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2F/当番ノート

帰るということ

当番ノート 第4期

夏休みが終わり飛行機で乗り継ぎの為のミュンヘン空港についた所。

相変わらず東京ーミュンヘン間、長い11時間半ほどにおよぶ機内は
もう慣れてはきたものの、着いてみると一体自分は何をしてこんなにも狭いスペースで
時間が過ぎていったのかと思う。

そして毎回のように感じる事があって
それは飛行機は本当に飛んでいるのか?ということ。

実感がない。

それはどこか、例えば映画の為のセットだったり
アミューズメントパークのひとつのアトラクションのような
あのシートに座ったらドアを閉められて
窓の外の景色が紙芝居のように人の手で変えられて
実はね、同じ場所にいて移動はしてないのよ!みたいな。

そんな事をまた思ったのでした。

きっと長い距離の飛行機は外の光が入ってこないようにまどを閉めるから
外が見えないようにするから
こんな風に思うのかもしれない。

また飛行機にのって

マルセイユに帰ってきた。

正直マルセイユに帰ってきてホッとしている私がいる。

そして久しぶりに口にするフランス語がつたなくなっていたりする。

マルセイユにいた時、日本の家族、友達には「やっと日本に帰れるのよ!」と言っていた。
日本滞在が終ろうとしていた時、同じく私は「マルセイユに帰る」と言っていた。
ふふふ。おもしろいな。せつないな。

スタジオに入ると日常だ。
新しいシーズンが始まった。
帰ってきた感じがする。

ラテン系3人と共に同居していて
そのうちの一人のママがスペインから来ている。
ママは普通に友達を含めた6人分の夕食の準備にとりかかり
みんなでスペインの郷土料理をいただいた。
とてもおいしかった。
あたたかかった。
私の両親にも食べさせてあげたいと思った。
君はマルセイユにいるけど故郷のセビリアに帰ってるんだね。
このお料理とママと一緒に。

マルセイユは日に日に私の中での日常となっていく。

今ここに住んでいるからここに帰ってきてるんだけどさ
マルセイユ内だけど、これから家を探すんだ。
だから遠くないいつかは別の場所が帰ってくる場所になっている。

ツアーでスペインに行くから、マルセイユに帰ってきます。

木下 佳子

木下 佳子

ダンサー。

フランスはマルセイユ国立バレエ団で踊っています。

竹のように強く凛とまっすぐに、時にはしなやかに。

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