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2F/当番ノート

才能

当番ノート 第2期

僕に写真の才能もセンスもないと思う。

29で写真を撮り始めて12年目。
一応写真を撮る事を生業にはできているし他人から見ればプロなのだろうけど、そういう事ではない。
もちろん常に行動してきた結果ではあるけど、様々な人との出会いときっかけとチャンスがあって今でも写真を撮り続けていられているけどそれは僕に写真を撮るセンスや才能があったわけではなく単に「継続は力なり」的なものだと思う。

現在いくつかのプロジェクトを同時に進めているが各プロジェクトもテーマが様々なので切り替えにもなる。
ただ好きな事を撮り続けるにはお金が必要で、特にドキュメンタリーというジャンルは1つのストーリーを発表するまでに時間がかかる。
収入と個人的なプロジェクト。
この2つのバランスが難しいしこの事に対しては悩まされている。
先日知り合いの編集者と話をしていてそのバランスについて話をした。
すると彼女は「人が今何を求めているのか?という事を念頭に置いて写真のテーマを決めたらどう?」と言った。
確かにそうすれば発表はしやすいと思うし出版物にしても売れる可能性はある。
でも僕は別に収入を増やしたいと言ってるわけではないし、表現したい人間が他人に媚びて表現してたら本末転倒だ。
多分僕はどうしたら写真を使った表現を持続させていけるかという事について話をしていたはず。
そう思ってたら「テレビとか出てタレントみたいな感じになればいい」とまで言ってきた。
もし、仮にそんなチャンスがあったってタレントみたいになりたくないしそんな事で評価されたくない。
そういう事ではない、と説明してみても話が噛み合ないのでその話題を止めた。
僕にとっての写真は仕事ではなく生き方。
なのでどう生きていくかという事を話したいのにこんな感じでよく話がずれていく事が多い。

中には「宝くじ当てて」なんていう人もいて笑える事もある。
そんな事もあって最近ではあまりこの手の話をしなくなった。
そもそも営業とか売り込みとかの才能もないのでとりあえず今までのやり方で続けていくしかない。

でも年を重ねるごとに写真を撮り表現する難しさを感じつつ同時に楽しさが増している。
今まで写真を撮る事に対して悔しさは感じても苦しさは感じた事がない。
これは他の写真家に言わせると大変珍しい事らしい。
写真を楽しめる事この事こそが僕の才能かもしれない。

コオリヤマ

コオリヤマ ソウイチロウ

コオリヤマ ソウイチロウ

1971年宮崎県生まれ ドキュメンタリー写真家
2001年から写真活動を開始 主に中東、東南アジアをカバーし、国内外の媒体で写真を発表している
写真集に「Vanishing Village」「戦争の後に来たもの」等
2006年第7回上野彦馬賞グランプリ受賞
2007年ナショナルジオグラフィック ヒューマンセクション1位
発表媒体
Aera、フライデー、週刊文春、週刊現代、アサヒカメラ、カメラマガジン、F5.6、クーリエジャポン、週刊朝日、ニューズウィークジャパン、海外ではAsia ink、Newsweek International等

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