当番ノート 第56期
5 凪子のブラジャー わたしは凪子の胸を締め付ける。凪子の、大きくも小さくもない胸を。そう。凪子の胸は大きくも小さくもない。エロいとか、デカいとかいうわけでもなく、言うなれば、カワイイ、という感じだろうか。凪子の胸はCカップで、真っ白で、やわらかい。総じてカワイイ。 凪子の胸を締め付けているとき、わたしは、凪子を守っている気分になる。彼女は世の中のいろいろなものから狙われていて(特に、男か…
当番ノート 第56期
モネは、私が手をひらひらさせるといつも嬉しそうにしっぽを振り、手の下にやってくる。そのまま腰やお尻、首を撫でていると、体をくねくねさせ、猫のように私の足に体を擦り付けてくる。いい子、いい子、可愛いね、と言いながら、座り込んで背中を撫でてやると、モネは私に背中を向けて足の間に座りこみ、背中のマッサージを要求する。そのまま念入りに首から背中にかけて、皮膚を軽くつまむように撫でてあげていると、目をとろん…
長期滞在者
先日香川県の地方都市に出張した。 高松から電車で1時間半ほどするそのエリアにはビジネスホテルが無く、民宿に泊まることにした。宿は寺院の裏手にあり、主にお遍路さんの際に利用される宿であった。その宿では、まるで1年分の疲れを洗い流せたかのような落ち着いた時間を過ごすことができた。 無事出張を終えた後、帰りに高松で一泊し、男木島で昼寝をし、夕方のフェリー便で実家の神戸まで帰った。 その後、神戸の実家で1…
当番ノート 第56期
毎朝、起きたら「知っている天井」がある。一方で、下に広がっているのは「知らない地面」。知らない、というか、毎日変わり続ける「地面」がある。今日の地面も、明日の地面も、私たちはまだ知らない。 そんな地面に現れる、私たちの想像できる範囲を逸脱した「使徒」の存在。地面に”襲来”する「使徒」こそが今回のテーマである。 ハイ、また何を言っているのか全然分からないので丁〜寧〜に掘り下げる。いつもス…
長期滞在者
四十路を迎えたら、和装で日々を過ごしたい。 ――いつごろからから、私はぼんやりと夢に見ていた。 なぜ四十路なのか。20代の私には和装がとても敷居が高いものに思えた。30代の一時期、アルバイト先で習った記憶を頼りに着付け、和服を普段着にしていたのだが、身心の健康を喪失したことによりフェイドアウト。そして11年前、まだ乳児であった息子と共に、神奈川県から帰郷した当時の私が35歳、「まあ40を迎えるころ…
当番ノート 第56期
4 凪子のコンタクト 僕の見ている世界は、要するに、凪子が見ている世界だ。それ以上でも、それ以下でもない。だって僕は、凪子のコンタクトなのだから。凪子が朝、僕を目に入れて、夜、外すまで、僕はずっと、凪子の世界を見ている。 凪子は美しいけれど、彼女の見ている世界は、何もかも美しいわけではない。汚いものもたくさん見る。道端に吐き捨ててあるガムだったり、裏路地を埋め尽くすゴミだったり、そのゴミに…
当番ノート 第56期
今日は朝から雨が降っている。私は雨の日がとても苦手だ。重くどんよりした空気が体の中に入り込み、体がだるくて仕方がない。まるで自分が、緩く絞った水の滴る雑巾になったよう。体の痛みや頭痛もいつもの3割増し。カーテンからちらりと見える灰色の空は私の気分も曇らせて、頭がいつもよりずっと働かない。今、この行まで書くのにも、何度も何度も書いたり消したりを繰り返している。 この病を患ってから、雨の日に限らず、い…
管理人だより
アパートメントの管理人であった鈴木悠平氏の加害行為について、把握してからアパートメントとしての対応を進めていますが(こちらをご確認ください)、こちらで管理人の小沼の考えを書かせていただきます。また、アパートメントの立ち上げ人であるアマヤドリ氏が、今回の件と、1年前にアパートメントのクラウドファンディングで起こったことについて書かれています(こちらをご確認ください)。こちらについても説明させていただ…
長期滞在者
JR大正駅から南へ南へひたすら南下する。4kmほど歩いて南恩加島という地名を通過すると、木津川運河の先に船町の製鋼所の威容が見えてくる。この風景が好きで、昔からよく大正区を歩いた。バスも走っているけれど、そういえば乗ったこともないな。製鋼所を見てまた大正駅に引き返すか、大運橋の交差点を東に曲がって地上33mの大ループ橋・千本松大橋を渡り、木津川を越えて南津守の方へ歩くか。最近は自転車で行くから大し…
長期滞在者
その色は、私が初めて見た色だった。 新月の夜、漆黒の夜空に点在する無数の星を見上げ続けていると、次第に星が遠ざかり、東の空にこれまで見たことがない、マゼンタのグラデーションが輝き始めた。 飛び出した。身体よりも先に、心が波打ち際を走っていた。目の前に広がる日本海はどこまでも澄んでいた。私が立っている足元は、翡翠が打ち寄せる浜辺だった。 あの日、私が見た、始まりの日の出。それは、全ての混沌から解放し…
長期滞在者
アイデアはいつも泉のように、こんこんと湧き出てくるもので、それは決して枯れることはない。ずっと昔、写真家のイモジン・カニンハムについての研究をしていた頃に、アメリカから寄せられた資料の中に入っていた言葉はとても印象的です。なぜなら彼女は大学生の頃に初めて写真機というものに出会い、キャンパスの裏山でセルフポートレートを撮って以来、93歳で亡くなる直前まで、70年以上にわたり常に新しいことにチャレンジ…
当番ノート 第56期
「紺野純子」という昭和アイドルを知っているだろうか。 2期が始まった「ゾンビランドサガR」に登場するゾンビィアイドルである。「ここの純子ちゃんのイケボ興奮する」というスラングそのまんまに、録画した1話を何度も巻き戻し「粘っていこう Never give up again」と歌っている箇所をリプレイしているのは、地面の変態・フチダフチコである。 さて、いつも「エヴァ」だの「サガ」だの脈絡のない話から…