当番ノート 第61期
アパートメントで連載をさせてもらって、怪談をひとつも話したことのない友人から連絡を貰いました。 「こういうのすき。わたしも変な体験した家があること思い出しちゃった」 そうして聞かせてもらったおはなしです。 あやちゃんは、お家の事情でお引越しを10回以上経験しています。そのアパートには、あやちゃんが二十歳から三年間ほど、お母さんと妹さんと三人で暮らしていました。 あやちゃんがそのアパートで暮らし始め…
当番ノート 第61期
滝薫というアカウントは、趣味で短歌を作っていたのをエッセイ投稿サイト用にしつらえたもので、年月にすると結構長い付き合いになる。生活力や経済力が全くないのを見ないふりをして、文章で食っていくのを夢見ていた月日がそっくりそのまま保存されている。 今の私は、ライターになりたいと思っていない。関心もあまりない。というと、負け惜しみのようで嫌だが事実なのだから仕方ない。しかし、出涸らしのように未練だけは一丁…
長期滞在者
1997年8月30日。インディーズ時代から大好きなバンドが初めて日本武道館でワンマンライブを行った。ずっと日本武道館の実現を応援して、彼らの夢が現実になったその夜は胸がいっぱいだった。 同時に、自分がまだ果たせていない私の夢を必ず叶えようと思ったその帰り道、まだ持ち始めたばかりの携帯電話が鳴った。電話から伝わってくる声はこう告げた。「大阪に来ませんか?」と。 2022年3月27日。ネモフィラの青い…
長期滞在者
「今度、奥多摩の宿坊行こうよ」と久々にYからグループLINEに連絡があり、高崎在住のTも含めた3人で宿坊に泊ることになった。 遠い先の予定を決めることがもともと苦手だったが、気心の知れた大学時代の友人なので、あまりプレッシャーとなることもなく当日を迎えられた。 普段、奥多摩方面に行く機会がなかなか無いので、待ち合わせ時間の前に、拝島に住んでいる大学時代のサークルの後輩Kと久しぶりに朝会うことにした…
当番ノート 第61期
今回はフィクションだと思ってお読み下さい。自分でも信じられないことも多く、まとめた事がない話をしてみます。 きっかけは、数年前の夏でした。 我が家での変な現象もスパートをかけるように日に五回六回と回数を増やしており、それを毎日のように配信で「今日はこんなことがあって〜」としゃべくり倒していた頃。とある人から連絡を頂きました。 お世話になっている酒場の先輩からの連絡で、その先輩が「オオタケさんに伝え…
当番ノート 第61期
チルな姿をマッチングアプリで設定してるやつはろくでもない。これは経験から形成された偏見だが、映えを狙ってSNSに投稿こそしないもののシーシャに行くのはめちゃくちゃ好きだ。いわゆる水タバコというもので、コロナ前は友人が働く専門店に結構な頻度で通っていた。 コロナ禍に突入してからは、感染者数を見ながらペースを減らし、おそるおそる行ったり諦めたりしていた。シーシャ屋ではマスクをしている人はいない。当たり…
長期滞在者
まずは修行僧2月分から何枚か。 ・・・・・・ 四六時中カメラを持って写真を撮る人間であるから、僕はそういう部分ではマメな性格であるといえる。写真というのは撮るばかりではなく、選び、編むことに膨大な時間を要する。マメでないとできない。けれども、それと相殺するように、僕は不精な部分はかなり不精で済ますことが多い。 僕と同じ職場の人は僕が年がら年中同じスタンドカラーの黒シャツを着ていることを知っている。…
当番ノート 第61期
わたしが電話で友人に怪談を話していると必ず言われるのが「あなたが怖い話し始めてから、バン、と壁を叩く音がする」という事です。のめり込んで話し続けてしまう事もしばしば、話を聞き終えた友人は口を揃えて 「話も怖いけど、それより壁を叩く音がバンバンバンバンと激しくなってる今が一番怖い」 と言います。今、バンバンって音、聞こえてないですよね? こんばんは、オオタケです。今日は聞かせていただいた「アパートメ…
当番ノート 第61期
元来、怠惰な性質を持った人間だということに気付きつつある。病前性格を考えても、勤勉さからは程遠いようなサボり魔だったのに、私は自分のことをできるやつだと思っていたらしい。実際、躁状態にはキマってしまうのでなんでも軽くこなせる。サボった分を爆上がりの一時的なエネルギーによって補ってきた人生だった。 しかし、躁状態をコントロールすることを覚え、高揚感に身を任せることがなくなった今、一夜漬けによって定期…
当番ノート 第61期
我が家の同居人、妖怪カワウソの話の続きです。カワウソちゃん二回目の登場は、「怖いな」と思う体験でした。 とある夜。まだ22時前に、夫がリビングでうとうと寝始めました。平日ど真ん中だし、23時ごろになったら起こして寝室に移動させよう、そう思ってそのままスヤスヤ寝ている夫を眺めながら家事をしていました。 22時半、夫が自分から目を覚ましました。「ん〜…ごめん俺、話してる途中で寝てもうたな、ごめんな〜」…
Do farmers in the dark
今回は小説が書きたくて、平和な世界でピッケル型固形コニャックが当面のあいだずっと手に入り続けている世にも幸運な男のファンタジーを書きました。読む人に徒労と退屈をすごく与える文章になっています。ではよろしくお願いします! セルジィ、ある一日 おい、セルジィをとってくれ。セルジィを!(セルジィ=ピッケル型固形コニャックの事) 今日もまたバッポスの旦那は妻のベルンパスに言った。 バッポスは禿げて太った、…
当番ノート 第61期
ボディポジティブやルッキズムに関心が高い人と関わっていることが多い。一方、昨今の私はそんな美徳をかなぐり捨てていて、太っていておしゃれではない自分を否定も肯定もできないという曖昧な立場にいる。 本当は、ボディラインを強調したり鎖骨とかカリっとした膝小僧とか出したりしたい。しかし今の私は贅肉が多すぎる体型で、チープでカジュアルな服ばかり着ている反動と、まだ若い女枠で居続けたいというあがきがもたらした…