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2F/当番ノート

燃えるごみの夏の日

当番ノート 第4期

 
 
緑色は燃えるゴミで

オレンジ色が燃えないゴミ
  
 
 
もう何年もこの街に住んでいるから、

そんなことは分かっているつもりなんだけど

オレンジ色は火の色みたいだっていうふうに思ってしまって

緑色のビニール袋に燃えるゴミを入れるってことに

どうしても馴染まない
 
 
蒸し暑い昼間の住宅街を一人で歩いていたら、

どの家の玄関先にも緑色の袋が置いてあって

私の進んでいる道路脇に転々とそれが置いてあって、

遠くの蜃気楼の方までそれが続いている。

クリスマスのイルミネーションまでとは到底言えないけれど、

なんだか街ぐるみでお祭りの準備をしているような光景に思えて

すこしだけ楽しくなった。
 
 
けど、この袋はもうじき焼却炉に運ばれる。
 
 
真っ黒に日焼けしたおじさんの二人組かなんかに

軽々持ち上げられて、

トラックに積まれて運ばれる

袋の中身なんて一切気にしないで、

とっとと運ばれて燃やされる。
 
 
楽しい気分もあっという間に終わりを告げ、

私はしんみりて道を進む
 
 
まだ玄関先に緑のビニール袋が出ていない家の前を通り過ぎた時、

ちょうど玄関からおばさんが出てきた。

手にはゴミでパンパンになった緑色の袋を持っていて、

私は立ち止まってしまった。

おばさんは玄関先の門まできて、

門の上から緑色の袋を落として、すぐに家の中に消えていった

別になんてことないんだけど、

すっかり緑色の袋に肩入れしてしまった今の私には、

あのおばさんが悪者に見えた。

ごめんね、おばさん。
 
 
あっさりと玄関先に捨てられたゴミ袋

なんとなく袋の中身が気になったけど、

まさか他人の家のゴミを漁るわけにもいかず、

私はまた歩き出した
 
 
ゴミに思いを馳せるとは、

私の夏は今年もヒマだな。
  
私の夏もこうして終わって、

だらだら年をとって、

いつかは

そりゃそうだけど死んでしまう。
 
 
私もいつか火葬場に運ばれるのか。

人間も燃えるゴミと同じだな
 
 
私がおばあちゃんになる頃には、

緑色に燃えるゴミを入れることに慣れるだろうか。

慣れなくても、

その時がきたら私も燃えちゃうんだよなあ。
 
 
 
遠くから青いトラックがやってくるのが見える

ゴミ収集車だったら嫌だな
 
 
 
私は早足で、

曲がり角を探して歩く
 
 
 

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