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布団の中が幸せすぎてこのまま置いていかれるんじゃない?

はてなを浮かべる

n1
いっそ自分からこぼれるべき?

 

 

 
n-7
分断されてるみたいに思う?自分のことなのに?

 

 

 
n-4
発したものの受けとられ方が不安で仕方ない?
(一人歩きさせる勇気がない?)

 

 

 
n-9
ふりかかってくるものを避けるほど意志がないだけ?

 

 

 
n-6
湯気は泣かせ上手なのか?

 

 

 
n
隙間から覗くことをやめないほうがいい?

 

 

 
n-2
いちいち計り直しているから面倒くさがられる?

 

 

 
kobu
たんこぶみたいにふくらんで いつかちゃんと平らにもどる?

 

 

 
n-3
布団の中が幸せすぎてこのまま置いていかれるんじゃない?

 

 

 
n-5
自分が産んだものばかり愛しすぎかな?

 

 

 
n-8
いつもこんがらがっているけどまだまだ時間はあるんだよね?

 
つづきのはてな

  

 

わかばやしまりあ

わかばやしまりあ

描いたり食べたり生きたりしている

Reviewed by
さかいかさ

僕は、はてな師だ。JR中野駅の北口アーケードからちょこっと右にそれ、うねうねと2、3分歩いたところに店を構えている。世の中に師がつく仕事は数あれど、僕の仕事はちょっと毛色が違う。だって僕は何もしない。あれ?いやいや本当に何もしないわけじゃないよ。そりゃ、店を維持するための雑務とかするし、掃除だってするし、あいさつだってする。もちろん息だってしている。じゃない、じゃない。何もしないってのは、仕事としてお客さんに何も提供しないってこと。ほら、仕事って、大概が自分の技術とか特技とか苦労して身につけたものとかを社会や人へ還元するものでしょ。それを僕は何もしないってこと。え?なにそれって、それがはてな師だから。他に似てる仕事ないか?って、う〜ん、そうだなぁ。たとえば占いをしない占い師とか、カウンセリングしないカウンセラーとか、コンサルティングしないコンサルタントとか、お経を読まない坊主とか、とかとか、そういう感じかな。なんだそれ?って、ただの役立たずって?ヒドいなぁ〜僕泣いちゃうなぁ〜。なに?そんなん仕事になるか?って、なるなる!だって、僕ここにいるし、僕、はてな師だし。えっ?わからない。えっ?皆目。じゃあ、ちょっと僕がいつもの感じで仕事してみるから、入ってきて。ほら、入ってきて。客、客!お客さんみたいに入ってきて。そう、そうだよ。

あ、あ゛あ、いらっしゃいませ〜。あ、あ゛あ、喉のちょうし悪いな、5時に予約の、はい、はい、はい、どうぞ〜、こちらにお掛け下さい。え〜と、お客様は、当店は初めてですかね。そうですね。はい、当店は、当店は、はい、予約制で、1時間3,000円ポッキリ、延長はございません。え〜、まずこちらの紙に、本日お客様が聞いて欲しいことを、はい、書いてください。そう、聞いて欲しいことです。何でもいいんですよ。先ほど来たお客様はサルバドール・ダリについて永遠と語っておりましたし、昨日来たお客様は自分の二の腕の柔らかさについてお話しされました。効率のいい歯の磨き方や有意義な電車の待ち方などをお話しするお客様もいらっしゃいます。お客様が書いたことを私が話題として質問しますので、お客様はそれに応え、自由に存分にお話しください。はい、それに私が調子よく相づちを打ち、合いの手を入れ、会話を円滑に進めながら、はい、然るべき時間が来ましたら然るべき場所へ着地するようエスコートいたします。はい、そうです。ここに、はい、書いて下さい。はい、いくつでもかまいません。ただ、お時間の許す限りということで、はい、すいません。次回もしまた来られるようなことがありましたら、はい、事前に書いてきていただけると、はい、より有意義な、はい、お時間を過ごせると思います。で、でですね、始める前にですね、1点だけ注意点と言いますか、ルールがありまして。はい、お客様のお話しした内容の細部を、はい、第三者に伝えるということは、もちろん絶対にしないのですが、はい、これは絶対にいたしません。それに加えてですね、お客様のお話しされることに対して、私が個人的な意見をはさんだり、アドバイスをしたりということもいたしませんので、はい、もちろん会話を円滑に進めるための相づちなどはしますが、あくまで意見をしないという立場をとっておりますので、はい、そこは、はい、すいませんが、ご了承ください。あ、書けましたが、いいですか、では、ちょっと頂戴して、なるほど、なるほど。

「お客様は、この世界の真実を知っているんですね?」

私は、語った。まだ誰も知らないであろう、この世界の本当の姿を。はてな師は、会話の緩急に合わせ手際よく返事をし、私の口がつまづくとそっと語尾を拾い、話の筋がそれないよう優しく手を引いた。それは見事としか言いようがなかった。私の口から出る言葉は活き活きとしながら鋭い明瞭さと柔らかい饒舌さを装備していった。そして1時間が経った時、素晴らしいエンディングと共に白昼堂々と世界の真実が露になった。
気がつくと私はそのまま次の予約を取りつけていた。次は他人の夢の中への入り方について話そう。どうやら私はハマってしまったらしい。楽しみで仕方がない。

と、まぁ、こんな具合だね。これが、はてな師で、僕は、はてな師。わかってくれた?えっ、まだわからないって。お客さん、しょうがないな〜、まったく上手いんだから。それじゃ、お客さんは特別、特別だよ。今なら、1時間2,000円にしちゃう。まあ、ものは試しってやつ。ほらほら、自慢話で全然オーケーだから。お客さん最近してる?自慢話。してないでしょ。なかなかできないでしょ、自慢話って。してって、してって、何でも話していいんだから。さ、ささ、こっち、こっち。

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