七生子(写真)
伸之助(写真)
遠藤潤(写真)
カマウチヒデキ(写真)
鷹岡のり子(写真)
小野なおみ(写真)
戸澤裕司(写真)
古林希望(画家)
池上夏生(画家)
Hiroshi Matsumoto(画家)
もうりひとみ(画家)
内田京介(アーティスト)
にしおかな(画家)
ひやまちさと(イラストレーター)
井上 和央(イラストレーター)
Henki Leung(イラストレーター)
maruco*candle(キャンドル)
カサハラユーコ(絵画/アクセサリー)
日野ふみこ(革雑貨)
尾柳佳枝(絵描き)
宮井譲(額縁職人)
曽田朋子(造形作家)
ヒラタヨシアキ(造形作家)
kkjk(ぬいぐるみ/アクセサリー)
くうのき[fuuyanm + 日根野太之](絵/写真)
イケダユーコ(イラストレーター)
坂本ミン(造形作家)
PAMOROM(アクセサリー)
フェリシティ(台湾雑貨WEBショップ)
g.カロスキル(韓国雑貨オンラインショップ)
ツダモトシ(画家)
土居真由美(画家)
出口春菜(銅版画)
にしかわりょうた(コラージュ作家)
tipura studio(金物作品)
hei(服飾品ブランド)
スイッチョン先生と「児童発達支援 放課後等児童デイサービスなちゅらる」のこどもたち
saredo(写真/糸/靴下)
勾玉堂
原田恵(木版画)
gallery yolcha

その他、多ジャンル・多業種のアーティスト・団体が多数参加
(敬称略・順不同)

多彩な顔ぶれが集まりました。みなさんどうかご協力ください。よろしくお願いいたします。

HP : http://animart.webcrow.jp
BLOG : http://animartcanteg.blog.fc2.com

[ 総合お問い合わせ ]

アニマート受付
090-3673-0337(gallery yolcha/イルボン)
Email animartcanteg@gmail.com
※ご連絡は各運営委員の SNS でも可能です。