入居者名・記事名・タグで
検索できます。

(私のこの日だけのはてな)

はてなを浮かべる

こんなはてなが浮かぶだなんて
一度たりとも思わなかった
こんなはてなは当たりまえだと
きっと世界は言うでしょうが
   
当たりまえのはてなというのは
いったいどれだけ偉大なのかな
難しいことを考えず
まっさら頭のまんなかで
問いかけたくなるその言葉だけ
浮かべばそれは「あたりまえ」で

「あたりまえ」ほどくだらなくて
くだらないほどに切り捨てられて
切り捨てられてもかけがえなくて
あたりまえに耐えがたい
そんなはてながどこにもいるよ
そんなはてながここにいたのよ

   
    
   
   
   
ねえ、わたしのおじいさん
   
   
   
   
   
IMG_5967

   
   
   
IMG_5974

   
   
   

IMG_5985

   
   
   
IMG_5992
   

   
   
   
IMG_5976
   

   
   
   
IMG_6010
   

   
   
   
IMG_6002
   

   
   
   
IMG_5994
   

   
   
   
   
   
   
ねえおじいさん おじいさん
私の家族のおじいさん
わたしの三倍 おじいさん
いつまでたっても変わらないよね
   
   
   
   
   
   
   IMG_6029
   
IMG_6030
   
IMG_6027
  
   
   
   

   
   

わかばやしまりあ

わかばやしまりあ

描いたり食べたり生きたりしている

Reviewed by
さかいかさ

幼い頃に住んでいた家はもうないし、ばあちゃんもじいちゃんもいなくなってしまった。

住んでいたその家には長い廊下があって、突き当たりには今にも動き出しそうなほどリアルな虎の刺繍絵が掛かっていた。夜トイレに行く時、静まり返った廊下の先でその虎は待っていて、じっとこちらを睨んだ。小さかった僕はそれが怖くて怖くて、虎と目を合わせないよう足先を見ながらそっとそっと歩いたものだ。トイレからの戻りは戻りで、両親と寝ていた部屋のドアの上には何故か般若のお面が掛けられていて、やっぱりじっとこちらを睨んだ。それもまた恐ろしくて、僕はトイレの行き帰りの間ずっとうつむいていた。
何故、あんな怖いものが家の中にあったのだろう。
今、僕が住んでいる家には気に入ったものが溢れてる。自分で買ったものだし、怖くもないし謎もない。でもそれって、つまらないことでもあるのかもしれない。

ばあちゃんはとにかく僕を褒める人で、じいちゃんはものすごく謎な人物だった。

何があっても、ばあちゃんは僕を褒めた。「この子は優しい子だよ」「この子はできる子だよ」「この子は天才だよ」と恥ずかし気もなく僕に言った。僕は優しくもないし、できもしないし、ましてや天才でもないのに。僕がアフロにしてもモヒカンにしても、変わらず褒めた。「この子は変わった子だよ」「この子はおもしろい子だよ」と言って僕の頭をなでた。どうしてあんなに褒めてくれたのだろう。ばあちゃんが褒めてくれるから、どんなヘビーなことがあってもなんとか立っていられたのかもしれない。
すぐ癇癪を起こすじいちゃんは、度々ちゃぶ台を返した。僕たち家族にはその予兆がわかっていたので、じいちゃんが怒りはじめるとおのおの自分の食事を下げた。そしてちゃぶ台にじいちゃんの食事だけが残った状態で、「この野郎!」とちゃぶ台を返した。考えてみれば、僕らが食事を下げるのをじいちゃんは黙って待っていたのだ。ひょっとしたら僕らが食事を下げるから、じいちゃんはちゃぶ台を返していたのかもしれない。じいちゃんは80歳ぐらいの時に、同じ市内の50歳ぐらいの女の人と不倫していた。僕は母親とばあちゃんと一緒に、じいちゃんを尾けたことがある。じいちゃんはチャリで家を出て、近くにある野球場の駐車場に入った。停まっていた1台の車の助手席に乗り込んで、顔が見えないようにシートを倒した。運転席には知らない女の人がいた。じいちゃんを乗せた車はそのまま駐車場を出て、走り去っていった。母親とばあちゃんは「あの女の人は、あんな金もない爺さんと何で会ってるんだか」と言っていたけど、僕にはじいちゃんがやたら格好良く見えた。

ところでこれを書いているすぐ脇で、1歳9ヶ月になった謎の生命体が、僕を指さしている。
「あっ、ぶ〜、あっ、ぶ〜、ぶ〜た、ぶ〜た」と言って、指さしてる。
決して僕のことを豚と言っているわけではない。
「親父の着てるみうらじゅんのTシャツ、すげ〜イイじゃん。今度、オレにも貸してくれよ」とたぶん言っているのだ。
「あっ、あっ、ぽっぽ〜、ぽっぽ〜」
「ところでよ親父。つまるところ人生ってのは行き当たりばったりよ」と言っている。
まったく、とんだませガキだ。

トップへ戻る トップへ戻る トップへ戻る