当番ノート 第4期
「で、ネジー。ニノが向かった先は本当にこの島であってるのか?」 「おそらく。フェリーにこのような紙切れが落ちていました。最初は子どものイタズラかと思いましたが。」 森田は紙切れをじっと見つめる。そこにはこう書いてある。 アイコー印刷 営業部長 二ノ宮敬二 43歳 「森田刑事。しかしですよ。持ち出しの現行犯で逃亡している男が、こんなものを」 「ちょっと待ってくれ!」 「刑事!」 森田は勢いよくフェリ…
当番ノート 第4期
指で掘る|干上がり|瓦石|あなたは寝なければならない|私を裏切るかもしれません|輪転|今朝は風を感じること|可能な伝送|岩礁|九月|私が見ていたのは|泡沫|だれにでもわかることばをつかいなさい|眩暈|そこにしゃがみ込む|磁場|思考回路|混濁|忘却|置換|すべての拙さ|咽の渇き|相関するのは|微細な|裸眼で滲む|点景|線と面と|無縫|分割する必要はありません|鳥の飛跡は虚空|海猫の亡骸に滲む赤い…
当番ノート 第4期
ルーニィ今年最後のギャラリー企画として愛知県在住の写真家、上野龍展を開催しました。元・即興演奏家の上野さんにちなみ、写真家自身のプロデュースによって、ホンモノの音楽家による演奏会を開催しました。4度開催されたうちの初回は、アルトサックス奏者の坂田明さんでした。 「向かうところ客なし」などとジョークを交えつつも、大きなプロジェクト以外にも、ぼくたちのようなとても小規模な空間でも頻繁に演奏をされていま…
当番ノート 第4期
いま東京を離れ、関西に来ています。 それで自分のパソコンが使えないから、ここにログインするのにもわざわざグーグルのトップページから 「アパートメント」て入れて辿り着くんだけど、「アパ」て入れただけで予測変換の一番上に「アパートメント」が来るんだから やっぱここはすごいな、ていう話じゃなく、「アパ」て入れた時の予測変換の一番上は「アパホテル」だった。 それで少しの間アパホテルのホームページを見てたん…
当番ノート 第4期
緑色は燃えるゴミで オレンジ色が燃えないゴミ もう何年もこの街に住んでいるから、 そんなことは分かっているつもりなんだけど オレンジ色は火の色みたいだっていうふうに思ってしまって 緑色のビニール袋に燃えるゴミを入れるってことに どうしても馴染まない 蒸し暑い昼間の住宅街を一人で歩いていたら、 どの家の玄関先にも緑色の袋が置いてあって 私の進んでいる道路脇に転々とそれが…
当番ノート 第4期
まだ真夏の休日に母と偶然に、本当に偶然にばったりと新宿のドトールで会ってしまい その流れで一日デートした 何回も同じ話を繰り返すし、わたしの知りもしない、母が今親しくしている友人や ずっと過去の同級生の名前をあたかも私まで知っている人のように固有名詞をだして話してくるし 亡き父の話になれば、写真を取り出してあたかもそこにまだ父がいるような感じで 涙ぐむので わたしはというと父に関しては やはり涙…
当番ノート 第4期
旅は続く。 ブエノスアイレスの次はブラジル、ポルトアレグレにやってきた。 南ブラジル最大の都市で大きな港町である。都市名は「陽気な港町」という意味。 18世紀中ごろにポルトガル人が移住したのが起源でのちにヨーロッパからの移民を中心に発展。 公用語はポルトガル語。ありがとうはオブリガーダ。 深夜でも鳥たちが歌っている。雨の中でも。 公園の緑がとても美しい。やはりアマゾンがある国なんだな。 到着した日…
当番ノート 第4期
「確かに結婚出来ればいいかなあって思ってたわ。でもそれは学生時代の話。なんかあまりにも呆気なくて、さっきの結婚式。」 「それはあっこが合同結婚式に慣れていないからだよ。渋沢ちゃん?だっけ。も、自分に未来について考える貴重な時間になったんじゃないかな。だって彼女、その前に離婚式にも参列しているわけだろ。」 武智にとっては優雅なひとときだった。 「家庭か。ちょうどよい二人の距離感だ。これが商店街に机を…
当番ノート 第4期
むこうまでぎつしりと すいれんが さいていた わたしはあなたのことを おもひだす さいているいちめんの わたしのほうの てまえを ひとつ たひせつなことは ひとすじ つながつている いとのように たれにも ふさわしくあるように きょくせん しながら つながって いとのようだから あまりたれにもきつかれないように それでもしつかりと つながつていて ふたしか とか たりない とか かんじ…
当番ノート 第4期
ぼくが初めて写真展をやったのは、1991年の夏、19歳の頃で、東京・有楽町にあった三菱フォトギャラリーと、大阪西天満のギャラリークオーレというところです。大学の同級生だった小野里昌哉君と坂根広隆君の3人でスペースをシェアして、それぞれ20枚くらいのプリントを並べました。 応援してくれたのは、通っていた大学の当時非常勤講師だった田中仁先生で、今は別の大学で教鞭をとられていますが、未だにおつきあいをさ…
当番ノート 第4期
締め切りというのが嫌いなので、毎週毎週土曜日にここを更新しなければ、と考えるのが憂鬱なのだけど、いざそういった憂鬱も今日を入れてあと3回しかないのか、と考えるとさみしい気持ちにもなってくる。 そう思ってふとカレンダーを見てみると、今月はよりによって土曜日が5回あるのか…。 という事はまだあと4回もここで日記を書く事になるので、まあたいしてさみしくもなくなり、そのぶんうっとおしさが勝ってきた。 外で…
当番ノート 第4期
夢の中で爪切りをなくした 別に大切にしていたわけでもないし、 大切な人からの贈り物でもなくて。 それなのに夢の中の私はたいそう不安がって 身振りなんか考えずに落ち込んでいた 喉が乾いて目が覚めた 夢を引きずって不安定な私は また目を閉じる、真夜中に。 真っ暗になった私だけの世界で、 主人公もヒロインもぜんぶぜんぶ私の世界で。考える 夜が嫌いだ 毎日必ず夜がや…