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2F/当番ノート

La réalité

当番ノート 第4期

今回アパートメントに投稿するにあたり初めて編集作業を学んだ。
踊って、カメラで撮影して、パソコンにアップして編集作業。
おかげさまでどれだけ編集作業がハードであるか、マニアックであるか、
テレビや映画のようなハイテクな世界を作り上げている人々に改めて尊敬の気持ち。

はまったら中々でれないおもしろさが魅力だ。
あっという間に時間が過ぎていく。難しい。
気づけば眠る事も惜しいくらい没頭。

私の仕事は表現する事。

小さな頃からクラシックバレエを習い始め、観客の前で踊る喜びを知った。
習い始めたスタジオは近所の集会所だったので鏡は一部にしかなかった。
全面鏡ばりのスタジオに行くと、自分の姿が見えるのが嫌だったのを覚えている。

2年に一度の発表会。練習して練習して本番にはどーんと転んだ事もある。
舞台の怖さも知った。

幸せな事にバレエ団に入団できた。毎日レッスンして、舞台の為のリハーサルをする。
筋肉痛の身体も、マメだらけの足も当たり前になった。
クラシックバレエからコンテンポラリーダンスまでたくさん踊った。
カンパニーも変わった。
ダンスと自分に向かう日々。

ある日素敵なものに出会った。
それは武道。つながる事。
日野晃先生は表現者の為のワークショップを開き、武道の精神を伝えている。

本気で相手に伝えているか?本気で受け取っているか?
見られているという意識。

目からウロコ。
私の中の大事件。

私の中で支えていたものが一瞬にして壊れてしまった。
今まであんなにたくさんの観客の前で舞台で踊っていた。
いままで一番遠くに座っている人の事を考えた事があったか?
観客を感じた事があったか?

踊り終わったときの拍手を受ける事が大好きだった。
だけど踊っている最中は???
自己満足の踊りだった。
自分が出来たか出来ていなかったか。
それだけだった。

舞台を見に行った時、おもしろくなくてとりあえず拍手した事がある。
本当に鳥肌もので素晴らしかったものは惜しみなく大拍手したい。
観る方も正しいジャッジをしなくてはならないと思う。
思ってる事を正直に言える強さが大事だ。

自分が今までどんなに自分勝手に踊ってきていたのか。
それに気づいた時、先生の前で声を出して泣いた。
「私は今まで何を一体やってきたのか。やってきたことが恥ずかしくてたまらないんです。
どれだけ自分勝手だったか!!!」

この時から舞台にあがることの恐ろしさが身にしみてわかった。

舞台の上では何もかもがはっきりバレてしまう。
隠しても隠しても観客には見えてしまうんです。
丸裸なんですよ。
そこでの勝負なんですねぇ。

受け身過ぎてもダメ。与えすぎてもダメ。
相手を聴く事。感じる事。空気を感じる事。与える事。

まるで頭が栗頭せんせい(あられちゃんのキャラ)になっていて、
頭で考えてばかり。
頭でわかってても、身体でわかってなかったら意味ないんだよ!!

あー、うー、なんて自分の身体、もしくは自分自身を知らないのだろう。
自分の身体の中ですらつながっていない。
頭と身体もこんなに近いのになんて遠いんだ。

私はもっともっと素直になりたい。
こころも身体も。
あの瞬間。あの緊迫した一体感が好きだから舞台にいるんだ。
緊迫感。

本当の事。本当の事。ほんもの。
生で体験しないと感じないといけないんです。

今週からアルゼンチン、ブラジルツアーへ出発。
3年前にブラジル、フロリアノポリスへ訪れた時に
同僚ダンサーのマルコス君が作った作品。
今回もフロリアノポリスに行くのでこのホテルだったらいいな。

当時は雨がずっと降っていて湿気がたくさんあって、蒸していた。
ホテルの近くは森で緑のにおいがした。海もあった。
ホテルの隣にはやぎがいっぱいいて動物臭さもあった。

映像からは湿気やにおいは全く伝わらないね。

ビデオはいいけど、生で感じられるはずのものが感じられないの。
ビデオはいいけど,何回も観る事が出来る。
ビデオはいいけど、逆戻りや早回し、スローなど時間の調整が出来る。
だけど一回しか観れなくて、記憶に一生残る方踊りがいいな。

https://youtu.be/5qiEpKQtFAE

木下 佳子

木下 佳子

ダンサー。

フランスはマルセイユ国立バレエ団で踊っています。

竹のように強く凛とまっすぐに、時にはしなやかに。

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