長期滞在者
都心のあるホテルのラウンジの一角とか、大きなタワービルのエントランスに、写真集を含むアートブックがこれでもかと詰め込まれた棚が、空間装飾の一環として使われている場面を時々見かけます。あるホテルのそれは、本の選定から棚に収まる位置に至るまでデザイナーさんが、全部決めているのだそうです。ちょうど新人の従業員研修の場面に出くわして、先輩社員がそういう風に説明をしていました。主に、海外のファッションカメラ…
当番ノート 第24期
父ちゃんと母ちゃんの馴れ初めの話が好きで、友達にも今まで何度か話してきた。 沖縄本島の北部にある今帰仁村(方言では「やんばる」ともいう)で10人兄弟(5男5女)の七番目、三男として生まれた父ちゃんは、昔から勉強嫌いで、仲間とやんちゃばかりしていたそうだ。他の兄弟はマジメな人が多く、大学を出て、地元の銀行に勤めたり、学校の校長になった者もいるが、父ちゃんは、高校を出たらすぐに、家を飛び出して、土方仕…
Mais ou Menos
________________________ DEAR : Pちゃん こんにちは。今日はすごく静かな日です。親知らずの抜歯入院をしてから、結構バタバタしていて、家の中が少しごちゃごちゃしていたから、今日はずっと朝から掃除をしたり、やりそびれていた細々としたことをやっていました。Pに頼まれていた荷物の準備も終わり、この手紙を書いたら、郵便局に行きます。 12月って、ほんとうに時間が過ぎるのがはや…
当番ノート 第24期
好きなものは何?って訊かれたとき、京都って答えるようになったのはおそらく彼の影響だろう。 始発で東京駅を出発し、二時間ちょっとで京都駅についてしまう。 「女の一人旅なんて素敵ね」なんて会社の先輩に言われたけど、忙しい夏のこの時期に有休で三連休を取った私に対する皮肉の意味も込められてる気がした。女の一人旅。 荷物は、リュックの中に入れた文庫本、財布、銀塩のかわいいカメラ、行きたい場所を記載したメモだ…
当番ノート 第24期
雅楽をご存知でしょうか?雅楽は中国大陸、朝鮮半島から渡ってきた千数百年に及ぶ日本最古の音楽で「世界最古のオーケストラ」と言われています。面白いのは複数の弦楽器、管楽器、打楽器によるオーケストラ編成であるにも関わらず指揮者がいないということです。西洋音楽的な主役による絶対的な統括力によって推進するのではなく、各奏者の阿吽の呼吸によって合奏されるというのは非常に日本的な姿勢のように思われます。 雅楽を…
the power sink
新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 今月も絵を載せます。ではよろしくお願いします! 根菜を運ぼう シワシワの中で胸を張る人 四つ葉のクローバー 太陽と花 形の良いブーメランのような物を舐める猿に似た人 頭から何かが発散されたんだ 雑巾を絞る人 ほとんど何もし…
にゃんともはや!のねこばなし
ロゼッタは、水の中の階段をおりていきました。ガラスがわれないように気をつけて、そろり、そろりとおりていくと、ドアに行きつきました。そこは、ネコの家の入り口でした。 (中略) 入ったところは、ろうかになっていて、そこでは、ほかの子ネコたちが、ほうきで床をはいたり、かべのクモの巣をはらったりしていました。 イタリアの昔話『ネコの家に行った女の子』より イタリアの昔話です。 (あらすじ) むかし、ロゼッ…
当番ノート 第24期
ラジオDJとしてデビューした時から、40代になったら本格的に朗読がやりたいと思っていた。 高校生の時、NHK杯全国高校放送コンクールの朗読部門に挑戦した。 放送部の顧問の先生と何度も練習をしたが、コンクール当日はあまりの緊張で上手くできなかった。 今でもキリキリ痛むくらいの記憶。 その時点で朗読がイヤになってもおかしくはないのだが、 何故か私は物語を声に出して読むことが好きだった。 FM802でデ…
当番ノート 第24期
歌舞伎町の区役所通りを新大久保方面に少し進むと、左手に風林会館というビルがある。風林会館は、新宿歌舞伎町の中でもとりわけ付近のアウトロー密度が高い事で有名な総合レジャービルだ。1990年代の危険な歌舞伎町のイメージの最先端にあった場所で、1階にある喫茶「パリジェンヌ」は暴力団関係者による会合が頻繁にあったり、銃撃事件が多発するなど伝説的な喫茶店として名を轟かせていた。 その向かいに思い出の抜け道と…
Slow times
あたらしい 家が とおくに 見える。 みちは うねりながら つづいてる。 ゆっくりと、たまに立ち止まり、けしきを たのしむこと。 そとのくうきは つめたくて きれいだ。 たくさん すいこもう。 ーーーーーーーーーーーーーー
当番ノート 第24期
大きなチャイムが12時を告げた。 僕は勉強をしていた手をとめ、顔をあげると同時に、彼女のくっきりした二重の瞳を捉えていた。お互いの目が合った。いつもと変わらず。その瞬間に目が合うことを僕達はもう既にわかっていた。 僕と彼女は図書館の自習室にいた。そこは、四人掛用の木製テーブルが計八台あり、休日は受験生や読書をしにくるお年寄りで、すぐに席は埋まる。ただ、その日はいつもと違って、ちらほらと空席が目立っ…
当番ノート 第24期
かつてこの国には『FADER』という音楽雑誌があった。。というわけで今回はこの音楽雑誌FADER編集発行人でもあった佐々木敦さんの著書を取り上げてぜひ紹介したいなと思います。自分の知る限りこれまでご紹介してきた音楽含めたこの周辺の分野(とりわけインプロヴィゼーションとサウンドアート)について同時代性のある内容を日本で初めて書かれた方だと思いますし、自分にとっても影響は大きく、フリーインプロビゼーシ…