長期滞在者
関西に生まれたのでアンチ・ジャイアンツなのはデフォルトだとしても、小学生の頃から関西標準の阪神タイガースにも目もくれず、ロッテオリオンズ(当時)のキャップをかぶり、長じては南海ホークス(当時)のファンになった。 ソニーのウォークマン(もちろんカセットテープの時代だ)ではなくAiwaやAkai製を愛用し、大人になっても電化製品はすべてナショナル(当時)を避けた。 とにかく「その世界で一番」というもの…
幻覚にカーテンコール
ⅴ 姿なき販売所 「あの、牛乳が届いてなかったんですが」 返答はない。少し音量を上げる。 「ごめんください」 誰かがそばにいる気配すらない。 翻訳機の音量を最大に設定して、半開きになって北北西の風に揺れている鉄扉の向こうへ呼びかける。 「牛乳を、取りに、来ました! 十字路の、角の、診療所の、者です!」 一語ずつ区切って呼びかけた“音”は、風鈴に似た余韻を残して消えた。やっぱり返事は返ってこ…
当番ノート 第20期
文芸書の編集者だった頃は、書棚に並ぶ紙の書籍のほとんどが現代作家の小説だった時期もある。しかし、かさばるコミックを手始めに少しずつ電子版で買い直し、著名な人気作家の傑作ベストセラーも順番にKindle端末へ吸い込まれていくと、ラインナップがずいぶん様変わりした。今、紙で残った蔵書には「作家でない人」が書いた少部数の本の占める割合がかなり高い。 それで気づいたのだが、私は写真家の書いた文章が好き…
当番ノート 第20期
さて、スウェーデンの夏至祭から10日が過ぎ そろそろ移動かな、と思っていたところに チェコの友達からメッセージが。 元気?もうすぐ日本に帰るの?ぼくも今、旅行中。プラハの神学校に来てるんだ、会えたらいいね、と。 行くと決めたらすぐに航空券を予約して、滞在先からバスでストックホルム中央駅へ行き、アーランダエクスプレスに乗り換えて飛行場へ。 プラハ郊外の空港までAlešが迎えに来てくれて、約1年ぶりに…
長期滞在者
ぼくの仕事はギャラリーディレクターですが、今までの仕事の中で相当な割合を写真作家を志す方々との関わりに時間を割いてきたと思います。学校での講義や講評、ワークショップ、ぼくのギャラリー以外でも比較的キャリアの浅い人を対象にしたイベントに呼ばれることも多いことからも、周囲の写真業界の皆様からも同じようにぼくの仕事を観ておられるのかなと思います。そういった皆様と時間を共にさせていただきながらしばしば感じ…
当番ノート 第20期
6-1 鉄板に、油を流す。全体に行き渡って少し余るくらいの量が望ましい。でもホットプレートだと、どうかな。フライパンとは勝手が違う。羽付きに、出来るかどうか。 油が熱くなるのを待って餃子を並べる。このじゅわあという音が佐竹は好きだ。触れた点からちゅっと焼け、面が油に浸される。ちゅっじゅわあ。ちゅっじゅわあ。の心地よい連続。この「ちゅっ」もいい。出来るだけ隙間なく、最短時間で並べたい。初…
当番ノート 第20期
冬は寒ぶり、春は鰯、夏は本マグロ、秋はカマス。。。 水揚げ魚種をあげたらキリがない。 で、ときどき鯨もあがっちゃう氷見ですが。。。 そんな、魚処・氷見ではそんなブランド魚っぽいものだけじゃなく、もちろん雑魚も山盛りてんこ盛り。 そんな雑魚でも美味しくありがたく食べる知恵が氷見の中に色々あります。 1つは、カブス汁。(カブス、っていうのは、捕ったばかりの魚の中から、網元さんが漁師さんに対して、漁師さ…
Mais ou Menos
_______________ Pちゃん 今日は久々の休みでした。ここ数ヶ月すごく忙しくて、最近は身も心も疲れていると感じます。仕事に対するモチベーションが下がっていることが、とてもしんどいです。でも、それでも日はまたのぼるし、時間は過ぎる。日々、家と職場の往復。世界中の大人たちの毎日は、こんな日々なのでしょうか。 悲しいと思うことが多い反面、家に戻ってきたときの安心感はひとしお。庭のジャスミンが…
当番ノート 第20期
栗の木のはなし 私は栗の木でした。 私の目の前には広い平地があってその眺めは抜群です。 首を通る清らかな水と顔にあたる柔らかい風はそのおかげです。 私の左右には、花が咲く名の知らない木、その香りで花歌が止まりませんでした。 私は動く事ができませんが、毎朝私をくすぐる小鳥がやってきます。 小鳥は歌い、私は踊り、毎日のそれが日課です。 私の葉を食べる虫たちは、食欲旺盛でまるで大地の母のような気分を味わ…
the power sink
今回も意味のない絵を載せる。見て貰えると嬉しいです。それではよろしくお願いします! グルグルしている。気分沈む 公園。植物や水がある 僕は頭にパイプを固定して、手で持ってグリグリしているので、まともに歩けない。さらに他の人にもグリグリしてもらっているので、もう全然まともに動けないんだよ。手を離せばいいと仰る方もいるだろうが、なんでか手を離すのはとっても不安でグリグリする…
長期滞在者
1800年、ウィリアム・ハーシェルは、太陽の光をプリズムに通し(100年前にニュートンが行った実験と同じように)七色のスペクトルに分けました。そして、七色それぞれの温度を測ってみました。紫、青、緑、と徐々に温度が上がり、一番端の赤色の光が最も高い温度を示しました。ハーシェルは、なんとなしに赤色のさらに外側、目に見える光のない部分の温度を測ってみました。なんと、その場所は目に見えるどの色の光よりも高…