長期滞在者
ほんの少し前まで、毎日電車に揺られながら仕事にむかうっていうことが、自分にはできないと思っていた。ずっと、ずっと、自分には普通の人が当たり前にやっていることができないんだって、なにかが欠落しているんだって思っていた。だけど、気づけば今では、無理だと思っていたことが自分の当たり前になっている。今の自分には、ほんの少し前までのわたしの中にあった劣等感がない。その劣等感がどこにいってしまったのかはわから…
長期滞在者
日日 さめてゆめみる 夢は幻覚であり 白日夢は妄想 蜃気楼は光の屈折現象 物語は空洞で 共有されない記憶域はすべからく錯覚で あるのだろうか 依怙贔屓された視覚におんぶにだっこ ないものねだりの聴覚に平行覚はお手上げ 怠慢な体性感覚に直情的な内臓感覚 統合と乖離をくりかえし 過ぎる よぎる 湧き上がる わきあがる 穿つ うがつ 翳る かげる 煌めく きらめく 導きだされる幾つかの世界を行き来して…
当番ノート 第18期
2014年12月22日『夜のみんなは』と, 2014年12月29日『とれた左手で腕枕』の,ふたりのおはなし もうすぐ2月がやってくる ほかの月よりも少しだけ短い月 気を抜いていると,うっかり春がやってきてしまう そういうふうに,意識して時間においていかれないようにしたいのに 街にはイルミネーションがまだ,ちらほらと光っている 急ぎたいのかゆっくり進みたい…
当番ノート 第18期
こんにちは。今日の東京は、日差しがほんとーうに気持ち良い快晴です。 ご縁あって参加させていただいたアパートメントさんでの連載も最後となりました。 初めましての方にむけて自分のつくっているものを紹介させてもらうって、やっぱりとても緊張するし、書いてみてはなんだか違うぞ、と直すことの繰り返し。 でもこうやって改めて文章と写真で振り返るっていう作業をできて、しみじみと思い返し発見するところもあり。 とて…
当番ノート 第18期
真っ白い壁に、友人2人 白い壁をバックに撮るのが好き 絵を描くときにも、背景にあまり色つけないな 友人の絵の個展へ、花を選んで持っていく 静物画の展示。スニーカーや、ヘアドライヤーや、花瓶、日用品などの。 そのこの絵は、2本の足でしっかり地面にたっている。 それ以上でも以下でもないものがそこには描かれていて、 わたしはいつも、見ると、 自分がそのままで、ここにいてもいい、といわれてる気がする。 も…
当番ノート 第18期
こんばんは! ついに当番ノート最終回となりました! なんだかさみしいですが、 最後はスペシャルなレシピをお届けいたします。 それではいってみましょう! 【作り方】 ①.まずは、広めの場所を確保して下さい。 危険がともなうため、人のいない場所を選びましょう。 ②.穴を掘ります。 ③.あらゆるスポーツ、青・赤・黄色のものを 穴の中にぶち込みます。 ④.ばくだんを敷…
当番ノート 第18期
皆さんこんにちは、バンドネオン奏者の早川純です。 いよいよ今回が最後の記事となります。 これで連載が終わるのかと思うと、〆切に追われる感覚から解放されて、 ホッとするような ちょっと寂しいような …いや、実際はかなりホッとします(笑) 僕としては、この「アパートメント」連載を通して これまでタンゴもバンドネオンも殆ど知らなかったような人達に この機会に少しでもその実態を知ってもらえる事ができたなら…
長期滞在者
年末にお節を作りました。いつもは帰省するし、テキトー(がんばらない)だったのですが、義理の母から作ってごらんあなたに全部任せるからと言われました。というわけで、年賀状を書きながら、しかも羊の目によりによって蛍光ピンクを使ったものだから印刷で抜けてしまい、白目になってしまった目を入れながらであります。 最初に作ったのは金柑の甘露煮。爪楊枝で突いてへそを取り、切れ目を入れて、二度煮こぼした後に、種を取…
当番ノート 第18期
私が島根への移住を決意した昨年の春ごろ「フランスチーズ鑑評騎士の会」の専務理事である村山重信(通称 ムッシュムー)さんが講師を務めるチーズ勉強会に参加したことがあった。 ムッシュは、勉強会が始まるなり教科書を閉じて、私たちにこう言った。 「あなたたちが今から学ぶのは知識ではありません。チーズに馴染みのない家族や友人に、チーズの面白さや美味しさを伝えるためのストーリーです。どう伝え、なにを想像させる…
当番ノート 第18期
初めてインドに来ました。 食あたりになるとか、嘘をつかれるとか、散々な経験談をたくさん聞いていたのですが、 比較的治安の良い、西洋色も残る南インドだからか、 ちょっとルーズだけど愛情にあふれる現地の方々に助けられつつ、平和に過ごしています。 インドでは非常に多様な人が住み、それぞれの宗教も違う。 人口の30〜40%ほどがベジタリアンであるが故に、 スーパーマーケットで売られているものも、レストラン…
長期滞在者
ひと頃、岡本綺堂の怪談集に夢中になった。 光文社文庫から出ているものを何冊か買ってきて読み出したら、これがベラボーに面白い。 だが面白いのとは別に、違和感も感じた。 「何これ、リライトものなの?」 文体が新しすぎるのである。 『半七捕物帳』を書いているという印象から維新より前の生まれかと思ったが、調べてみたら岡本綺堂は明治五年生まれだ。 江戸の人という思い込みもあったので余計になのかもしれないが、…
当番ノート 第18期
2014年12月15日『世界』の,つづき 子どものころ, 親戚のお姉さんやお兄さんたちのことがとても好きで だけど、めったに会えなくて 親戚の集まりや、お正月やなんかじゃないとそのチャンスは なかった ねえねえ、きょうお姉ちゃんたち来るかなあ。と、 しつこく母親の袖をひっぱって、 うざったく思われたりしていた たくさん遊んでもらった思い出も、 そ…